新品種候補(作成 平成13年1月)
課題の分類 総合農業 作物生産 夏畑作物 大豆 −
         北海道 作物 畑作

だいず新品種候補系統「十育233号」の概要
   十勝農試 作物研究部 大豆科
   北見農試 作物研究部 畑作園芸科

1.特性一覧表
系統名 だいず十育233号 組合せ 十系783号 ×十系780号
特 性 長所 短所
1.早熟、難裂莢性でコンバイン収穫に適する。 1.ダイズわい化病抵抗性が弱である。
2.低温抵抗性および臍周辺着色抵抗性が強である。
3.ダイズシストセンチュウ抵抗性が強である。
採用県と普及見込み面積  北海道 5,400 ha
調査場所 育成地(十勝農試) 農試および現地試験
Ⅰ(網走) Ⅱ(十勝
・上川・網走
・留萌・後志)
Ⅲ(十勝
・上川・後志)
Ⅳ(石狩
・空知・胆振)
調査年次 平成10〜12年 平成11〜12年 平成10〜12年 平成10〜12年 平成10〜12年
系統・品種名
 項 目 
十育
233号
トヨ
コマチ
(対照
・標準)
十育
233号
トヨ
コマチ
(対照
・標準)
十育
233号
トヨ
コマチ
(対照
・標準)
十育
233号
トヨ
コマチ
(対照
・標準)
十育
233号
トヨ
コマチ
(対照
・標準)
早晩性 中早 中早
開花期(月日) 7.18 7.17 7.24 7.24 7.21 7.21 7.18 7.18 7.15 7.15
成熟期(月日) 9.22 9.28 9.2 9.26 9.24 9.27 9.22 9.25 9.2 9.24
主茎長(cm) 64 63 59 64 59 63 60 63 54 57
倒伏程度
子実重(kg/a) 35.1 35 33.1 31.1 35.8 33.6 38 35.2 32.5 32.2
対標準比(%) 100 100 106 100 107 100 108 100 101 100
百粒重(g) 36.2 37.2 30.7 31.3 33.1 33.1 34.5 33.5 33.7 32.5
品質 2下 3上 2下 3上 2中 2下 2下 3上 3中 3中
種皮色 黄白 黄白  
臍色
粗蛋白含有率(%) 41 42.6
遊離型全糖含有率(%) 10.1 10.1
障害抵抗性、コンバイン収穫特性および加工適性(十勝農試:平成10〜12年)
    十育233号 トヨコマチ カリユタカ トヨホマレ
障害抵抗性 低温 やや強
臍周辺の着色
シストセンチュウ
茎疫病(レース群Ⅰ/同Ⅱ) 強/強 強/弱 弱/弱 −/弱
べと病
わい化病
コンバイン収穫特性 裂莢の難易
最下着莢節位高
加工適性 煮豆
豆腐
納豆
味噌
注1)調査場所のⅠ〜Ⅳは「道産豆類地帯別栽培指針(平成6年3月北海道農政部)」による地帯区分を示す。
  2)—印は検定試験ないし試作試験を実施していないことを示す。

2.だいず「十育233号」の特記すべき特徴
 「十育233号」は子実が白目中粒で、早熟、難裂莢性でコンバイン収穫に適する。収量は「トヨコマチ」よりやや多収であり、低温抵抗性および臍周辺着色抵抗性が強である。ダイズシストセンチュウ抵抗性が強である。加工適性は「トヨコマチ」、「カリユタカ」および「トヨホマレ」と同様で、煮豆や納豆、味噌に適する。

3.北海道で奨励品種に採用しようとする理由
 北海道における大豆の栽培面積は、平成5年の大冷害をうけて平成6年には大きく減少したが、その後は回復基調にある。しかし、道央の転作地帯では収穫期の降水確率が高いためにコンバイン収穫における汚粒が問題となっており、早生品種が熱望されている。他方、道東の畑作地帯では、冷害による収量や品質の不安定さに加え、収穫作業の遅いことが農家の栽培意欲を減退させており、冷害に強い早生・コンバイン収穫向き品種が強く求められている。また、十勝中央部を初め、最近では道央部においてもセンチュウの被害が認められ、抵抗性品種の作付けが必要となっている。
 現在、北海道で栽培されている白目中粒品種には「トヨコマチ」、「カリユタカ」および「トヨホマレ」があり、これに大粒の「トヨムスメ」を加えて“とよまさり”銘柄を構成し、我が国の代表的銘柄の一つとなっている。これら品種は成分的に類似した特性を持ち、蛋白含量がやや低い反面、美味しさの代表的指標であるショ糖含量が高く、大粒規格産物は主に煮豆や惣菜に利用され、中粒規格産物は物性面で劣るが美味しさが優るため,食味の良い豆腐原料として利用されており、実需者の評価も良好である。しかし、いずれの品種も栽培特性上一長一短があり、品種の集約化が進まない理由にもなっている。すなわち、「トヨコマチ」は熟期が中生の早で最も早く、センチュウ抵抗性や臍周辺着色抵抗性を有するが、裂莢性は易である。「カリユタカ」と「トヨホマレ」は熟期が中生で、「カリユタカ」の場合は難裂莢性であるが、センチュウ抵抗性や臍周辺着色抵抗性を有していない。また、「トヨホマレ」は低温抵抗性に優れ、臍周辺着色抵抗性を有するが、センチュウ抵抗性は弱で、裂莢性も易である。
 「十育233号」は上記白目中粒3品種の栽培特性上の欠点を補い、かつ早熟で、収量性にも優れ、また加工適性はこれら品種と同等である。これらのことから、「十育233号」を同じ白目中粒の「トヨコマチ」および「カリユタカ」、「トヨホマレ」に置き換えて普及することで、北海道における大豆作の拡大に寄与するとともに、品種の集約化と安定供給により大豆産業の発展に貢献することが期待される。

4.普及見込み地帯
  北海道の大豆栽培地帯区分Ⅰ、Ⅱ、ⅢおよびⅣの地域およびこれに準ずる地帯。


  各地帯における「トヨコマチ」との子実重および成熟期の比較

5.栽培上の注意
1)ダイズわい化病抵抗性は“弱”なので、適切な防除に努める。
2)ダイズシストセンチュウ抵抗性は“強”であるが、適正な輪作のもとで栽培する。
3)早熟なので収穫期に達した後は、雨害による品質低下を避けるため速やかに収穫する。