水稲新品種候補系統「上育427号」の特性概要      北海道立上川農業試験場 水稲育種指定試験地
1.特性一覧表
系統名:上育427号 交配組合せ:上育418号(ほしのゆめ)/空育150号(あきほ)
特  性 長所
1.「ほしのゆめ」に近い良食味
2.「あきほ」、「ほしのゆめ」より多収
3. 穂数確保が容易
短所
1. 割籾の発生が多い
2. いもち病抵抗性が不十分
3. 耐倒伏性が不十分
採用予定県および
普及予定面積
  北海道 13,000ha
調査地 上川農業試験場(比布町) 中央農業試験場(岩見沢市)
調査年次 平成9年〜平成11年(中苗・標肥) 平成9年〜平成11年(中苗・標肥)
系統・品種名 上育427号 対象品種 対象品種 比較品種 上育427号 対象品種 対象品種 比較品種
形  質   あきほ きらら397 ほしのゆめ あきほ きらら397 ほしのゆめ
出穂期の早晩性 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 早生の晩 中生の早 中生の早
成熟期の早晩性 早生の晩 早生の晩 中生の早 中生の早 中生の早 早生の晩 中生の中 中生の早
草型 穂数 穂数 穂数 穂数 穂数 穂数 穂数 穂数
出穂期(月・日) 7.28 7.27 7.28 7.28 8. 3 8. 1 8. 3 8. 2
成熟期(月・日) 9.13 9.14 9.18 9.15 9.22 9.21 9.27 9.23
登熟日数(日) 47 49 52 49 50 51 55 52
稈長(cm) 65 66 64 66 63 63 62 65
穂長(cm) 16.2 17.4 16.5 16.1 16.1 17.0 16.9 15.9
穂数(本/㎡) 801 710 742 778 622 540 565 579
芒の多少・長短 稀短 稀短 稀短 少短  
ふ先色 黄白 黄白 黄白 黄白
脱粒性
耐倒伏性 や弱-中 中-や強 や弱-中  
障害型耐冷性 や強-強 や強
いもち病真性抵抗性  
推定遺伝子型 Pi a,i,k Pi a,i Pi i,k Pi a,i,k
葉いもち抵抗性 や弱 や弱 や弱
穂いもち抵抗性 や弱-中 や弱-中 や弱
玄米重(㎏) 59.0 57.3 61.4 57.9 50.8 49.7 52.4 48.7
玄米重標準比 103 100 107 101 102 100 105 98
玄米千粒重(g) 21.9 21.4 22.1 21.5 23.3 22.5 23.4 22.6
玄米等級 2上 1中 2上 2上 1中 2上 1下 2上
玄米品質 上下上 上下上 上下上 上下上 上下上 上下上 上下上 上下上
食味 上下 中上  中上 上下 上下 中上  中上 上下
アミロース含有率(%) 20.2 20.2 20.2 20.8 20.2 20.2 20.4 20.5
蛋白質含有率(%) 6.4 6.6 6.4 6.4 8.1 8.4 8.0 8.2
アミログラム最高粘度(B.U.) 623 607 616 616  

 

2.「上育427号」の特記すべき特徴

 「上育427号」は中生の良食味粳系統で、穂数確保が容易であり、収量性が 良い。

 

3.奨励品種に採用しようとする理由

平成11年現在の北海道における粳米の作付け状況は、「きらら397」が73,000h aで首位、ついで「ほしのゆめ」が前年対比60%以上増の40,018haで第2位である。こ れら2品種の作付け割合は合わせて89.8%にも達している。「あきほ」は、前年対比 で約40%減の8,004haで第3位、また、「ゆきまる」も前年対比約40%減の3,034haで 第4位である。これら2品種の作付け割合は合わせても8.8%であり、今後、再び拡大 する可能性は低い。

 「あきほ」は、早熟で耐冷性が強く、良質で、食味は「きらら397」並とさ れるが、茎数確保、早期異常出穂、収量性等に難点があり、上述のようにその作付け は減少傾向にある。一方、「きらら397」は「ほしのゆめ」に比べて耐冷性が弱く、 食味が劣るが、ブランド名に支えられて依然として約60%の作付け面積を誇っており 、初期生育不良地帯等における栽培面積も多い。ただし、良食味米生産志向の高まり の中で、今後「きらら397」から「ほしのゆめ」への転換も予想される。しかし、「 ほしのゆめ」はすでに適地における当初の普及予定面積に達しており、さらなる作付 け拡大は「きらら397」の場合と同様、品質・食味の不十分な「ほしのゆめ」の生産 を招きかねない。

 「上育427号」の育成地における出穂期、成熟期は「あきほ」並で、年次、 地帯によっては「あきほ」に比べて遅い場合もあるが、「きらら397」よりは早熟で ある。「上育427号」は、「あきほ」に比べて、耐冷性、いもち病抵抗性がわずかに 劣るものの、穂数が多く、収量、食味が優っている。また、「きらら397」に比べて 、収量性がやや劣るが、耐冷性が優り、食味も「ほしのゆめ」により近い。

 したがって、「上育427号」を「きらら397」と「あきほ」の一部に置き換え て作付けすることにより、北海道産米の食味レベルをさらに引き上げるとともに、そ の生産の安定化を図る。

 

4.普及見込み地帯

1)栽培地帯    上川(風連以南)、留萌(中南部)、空知、石狩、後志 、日高、胆振、渡島、および桧山の各支庁管内

2)対象品種    「きらら397」と「あきほ」の一部

 

5.普及見込み面積   北海道 13,000ha