水稲新品種候補系統
   「上育433号」の特性概要
       北海道立上川農業試験場(水稲育種指定試験地)
1.特性一覧表

品種名

  上育433号

交配組合せ

  AC90300*/キタアケ


   特 性

 

長所
1.低アミロースで粘りが強く、良食味である
2.玄米白度、白米白度が高い
3.「はなぶさ」よりやや多収である

短所
1.割籾の発生が多い
2.やや小粒である
 

採用予定県および
 普及予定面積

北海道 2,000ha
 

調査地

上川農業試験場(比布町)

中央農業試験場(岩見沢市)

調査年次

 平成10年〜平成12年(中苗標肥)

 平成10年〜平成12年(中、成苗標肥)**

系統・品種名

    形 質


上育433号
(低アミロース)

 対象品種
 はなぶさ
(低アミロース)

比較品種

(低アミロース)

 参考品種
ほしのゆめ
 


上育433号
(低アミロース)

対象品種
はなぶさ
(低アミロース)

比較品種

(低アミロース)

 参考品種
ほしのゆめ
 

出穂期の早晩性
草型

中生の早
  偏穂数

 中生の早
  偏穂数

 中生の晩
  穂数

 中生の早
  穂数

 中生の早
  偏穂数

 中生の早
  偏穂数

 中生の晩
  穂数

 中生の早
  穂数

出穂期(月・日)
成熟期(月・日)
登熟日数(日)

  7.26
  9.10
  46

  7.27
  9.12
   47 

  8. 3
  9.15
   43

  7.26
  9.10
   46

  8. 2 
  9.16 
   45 

  8. 2 
  9.17 
   46 

  8. 8
  9.22
   45

  8. 2
  9.16
   45

稈長(cm)
穂長(cm)
穂数(本/㎡)
一穂籾数
割籾歩合(%)

  69
  15.7
  687 
  56.6
  39.6

   67 
  16.3 
  725 
  45.5
  19.6

   67
   16.3
   706
  49.1
  19.7

   67
   15.7
   765
  45.7
  50.2

   66 
   15.0 
   520 
  54.6
  30.8

   62 
   16.0 
   508 
  49.2
  22.2

   65
   16.5
   574
  54.1
   3.9

   66
   15.5
   628
  46.3
  35.9

芒の多少・長短
ふ先色
脱粒性

  稀短
  黄白
   難

  稀短
  黄白
   難

  中短
  黄白
   難

  少短
  黄白
   難



 



 



 



 

耐倒伏性
障害型耐冷性
いもち病真性
抵抗性遺伝子型
葉いもち耐病性
穂いもち耐病性

中〜やや強
やや強〜強

  Pi a,k
   強
   中

中〜やや強
やや強〜強

  Pi a,k
  やや強
   中

   中
   中  
  Pi a
  極 弱
弱〜やや弱

やや弱〜中
   強

 Pi a,i,k
   弱
  やや弱






 






 






 






 

玄米重(kg/a)
玄米重標準比(%)
玄米千粒重(g)
玄米等級
玄米品質

  58.3
   113 
  20.4 
  1下 
  上下中

  51.4 
   100 
  21.6 
  2下 
  上下中

  56.6
   110
  22.5
  2下
  上下中

  58.7
   114
  22.0
  2上
  上下上

  47.6 
   99 
  20.9 
  1下 
  上下中

  48.3 
   100 
  22.8 
  2中下
  上下中

  50.3
   104
  22.8
  2中上
  上下中

  50.9
   105
  22.5
  2中上
  上下上

食味

  上下

  上下

  上下

  上下

  上下

  上下

  上下

  上下

アミロース含有率(%)
タンパク含有率(%)
玄米白度
白米白度
 

   8.7
   6.7
  20.5
  42.0
 

   9.8 
  6.8 
  19.6
  38.8
 

  11.9
   6.7
  19.1
  43.0
 

  19.8
   6.6
  18.1
  39.1
 

   9.3 
   8.5 
  21.1
  42.3
 

  10.3 
   8.6 
  20.2
  38.2
 

  12.5
   8.0
  20.8
  43.6
 

  19.9
   8.1
  19.1
  39.5
 
*AC90300:道北52号(彩)/道北50号
**中央農試、平成10年は成苗、他は中苗

2.「上育433号」の特記すべき特徴
 本系統は中生の早の熟期の低アミロース(ダル)系統で、耐冷性、いもち病耐病性を有し、収量が「はなぶさ」にやや優る。玄米白度および白米白度が「はなぶさ」に優り、混米により食味の向上が図れる。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 低アミロース米は、一般の粳米と比較して粘りが強く柔らかい特性を持つために、混米により食味の向上が図れるほか、粘りを好む消費者向けに単品としても炊飯用に利用されている。低アミロース米品種としては平成5年に日本で最初の「彩」(上川農試)が育成され、その後、北海道においては平成10年に「はなぶさ」(北海道農試)が育成された。府県においては「ミルキークイーン」(農研センター)「スノーパール」(東北農試)「ソフト158」(北陸農試)「柔こまち」(九州農試)等々の品種が最近育成されてきており、低アミロース米の需要が急速に広がりつつある。
 平成12年度の「はなぶさ」の作付面積は575haであり、平成11年と比較して僅かに減少している。「はなぶさ」は、中生の早の熟期で栽培特性が優れているために適応地帯は道北、道東を除くほぼ全道であるが、白米および炊飯米の白度が劣ることと、収量性が劣るために作付け面積が伸びていない。「上育433号」は出穂期・成熟期が「はなぶさ」より早いか同程度の系統で、耐冷性、耐倒伏性が「はなぶさ」並であり、いもち耐病性は「はなぶさ」より多少優り、収量性もやや上回り、栽培特性が優れている。また、白米白度、炊飯米の白度、柔らかさ、粘り等々の食味関連形質が「はなぶさ」に優っている。
 「はなぶさ」に替えて「上育433号」を普及することによって、道産米の食味向上と安定生産を図る。また、現在低アミロース米の販路拡大策がとられているため、作付け面積の増加が見込まれる。

4.普及見込み地帯
1)栽培地帯  上川(風連以南)、留萌(中南部)、空知、石狩、後志、日高、胆振、渡島および檜山各支庁管内
2)対象品種  「はなぶさ」

5.普及見込み面積  北海道  2,000ha 

6.栽培上の注意
1.割籾の発生が多いので、斑点米や紅変米などの被害粒発生による品質低下を招かぬよう病 害虫の適正な防除に努めるとともに、適期刈取りを励行する。
2.初期の分けつ性がやや劣り、穂数確保が難しいので植付け株数は機械移植基準を守る。
3.耐冷性は強い方であるが、十分とは言えないので、冷害危険期の深水灌漑を励行する。
4.稈長がやや長く、耐倒伏性は十分でないので、多肥栽培はさける。
5.粒重が軽いので、登熟期の適正な水管理に努める。