1.課題の分類
2.場所名  北海道立十勝農業試験場
3.新品種候補系統名  スイートコーン(加工用)「十生24号」

4.来歴
 「十生24号」は、北海道立十勝農業試験場とホクレン農業協同組合連合会との共同研究により,ホクレン農業協同組合連合会がアメリカのアズグロシード社から導入した加工適性の高い自殖系統「87:13」を母とし、十勝濃試育成の耐倒伏性で組合せ能力の高い自殖系統「Tos12」を父として昭和62年に交配・育成されたスイート種の単交配一代雑種である。
 昭和63年に両者の協議により、ホクレン農業協同組合連合会で実施された生産力検定予備選抜試験から選抜され、平成元年より十勝農業試験場、ホクレン農業協同組合連合会、北海製缶株式会社缶詰研究所において生産力検定試験を開始した。平成2年から「十生24号」の系統番号を付して、道内の各試験機関で,また,平成3年からは奨励品種決定現地試験に供試し適応性を検討してきた。
 平成2年から十勝農業試験場、北海道農業試験場において、平成3年から岩手県立農業試験場においてすす紋病抵抗性検定試験を行い、また、平成2年から北海道農業試験場においてごま葉枯病抵抗性検定試験を行った。平成2年よりホクレン農業協同組合連合会において粒の成分分析と加工適性の検定を行った。

5.特性の概要
【1.発芽および初期生育】
☆発芽期は「メロディスイート」並かやや遅く「ぺ一ジェント」並である。低温発芽性は「メロディスイート」「ぺ
 一ジェント」より優れる。初期生育は「メロディスイート」並で「ぺ一ジェント」に比べ同程度がやや勝る。
【2.熟期】
☆絹糸抽出期は「メロディスイート」より1日程度遅く「ぺ一ジェント」より1〜2日早い。収穫期と収穫時粒水
 分からみると「メロディスイート」より1〜2日遅く「ぺ一ジェント」並〜やや早い。「ぺ一ジェント」並の中生の
 中に属する。
【3.耐倒伏性】
☆耐倒伏性は「メロディスイート」に比べ劣るが「ぺ一ジェント」に比べ明らかに勝る。
【4.収量性】
☆剥皮雌穂重は「メロディスイート」に比べ多く「ぺ一ジェント」に比べると同程度〜やや多い。果粒歩留りは
 「メロディスイート」並で「ぺ一ジェント」より高く,果粒収量は「ぺ一ジェント」より多い。
 剥皮率は両品種より高い。
【5.茎葉の特性】
☆稈長は「メロディスイート」より高く「ぺ一ジェント」並〜やや高い。着雌穂高は両品種より高く,稈径は両品
 種並である。全葉数は約16枚で,両品種より1枚程度多く,分げつ数は「メロディスイート」より多く「ぺ一ジェ
 ント」並である。
【6.雌穂の特性】
☆穂芯長は「メロディスイート」より長く「ぺ一ジェント」並である。雌穂長は両品種より長く、先端の不稔割合
 は低い。雌穂径,穂芯の太さは両品種並である。粒列数は17行程度で「メロディスイート」より多く「ぺ一ジェ
 ント」よりやや少ない。雌穂形は両品種と同様に円錐形と円筒形の中間である。包葉内絹糸色は白色であ
 る。なお、雌穂先端が若干露出する個体がみられる場合があるが,加工上の問題はない。
【7.粒の特性および加工適性】
☆粒色は黄色で「メロディスイート」「ぺ一ジェント」「ジュビリー」並である。粒形は「メロディスイート」の長方形
 と「ぺ一ジェント」「ジュビリー」のくさび形の中間で,粒長は「ぺ一ジェント」に比べやや短く,粒幅はやや広い。
 糖含量は「メロディスイート」より高く「ジュビリー」並で「ぺ一ジェント」より低い。適熟期間は「メロディスイート」
 「ペ一ジェント」より長く「ジュビリー」並である。
【8.加工品質】
☆缶詰加工したときの品質は、色は「ジュビリー」よりやや劣り、「ぺ一ジェント」並、香味は「ジュビリー」並で、
 「ぺ一ジェント」よりやや劣る。また,食感は「ジュビリー」「ペ一ジェント」並、総合評価は「ジュビリー」「ペ一ジェ
 ント」と同程度である。
【9.耐病性】
☆すす紋病に対する低抗性は「メロディスイート」「ぺ一ジェント」並に弱いが,「ジュビリー」よりやや強い。ごま
 葉枯病に対する抵抗性は他の品種に比べ弱い。
【10.採種性】
☆種子親の絹糸抽出期は花粉親の開花期より8日程度遅いので花粉親の播種期を17日前後遅らせること
 が必要である。採種量は種子親対花粉親の畦比が2:1で170㎏/10a程度が見込まれる。
【11.用途】
☆缶詰加工用(ホールカーネル用)。

6.試験成績
表1  育成地および主な試験機関における試験成績

品 種
または
系統名


(平)



(月日)
1)








(月日)



(月日)
収穫時
粒水分
(%)


(%)
10a当たり


(㎝)



(㎝)



(行)
1)

雌穂

(本)
剥皮
雌穂重
(kg)
比率
(%)



十生24号

5.25 1.7 8.4 8.31 (74.3)2) 5.9 4796 1183 121 18.9 16.5 16.6 1.4
メロディスイート 5.24 1.9 8.3 8.31 (72.0) 0.2 4333 964 100 17.4 14.7 15.8 1.1
ページェント 5.25 2.0 8.6 9.2 (72.7) 35.2 4611 1216 127 19.8 16.3 17.5 1.1



十生24号

5.27 2.6 8.3 8.29 73.2 6.7 5055 1412 120 20.4 19.0 16.7 3.3
メロディスイート 5.26 2.2 8.1 8.28 73.3 0 4500 1174 100 18.9 17.4 16.2 3.4
ページェント 5.27 2.5 8.3 8.29 72.9 15.0 4668 1302 111 20.4 18.1 17.8 3.1



十生24号

(6.1) 2.0 8.5 8.30 (72.8) 7.8 6153 1787 125 20.3 18.8 17.1 2.3
メロディスイート (6.1) 2.0 8.4 8.29 (72.4) 8.3 5720 1427 100 19.3 17.3 15.8 2.6
ページェント (6.2) 2.3 8.6 9.1 (72.7) 18.9 5350 1529 108 19.9 17.1 17.9 2.9



十生24号

5.26 1.6 7.28 8.21 72.5 0.6 5525 1297 109 19.0 17.1 16.6 2.3
メロディスイート 5.26 1.9 7.26 8.17 75.5 0 5587 1191 100 18.1 16.1 16.3 2.0
ページェント 5.26 2.0 7.27 8.20 71.9 8.1 5649 1320 111 19.7 16.2 17.5 1.9



十生24号

5.31 2.6 8.11 9.8 74.4 16.1 5135 1284 104 19.3 17.7 17.0 2.6
メロディスイート 5.31 2.6 8.11 9.6 73.8 1.1 5247 1240 100 18.1 16.2 16.0 2.8
ページェント 5.31 2.4 8.12 9.10 73.5 43.9 5135 1280 103 19.5 16.7 18.0 2.8
植物
遺伝
資源
セン
ター
十生24号

5.26 2.9 7.29 8.28 - 0.83) 5128 1476 129 20.0 19.0 17.3 -
メロディスイート 5.25 3.0 7.29 8.26 - 0.3 5128 1149 100 18.2 17.0 16.2 -
ページェント 5.26 3.3 7.30 9.2 - 1.1 5128 1298 113 20.0 17.7 18.3 -



十生24号

5.23 2.2 7.25 8.20 73.2 0 4629 1350 122 20.3 18.2 17.1 1.7
メロディスイート 5.24 2.2 7.25 8.20 69.1 0 4444 1104 100 18.1 15.8 16.2 2.0
ページェント 5.24 1.5 7.25 8.20 72.2 10.4 4444 1286 117 20.3 17.4 18.5 1.7
1)‥1:良〜5:不良
  2)‥( )は欠測年次を除いた平均値
  3)‥0:無〜5:甚の指数

 

表2  果粒の収量、成分および缶詰官能試験成績(ホクレン農業協同組合連合会)
品種・系統名 年次(平) 収量(kg/10a) 生果粒成分 缶詰官能検査1) 缶詰果
粒硬さ
(kg)
剥皮雌穂重 果粒重2) 穂留り(%) 水分(%) 全糖(%) 香味 食感 総合
十生24号

1389 880 64 73.8 3.66 2.9 3.0 3.1 3.0 3.3
メロディスイート 1181 738 62 72.6 3.02 3.1 2.8 2.9 2.9 3.3
ページェント 1262 703 56 72.9 4.34 2.9 3.2 3.1 3.0 2.7
ジュビリー 1329 728 55 73.5 3.85 3.0 3.0 3.0 3.0 2.5
注1)官能評価点 5:良〜3:標準〜1:不良、ジュビリーを標準とする。
  2)試験用コーンカッターを用いて調査を行った。

7.配布しうる種子量
 自殖系統…「Tos12」7.0㎏、「87:13」F1採種に必要な種子量は契約にのっとり常に確保可能である。
 単交配…「十生24号」336.9㎏

8.普及対象地域および普及見込面積
 普及対象地域…道央、十勝中部、網走内陸および道南
 普及見込面積…600ha

9.栽岩上の注意
 一般栽培法に準ずる。ただし、気象の不良な年や密植栽培では無効・不稔雌穂が発生することがあるため、適正な栽植密度を守り、気象条件の不良な地帯での作付けは避ける。