水稲新品種候補  「上育418号」の特性概要  北海道立上川農業試験場水稲育種科

1.特性一覧表
系統名 上育418号 交配組合せ あきたこまち/道北48号//上育397号(きらら397)
特性 長所 短所
1.食味が良い 1.耐倒伏性が不十分
2.障害型耐冷性が強い 2.いもち病抵抗性が不十分
3.初期分げつが旺盛 3.割切の発生が多い
採用予定県および
普及予定面積
北海道38,00Oha
調査地 上川農業試験場(旭川市、比布町) 中央農業試験場(岩見沢市)
調査年次 平成5年〜平成7年(中肥・標肥) 平成5年〜平成7年(中苗・標肥)
形質\系統・品種名 上育418号 きらら397
(対象品種)
ゆきひかり
(対象品種)
上育418号 きらら397
(対象品種)
ゆきひかり
(対象品種)
出穂期の早晩性 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早
成熟朗の早晩性 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の中 中生の早
草型 穂数 穂数 偏穂数  
出穂期(月日) 8.1 8.1 8.4 8.8 8.9 8.5
成熟期(月日) 9.17 9.2 9.22 9.23 9.25 9.22
豊熟日数(日) 47 50 49 46 47 48
桿長(㎝) 65 62 69 59 59 55
穂長(㎝) 15.1 15.8 17.4 15.8 16.2 16.8
穂数(本/㎡) 762 684 619 504 528 441
芒の多少・長短 少短 稀・短 中短  
ふ光色 黄白 黄白 黄白
脱粒性
耐倒伏性 中〜やや弱 中〜やや強
障害型耐冷性 やや強
いもち病真性抵抗性  
推定遺伝子型 Pi-a,i,k Pi-i,k Pi-a  
葉いもち抵抗性 やや強
種いもち抵抗性 やや強
玄米重(㎏/㎡) 50.6 51.7 50.8 46.4 45.4 44.8
玄米重標準比(%) 98 -100 98 102 -100 99
玄米千粒童(g) 20.6 21.6 19.6 22.5 23.O 21.1
玄米等級 1下 1中下 1中下 1下 2中上 2上
玄米品質 上下上 上下上 上下上 上中下 上下上 上下
食味 上中上 上中上 上中 上中上 上中上 上中
アミロース含有率(%) 20.6 20 20.5 20.6 20.8 20.3
蛋白質含有率(%) 6.6 6.9 6.9 7.5 8 8.4
アミログラム最高粘度 603 B.U. 610 B.U. 588 B.U. 541 B.U. 529 B.U. 527 B.U.
品種候補名
 注1)調査地のうち、上川農試は平成5年が旭川市永山、平6〜7年は比布町。

2.「上育418号」の特記すべき特徴
 「上育418号」は中生の良食味粳品種で、障害型耐冷性が強く、初期分げつが旺盛で穂数確保が容易である。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 北海道の粳作付けにおいて、「きらら397」と「ゆきひかり」の2品種は平成2年以降現在まで面積の81.2〜91.5%の比率を占め、北海道の基幹品種として品質・食味向上に大きな役割を果たしている。「きらら397」は障害型耐冷性に不安があるが食味が良いため地帯別栽培指標を越えて不適地にまで作付けされており、これらの地帯では品質・食味の劣化や冷害年次の被害が指摘されている。一方、「ゆきひかり」は耐冷性が強く、良質かつ食味も比較的良好であることから全道に広く普及しているが、その食味は「きらら397」より劣り、食味水準としては不十分である。「上育418号」は、育成地での出穂期は「ゆきひかり」より早く、「きらら397」並である。空知、石狩などの初期生育不良地帯での出穂期は「ゆきひかり」よりおそいものの、「きらら397」よりやや早い。成熟期はいずれの地帯においても「ゆきひかり」とほぼ同熟期で「きらら397」より早い。「上育418号」は、このように出穂・成熟期が「ゆきひかり」、「きらら397」に近く、初期分げつが旺盛で穂数確保が容易であり、障害型耐冷性も強い。玄米品質は「ゆきひかり」、「きらら397」にやや劣る場合があるがほぼ両品種並であり、食味は両品種に優る。「上育418号」を「きらら397」の一部および「ゆきひかり」の一部に置き換えて作付けすることにより、寒地において「きらら397」を上回る良食味米の生産とより一層の安定化を図る。

4.普及見込み地帯および面積
(1)栽培地帯 上川(士別以南),留萌(中南部),空知,石狩,後志,日高,胆振,渡島および檜山各支庁管内
(2)対象品種:「ゆきひかり」の一部および「きらら397」の一部
(3)普及見込み地帯 北海道 38,000 ha
地帯名  上段の数値:標準区
     下段の数値:多肥区