新品種候補 (作成 平成12年1月)
総合農業 作物生産 夏作物 あずき −Ⅰ− − − 北海道 作物 畑作 あずき新品種候補系統 「十育140号」の概要 十勝農試 研究部 豆類第二科 |
1.特性一覧表
系統名 | あずき十育140号 | 組合せ | 十系494号×十系486号 | ||||||||||
特性 | 長所 1.落葉病,茎疫病,萎凋病に対して抵抗性である。 2.餡色が良好(赤紫系)で風味が強く加工適性に優 れる。 |
短所 1.開花期頃の低温抵抗性は”弱”であ る。 | |||||||||||
採用県と普及見込み面積 | 北海道 5,000ha | ||||||||||||
調査場所 | 育成地(十勝農試) | 上川農試 | 中央農試 | 遺伝資源センタ− | |||||||||
調査年次 | 平成8年〜平成11年 | 平成8年〜平成11年 | 平成9年〜平成11年 | 平成8年〜平成11年 | |||||||||
系統・品種名 項目 |
十育 140 号 |
エリモ ショウズ (標準) (対照) |
きた の おとめ (対照) |
十育 140 号 |
エリモ ショウズ (標準) (対照) |
きた の おとめ (対照) |
十育 140 号 |
エリモ ショウズ (標準) (対照) |
きた の おとめ (対照) |
十育 140 号 |
エリモ ショウズ (標準) (対照) |
きた の おとめ (対照) | |
早晩性 | 中の早 | 中の早 | 中の早 | ||||||||||
開花期 (月日) |
7.30 | 7.29 | 7.29 | 7.25 | 7.24 | 7.25 | 7.25 | 7.24 | 7.24 | 7.23 | 7.24 | 7.23 | |
成熟期 (月日) |
9.21 | 9.21 | 9.21 | 9.5 | 9.5 | 9.5 | 9.3 | 9.2 | 9.1 | 9.6 | 9.5 | 9.5 | |
倒伏程度 (成熟期) |
1.0 | 1.3 | 1.5 | 1.0 | 1.4 | 1.6 | 1.1 | 0.7 | 0.8 | 0.8 | 0.9 | 1.0 | |
主茎長 (cm) |
63 | 57 | 55 | 55 | 54 | 52 | 52 | 46 | 46 | 55 | 52 | 53 | |
主茎節数 (節) |
12.7 | 12.9 | 12.8 | 11.7 | 12.9 | 12.6 | 11.5 | 11.9 | 11.8 | 12.8 | 13.2 | 13.6 | |
莢数 (莢/株) |
41 | 46 | 46 | 57 | 60 | 64 | 38 | 40 | 39 | 47 | 48 | 51 | |
子実重 (kg/10a)1) |
302 | 330 | 328 | 321 | 328 | 341 | 244 | 206 | 206 | 235 | 236 | 232 | |
子実重 対比(%) |
92 | 100 | 99 | 98 | 100 | 104 | 118 | 100 | 100 | 100 | 100 | 98 | |
子実重 (kg/10a)2) |
332 | 328 | 330 | ||||||||||
子実重 対比(%) |
101 | 100 | 101 | ||||||||||
百粒重(g) | 15.0 | 14.8 | 14.2 | 11.4 | 11.6 | 11.0 | 11.7 | 11.4 | 10.6 | 10.6 | 10.8 | 10.2 | |
加工 製品 *の 餡色 | Y | 11.88 | 11.91 | 12.06 | 7.99 | 8.10 | |||||||
x | 0.3339 | 0.3386 | 0.3400 | 0.3345 | 0.3390 | ||||||||
y | 0.3318 | 0.3350 | 0.3353 | 0.3315 | 0.3334 | ||||||||
品質 (検査等級) |
2下 | 2下 | 2中 | 2中 | 2中 | 2上 | 2中 | 2下 | 2中 | 3中 | 3中 | 3中 | |
子実の 形状 |
円筒 | 円筒 | 円筒 | ||||||||||
子実の 大きさ |
中 | 中 | 中の小 | ||||||||||
種皮の 地色 (種皮色) |
淡赤 | 淡赤 | 淡赤 | ||||||||||
種皮歩合 | 中 | 中 | 高 | ||||||||||
抵 抗 性 |
落葉病 | 強 | 弱 | 強 | |||||||||
茎疫病 | かなり 強 |
弱 | 弱 | ||||||||||
萎凋病 | 強 | 弱 | 強 | ||||||||||
ウイル ス病 |
弱 | 弱 | 弱 | ||||||||||
低温 (開花期) |
弱 | 中 | 中 | ||||||||||
倒伏 | やや強 | やや強 | 中 |
2.あずき「十育140号」の特記すべき特徴
「十育140号」は北海道で最初のアズキ落葉病、茎疫病、萎凋病に対して複合抵抗性を有する中生の系統である。種皮色、子実の形は「エリモショウズ」に類似し、餡色が良好(赤紫系)で風味が強く加工適性に優れる。開花期頃の低温抵抗性は”弱”である。
3.北海道で奨励品種に採用しようとする理由
北海道における小豆の重要病害は、アズキ落葉病、茎疫病及び萎凋病の土壌病害である。落葉病は昭和40年代中頃から十勝地方を中心に多発し、その後全道で発生している。一方、茎疫病、萎凋病は上川、道央地方で昭和50年頃より、水田転換畑で発生し小豆の減収要因となり、現在は茎疫病は十勝地方の一部でも発生が認められる。これらの病害に対する有効な耕種的防除法がなかったため、十勝農試では昭和60年に落葉病抵抗性・中生品種「ハツネショウズ」、平成4年に水田転換畑が多い上川、道央向け落葉病・茎疫病抵抗性・早生品種「アケノワセ」、平成6年に耐冷、良質、落葉病・萎凋病抵抗性・中生品種「きたのおとめ」を育成した。しかし、土壌病害の発生を予め知ることは困難であるため、落葉病、茎疫病、萎凋病の3病害に抵抗性を有する耐病性品種の育成が要望されていた。また平成11年は上川、道央地方では茎疫病が多発し、減収要因となった。「十育140号」はアズキ落葉病、茎疫病及び萎凋病抵抗性の最初の系統で、茎疫病抵抗性は「アケノワセ」より優る。また、加工製品について「エリモショウズ」より餡色が良好(赤紫系)で風味が強いと評価する業者が多い。よって、「十育140号」を「エリモショウズ」及び「きたのおとめ」の一部と「寿小豆」、「アケノワセ」に置き換えることにより、北海道の良質小豆生産安定に寄与することが期待される。
4.普及見込地帯
北海道の道央、道北、道南の中生種栽培地帯でアズキ落葉病、茎疫病または萎凋病の発生地帯およびこれに準ずる地帯(下図網掛け部)。
5.栽培上の注意
1.本系統はアズキ落葉病、茎疫病及び萎凋病に抵抗性を持つが、落葉病、茎疫病については本系統を侵す菌系が確認されているので、栽培に当たっては適正な輪作を前提とする。
2.本系統は耐冷性が弱いので、安定生産のため栽培適地を遵守する。
3.排水不良圃場では、茎疫病の発生を防ぐため排水対策に努める。