摘録【普及奨励事項】

1.だいず新品種候補系統「十育220号」の概要
系統名 「十育220号」 組合せ キタホマレ×十育206号
特性 長所 短所
1.白目で耐冷性が強い。 1.ダイズシストセンチュウに弱い。
2.子実の臍周辺着色粒、裂皮粒が少ない。 2.ダイズわい化に弱い。
3.耐倒伏性が強く、密植による増収効果が高い。
採用県と
普及見込み面積
北海道 1,100ha
調査場所 育成地(十勝農試) 十勝、道央* 北見農試 網走地域**
調査年次 平成2〜5年 平成3〜5年 平成2〜5年 平成3〜5年
系統・品種名
/項目
十育
220号
トヨ
ムスメ
(標準)
キタ
ムスメ
(比較)
十育
220号
トヨ
ムスメ
(標準)
キタ
ムスメ
(比較)
十育
220号
トヨ
コマチ
(標準)
キク
ムスメ
(比較)
十育
220号
トヨ
コマチ
(標準)
早晩性 中の早 中の早
開花期(月日) 7.24 7.22 7.22 7.3 7.28 7.3 7.25 7.23 7.26 8.1 7.29
成熟期(月日) 10.8 10.7 10.1 10.8 10.7 10.9 10.7 10.1 10.12 10.9 10.6
主茎長(㎝) 55 57 70 57 57 74 51 54 71 59 61
倒伏程度
莢数(莢/株) 64.6 54.6 54.9 60.5 51.5 60.9 65.1 53.2 65.2 69.9 52.9


低温 - - - - - - - -
臍周辺着色 - - - - - - - - -
シストセンチュウ - - - - - - - -
わい化病 - - - - - - - -
倒伏 - - - - - - - -
裂莢の難易 - - - - - - - -
子実重(Kg/a) 30.7 28.7 29.3 24.1 22.1 24.1 28.4 26.2 28.3 25.9 22.9
対標準比(%) 107 100 102 109 100 109 108 100 108 113 100
種皮色 黄白 黄白 黄白 黄白 黄白 黄白 黄白 黄白 黄白 黄白 黄白
臍色 暗褐 暗褐 暗褐
百粒重(g) 32.9 35.3 33.4 30.1 31.9 27.9 31.5 32.8 31 29.3 31.9
品質 2下 2下 2下 3上 3下 3中 2上 2上 2中 2中 2下
注*:現地試験延べ21箇所の平均である。なお、十勝は山麓・沿海部、道央は北部・中部の一部である。
**:現地試験の延べ14箇所の平均である。

2.だいず「十育220号」の特記すべき特徴
成熟期は「トヨムスメ」並の中生で、子実は白目、中の大粒・良質である。耐冷性に優れ・安定多収であり、着色粒および裂皮粒の発生が少ない。また、耐倒伏性が強く、密植栽培による増収効果が高い。しかし、ダイズシストセンチュウおよびダイズわい化病に対する抵抗性は弱である。

3.奨励品種に採用しようとする理由
北海道における大豆の作付け面積は近年著しく減少している。この原因は、低湿およびダイズわい化病による減収、並びに価格の低迷による生産意欲の低下があげられる。しかしながら、道産大豆は外観品質に優れ、製品の風味も優り、実需者から高い評価を受け、安定生産と生産拡大が強く望まれている。また消費者においても、食品の安全性や美味しさの面で、道産大豆に対する期待は大きい。
この間、十勝農試においては、白目品種の「トヨムスメ」、「トヨコマチ」および「カリユタカ」を育成してきたが、耐冷性が不十分で低温年には減収になっている。また、「トヨムスメ」、「カリユタカ」は、着色抵抗性が弱で、開花期の低温により臍周辺が褐変し、外観品質を低下させている。
これに対し「キタムスメ」や「北見白」等の褐目品種は、耐冷性が強く収量面で安定していることから全道で約15%程度の作付けが維持されてきたが、蛋白含量が低いこと、また、褐目のため煮豆適性が低い等により、実需者からは白目品種への移行が要望されてきた。
「十育220号」は、白目で耐冷性に優れ、安定多収である。また、着色抵抗性も「トヨコマチ」並に便り、裂反粒の発生も少ない等、子実の外観品質が優れている。さらに、耐倒伏性が強く、密植栽培による増収効果が高い。
これらのことから、「十音220号」は「トヨムスメ」、「キタムスメ」および「北見白」のそれぞれの一部に置き換えて普及することで、道産大豆の安定生産と品質向上に貢献するとともに、大豆の生産拡大に寄与することが期待される

4.普及見込地帯
北海道の網走、十勝(山麓・沿海)、
道央(北部・中部の一部)および
これに準ずる地帯。


図 普及見込地帯における子実重比率(%、「トヨムスメ」対比)

5.栽培上の注意
1)タイズわい化病の防除を徹底するとともに、圃場周辺の雑草化したクローバの除去に努める。
2)ダイズシストセンチュウ抵抗性は弱なので、発生圃場への作付けは避け、適正な輪作のもとで栽培する。