2.「北見72号」の特記すべき特徴

この系統は、めん用として育成した秋播系統で、「ホクシン」に比較して次のような特徴がある。

1) 出穂期で2日、成熟期で2日遅いやや早生種である。

2) 稈長、耐倒伏性は同程度である。

3) 縞萎縮病抵抗性は強く、やや強である。

4) 耐雪性、赤さび病・うどんこ病抵抗性は同程度であるが、赤かび病抵抗性はやや強い。

5) 耐穂発芽性は強く、やや難である。

6) 子実重は同程度で、収量性、千粒重、容積重も同程度である。

7) 製粉性は同程度かやや優れ、蛋白含量は同程度で、粉色は優れる。

8) 製めん適性は、色は優れるが粘弾性はやや劣る。

 

3.北海道で奨励品種に採用とする理由

 平成3年に道内で発生が初めて確認されたコムギ縞萎縮病(以下縞萎縮病)は、その後の調査で現在までに道内の7支庁(渡島、胆振、後志、石狩、空知、十勝、網走)19市町村で発生が確認されている。縞萎縮病はポリミキサ菌が媒介するウィルス病で耕種的、化学的な防除法では被害を防ぐことができないことから、抵抗性品種の栽培しか現実的な対処法がない。平成6年に育成したホクシンは、チホクコムギの耐病性、耐穂発芽性を改良し、やや早生で多収であるためチホクコムギに替わって急速に普及している。しかしホクシンは縞萎縮病に抵抗性がきわめて弱いことから、縞萎縮病が発生している圃場では栽培することができない。また、発病の激しい圃場では抵抗性がやや弱〜中の小麦でも収量性の低下がみられることから、更に抵抗性の強い品種が望まれている。

 北見72号は縞萎縮病に対する抵抗性はやや強であり、発病の激しい圃場ではホクシンに比べ著しく多収を示す。その他の耐病性はホクシン並で、耐穂発芽性はホクシンより優れる。ゆでめんの粘弾性はホクシンよりやや劣るが色が優れる。 

 よってホクシンを栽培することのできない縞萎縮病発生地帯において小麦の安定的な生産を行うために北見72号を普及したい。

 

●縞萎縮病発生市町村
(平成11年現在。中央農試病理科調べ)
地域区分の後の数字はホクシンに対する北見72号の
収量比(%),( )内は供試箇所数を示す。

 

4.普及見込み地帯  全道の小麦縞萎縮病発生地帯 2,000 ha

5.栽培上の注意

1)コムギ縞萎縮病に対する抵抗性はやや強であるが、免疫的な抵抗性は有していないため、適正な輪作体系の維持に努める。

2)耐穂発芽性はホクシンより強いが、刈遅れにより品質劣化の懸念があるので、適期収穫を励行する。

3)他の病害・障害抵抗性、および子実タンパク含量はホクシン並なので、播種・防除・施肥管理はホクシンに準ずる。