新品種候補【普及奨励事項】 　　　　　　　　　　　　　　(平成6年1月)

1.認題の分類

2.場所名:北海道立十勝農業試験場

3.新品種候補系統名:あずき十育127号

4.来歴
「あずき十育127号」(以下「十育127号」と略す)は,耐冷,耐病(落葉病),多収品種の育成を目標とし,昭和57年に北海道立十勝農業試験場において耐冷多収の「エリモショウズ」を母,「円葉(刈63号)」に由来する落葉病抵抗性育成系統「2025(F5)」を父として人工交配を行い,F1,F3は春季に温室または鹿児島県で養成し,F2及ぴF4以降は北海道立十勝農業試験場で選抜固定を図ってきた系統である。
昭和62年に「十系454号」の系統番号を付し、生産力検定予備試験に供試した。平成元年以降は「十育127号」の地方番号を付し,生産力検定試験を行うとともに低温抵抗性,耐病特性検定試験,加工適性試験に供試し,また,道内外の関係機関で各種の試験を実施した。平成3年からは道内の奨励品種決定現地調査,多肥及ぴ密植適応性検定試験を行った。平成5年における世代はF13である。

5.特性
1)形態的特性
小葉の形は下位葉,上位葉とも円葉である。毛茸の多少は少,形は鈍,花色は黄である。
莢は長さが中で「ハツネショウズ」より長く,幅は同程度である。熟莢色は褐色である。
主茎長は中の短であり,主茎節数は中で「ハツネショウズ」と同等であるが,同品種より主茎長がやや長く主茎節数がやや多い。分枝数は中で「ハツネショウズ」より多い。一莢内胚珠数,一莢内粒数はともに「ハツネショウズ」と同等である。
子実の形は「ハツネショウズ」の短円筒に対し,「エリモショウズ」と同じ円筒である。
子実の大きさは中の小に属し,百粒重は「ハツネショウズ」よりやや小さい。種皮の地色は「ハツネショウズ」の赤と異なり淡赤であり「エリモショウズ」に近似する。
外観品質は「ハツネショウズ」に優り「エリモショウズ」と同等である。
2)生態的特性
開花期は中の早で「ハツネショウズ」と同程度である。成熟期は「ハツネショウズ」と同じ中の早に分類されるが同品種よりやや早く「エリモショウズ」並みである。
子実収量は育成地では「ハツネショウズ」より多く,「エリモショウズ」に比べてやや少ない。
低温抵抗性は「ハツネショウズ」より強く,「エリモショウズ」と同じ中である。倒伏抵抗性は中であるが,「ハツネショウズ」に比べてやや弱い。萎ちよう病抵抗性は強で「ハツネショウズ」より強く,落葉病抵抗性は同品種と同様強に属する。茎疫病抵抗性は弱であり,ウイルス病抵抗性も弱である。種皮歩合は「ハツネショウズ」と同じ高に属する。
3)加工適性
煮熟増加比,製あん歩留とも「ハツネショウズ」,「エリモショウズ」よりやや低い傾向がある。あん粒子の大きさは「ハツネショウズ」,「エリモジョウズ」並みである。種皮色は,「ハツネショウズ」より赤味度,黄味度とも大きく鮮やかであり,あん色は明度,赤味度が大きい。
加工業者の概評は「ハツネショウズ」に優り,「エリモショウズ」に近い。

6.試験成績
1)育成地における試験成績(標準栽培)

系統名 または 品種名	開 花 期 (月日)	成 熟 期 (月日)	倒伏 程度 0:無 4:甚	主 茎 長 (㎝)	主 茎 節 数	分 枝 数 (本/ 株)	莢 数 (莢/ 株)	一 莢 内粒 数	子実 重 (㎏/ 10a)	対 標 準 比	百 粒 重 (g)	屑 粒 率 (%)	品質 検査 等級
十育127号	7.31	9.21	1.1	52	12.3	2.9	50	5.89	309	111	13.4	2.9	3上
ハツネショウズ(標準)	7.31	9.23	0.7	45	11.6	2	43	5.96	279	100	13.9	6.1	3下
エリモショウズ(比較)	7.31	9.21	0.9	53	12.2	3	51	5.79	329	118	14	3.8	3上

備考:試験年次　平成元〜5年の成績,ただし成熟期は平成5年を除く4カ年平均。
1区9.6㎡4反復。60x20㎝,1株2本立。

7.配布し得る種苗量:163㎏

8.採用予定県:北海道

9.適地及び普及見込み面積
北海道の十勝中部,道央中・南部,及び道南とこれに準ずる地帯で落葉病または萎ちょう病の発生地帯。2,000ha

10.栽培上の注意
1)本系続は落葉病,萎ちょう病に抵抗性を持つが,栽培に当っては適正な輪作を前提とする。
2)茎疫病には抵抗性を持たないので,茎疫病の発生園場での栽培は避ける。