水稲新品種候補系統
                        上育糯417号の特性概要

                                                北海道立上川農業試験場
1.特性一覧表
系統名 上育糯417号 交配組合せ  上系85201*/北育糯80号
特  性 長所
   1.良質
   2.多収
   3.耐冷性
短所
   1.登熟日数が長い
   2.いもち病耐病性が不十分
   3.初期分げつが劣る
採用予定県および
普及予定面積
   北海道2,000ha
調査地 上川農業試験場(比布町)**,*** 中央農業試験場(岩見沢市)***
調査年次 平成4年〜平成6年(中苗) 平成4年〜平成6年(中苗)
系統・品種名
形質
上育糯417号 (対象品種)
たんねもち
(対象品種)
はくちょうもち
上育糯417号 (対象品種)
たんねもち
(対象品種)
はくちょうもち
出穂期の早晩性 中の早 早の晩 早の晩 早の晩 早の晩 早の晩
成熟期の早晩性 中の早 早の晩 早の中 中の早 中の早 早の晩
草  型 偏穂数 偏穂数 偏穂数      
出穂期(月・日) 8.4 8.5 8.2 8.3 8.2 8.4 8.6 8.6 8.7 8.6 8.4 8.4
成熟期(月・日) 9.17 9.23 9.16 9.20 9.13 9.19 9.25 9.26 9.24 9.24 9.20 9.20
登熟日数(日) 44 49 45 48 42 46 50 51 48 48 47 47
稈長(㎝) 62 64 61 62 53 56 56 61 57 60 50 54
穂長(㎝) 16.5 17.5 16.1 16.0 14.3 14.9 17.3 17.8 16.4 16.9 14.5 15.1
穂数(本/㎡) 544 604 568 616 572 644 472 521 416 478 543 596
芒の多少・長短
ふ先色
脱粒性
少極短
黄白
少極短
黄白
少極短
黄白
     
耐倒伏性
障害型耐冷性
葉いもち耐病性
穂いもち耐病性
ヤ強
強〜極強

ヤ強〜強
ヤ強

ヤ強〜強


     
玄米重(kg/a) 51.3 54.8 47.O 49.9 41.9 49.8 47.2 47.3 43.3 44,0 39.O 43.1
玄米重標準比(%) 109 110 (100) (100) 89 100 109 108 (100) (100) 90 98
玄米千粒重(g) 20.3 20.1 18.6 18.6 19.1 18.9 20.8 20.7 19.5 19.O 19.6 19.4
玄米等級 2中 2中 2中 2中 2上 2上 2上 2上 2下 2下 2中 2上
玄米品質 上下上 上下上 上下 上下上 上下上 上下上 上下 上下上 上下 上下 上下 上下
食  味 上下上 上下 上下上      
タンパク質含有率(%) 7.3 7.3 7.6 8.0 7.7 7.6 8.5 8.6 9.1 9.6 9.2 9.4
*中母36/上育糯381号、北育糯80号:はくちょうもち、上育糯381号:たんねもち。
**平4、5年は旭川市永山、平成6年は比布町における調査結果。
***左欄は標肥区、右欄は多肥区のデータ。

 

2.「上育糯417号」の特記すべき特徴
   中生の良質糯種で、耐冷性に優れ、多収である。

 

3.奨励品種に採用しようとする理由
  米の輸入自由化を背景として、国内産地間競争は高品質、低コスト、安全性を巡って、激化の一途をたどっ
 ている。北海道における糯品種の作付けは7支庁管内、25市町の11,000haに及び「もち団地」を形成し
 ている。これらのうち、道東、道北を中心とする早生種地帯では、平成元年に奨励品種となった早生・良質・
 耐冷性の「はくちょうもち」の作付けにより、道産糯米の評価が著しく向上した。このため「はくちょうもち」作付
 け比率が地帯別栽培指標を越える傾向にあり、熟期分散による適期刈取りの支障ともなり、品質向上、さらに
 は危険分散のうえでも問題を残している。一方、道央部以南では、「はくちょうもち」に比べて品質は劣る
 が、熟期が遅く、多収である「たんねもち」が糯基幹品種として高い作付け比率をもつ。このことから当該地帯
 における良質糯米生産のために、より良質、良食味品種の早期育成が課題となっていた。「上育糯417号」
 は、出穂期は「たんねもち」、「はくちょうもち」より遅い中生の早で、成熟期も「たんねもち」よりやや遅い。
 品質は「たんねもち」より良好で「はくちょうもち」並である。また、「たんねもち」、「はくちょうもち」に比べて収量
 性も高く、障害型耐冷性も優れている。したがって、普及見込み地帯において、「上育糯417号」を
 「たんねもち」の大部分および「はくちょうもち」の一部分に置き換えて作付けすることにより、全道的な良質糯
 米の安定生産を図る。

 

4.普及見込み地帯および面積
 1)栽培地帯  上川(士別以南)、空知、石狩、渡島各支庁管内
          およびこれに準ずる良地帯
 2)対象品種  「たんねもち」の大部分および「はくちょうもち」の一部分
 3)普及見込み面積  2,000ha