【普及奨励事項】

1.課題の分類     分類番号      整理番号

2.場所名 北海道立北見農業試験場 ホクレン農業総合研究所

3.系統名 タマネギ「北見交17号」

4.育成経過
ホクレン農総研との共同研究により、球肥大性が良好であり、軟質で辛味が少なく調理、加工適性に優れた業務用品種の育成を目標とした。ホクレン農総研が導入した細胞質雄性不稔系統「AOPFA」を種子親とし、北見農試育成の「KMS7320-12M」を花粉親として育成した単交配一代雑種である。平成元年に「CX3」の系統名で生産力検定予備試験に供試し、平成2年から「北見交17号」の系統名を付して生産力検定試験を、平成3年から地域適応性検定試験及び現地試験を実施してきた。

5.特性の概要
標準品種:「ツキヒカリ」、対照品種:「北もみじ」
参考品種:「北もみじ86」、「月輪」、「ひぐま」、「レオ」

長所:球の肥大性が良好で、規格内率が高く、規格内収量が高い。
 高貯蔵性であり、かつ球がやや軟質で辛味がやや少ない。
 加熱調理後の食味の評価が高い。
短所:乾腐病抵抗性が劣る。

1)種子特性および苗生育
「ツキヒカリ」より種子の千粒重はやや重い。発芽勢はやや低いが、発芽率に差は認められない。苗生育はやや旺盛である。
2)葉部形質
活着後生育初期における草姿はやや開張し、葉身のねじれもやや多いが、7月中旬〜下旬の葉部生育最盛期における草姿は、やや直立型で葉折れも少なく「ツキヒカリ」とほぼ同様である。草勢は「ツキヒカリ」よりやや強く、葉色もやや濃い。
3)早晩性
肥大期は「ツキヒカリ」と同程度からやや早い。倒伏期は中生種の「北もみじ」より遅く、やや晩生種の「ツキヒカリ」よりやや早い。
4)収量性
平均一球重は「ツキヒカリ」より大きく、球肥大性の良好な「北もみじ86」とほぼ同程度である。規格内率は球形の揃いの良好な「北もみじ」と同程度で「ツキヒカリ」より高い。規格内収量は「ツキヒカリ」、「北もみじ」より高く、「北もみじ86」よりやや高い。
5)球品質
(1)外観品質:皮むけの難易及び皮色の濃さは「ツキヒカリ」とほぼ同程度で「北もみじ」よりやや優る。形状の揃いは「北もみじ」と同程度で「ツキヒカリ」より優る。
(2)内部品質:肉質は「北もみじ」より軟らかく、「月輪」より硬い。固形分含量と全糖含量は「北もみじ」と同程度で、「月輪」より高い。辛味成分の指標であるピルビン酸含量は「北もみじ」よりやや低く、「月輪」より高い。貯蔵中のピルビン酸含量の増加が少ない。
(3)調理適性:生のサラダ(スライス)においては、ほぼ「北もみじ」並の食味評価で「月輪」よりやや劣る。しかし、加熱調理後は甘味の発現が良好で苦味が少なく肉質も軟らかく、ソテーなどの食味は「北もみじ」、「月輪」より優れる。
6)貯蔵性
貯蔵後健全率は「ツキヒカリ」とほぼ同程度で、良好な貯蔵性を示すが、萌芽はやや早い。
7)耐病虫性
乾腐病に対する抵抗性は、抵抗性強の「ツキヒカリ」より弱い。抵抗性中の「レオ」、「ひぐま」とほぼ同程度で、抵抗性弱の「月輪」よりは強い。その他の病虫害の発生程度には「ツキヒカリ」との間に明かな差は認められない。
8)耐抽合性
「ツキヒカリ」とほぼ同水準である。
9)採種性
種子親、花粉親系統ともに近交弱勢程度は小さく、採種性に特に問題は無い。

6.試験成績概要
1)農業特性(平元〜5年、北見農試、ホクレン農総研、中央農試、北見市、留辺蘂町、
       富良野町、岩見沢市、札幌市における対応する総平均値での比較)
比較対照 品種・
系統名
倒伏

(月日)
乾腐病

(%)
平均
一球重
(g)
規格内

(%)
規格内
収量
(kg/a)
同左比
(%)
貯蔵後
健全率
(%)
ツキヒカリ 北見交17号 8.14 2.4 237 90 605 116 67
ツキヒカリ 8.15 1.3 213 85 521 100 69
(n) (31) (31) (31) (31) (31)   (20)
北もみじ 北見交17号 8.14 2.4 237 90 605 113 67
北もみじ 8.1 0.8 201 90 534 100 58
(n) (31) (31) (31) (31) (31)   (20)
北もみじ86 北見交17号 8.14 2.6 238 90 607 108 68
北もみじ86 8.17 1.1 239 80 561 100 77
(n) (29) (29) (29) (29) (29)   (11)
レオ 北見交17号 8.17 2.5 229 90 576 105 56
レオ 8.14 1.9 213 88 549 100 29
(n) (18) (18) (18) (18) (18)   (11)
ひぐま 北見交17号 8.17 2.4 229 90 574 103 49
ひぐま 8.13 2.2 224 84 559 100 9
(n) (16) (16) (16) (16) (16)   (10)
月輪 北見交17号 8.16 2.5 222 89 549 109 47
月輪 8.15 4.7 253 79 505 100 9
(n) (14) (14) (14) (14) (14)   (7)

2)球の特性(平成2年〜5年の4カ年平均値、ホクレン農総研)
品種名
および
系統名
固形分
含量
(%)
糖含量(%) 辛味成分
ピルビン酸
(μmoles/g)
硬度*
(kg)
還元糖 全糖
北見交17号 10.46 4.19 6.4 7.14 5.5
北もみじ 10.93 4.18 6.44 8.39 5.9
月輪 8.09 4.53 5.65 5.49 4.6
*硬度は平2〜4年の3カ年平均値

3) ソテーの官能評価(平成2、4年、ホクレン農総研、パネラーは料理研究家3名)
ソテー
加工度
品種・
系統名
甘味 まろやかさ 苦味 香り 繊維性 総合評価 備考
平2 平4 平2 平4 平2 平4 平2 平4 平2 平4 平2 平4 (平4)

製品歩
留70%
北見交17号 3.3 4.3 2.3 3 3 4 2.3 3.3 2.3 1.7 2.6 3 苦味少い
北もみじ 2.7 3.3 1.7 2.3 2.3 2.3 2.3 3.3 1.7 1.7 2.1 2.3  
月輪 2.7 4 1.7 3 2 2.3 2.3 3.3 3 2 2.3 2.7  

製品歩
留30%
北見交17号 4.3 4 4 3.3 4 3 3 3 4 3.7 3.9 3.7 粘り多い
北もみじ 3.7 2.3 3 2.3 3 1.7 2.7 3 2.7 3 3 2 苦味強い
月輪 3.3 3.3 3.3 3 2.3 3.3 2.3 3.3 3.3 3.7 2.9 3.3  
評価基準 1
(絶対評価)↓
弱い

強い
薄い

濃い
強い

弱い
弱い

強い
硬い

柔い
劣る

良好
 
ソテー:カットしたタマネギに油を加えて妙めた半調理品で業務用途での利用が多い

7.用途、普及対象地域及ぴ普及見込み面積
業務及び青果用途に適する。全道のタマネギ栽培地帯。当面業務用途を中心として1,000ha。

8.保有種子及ぴ母球量
「北見交17号」(F1)種子量:8.4㎏
F1採種用一次選別後母球数:種子親(AOPFA);6,300球、花粉親(KMS7320-12M);3,100球

9.栽培上の留意点
乾腐病多発圃場での栽培は避ける。
軟腐病やボトリチス等による腐敗球の発生に対する適切な防除の実施に留意する。