新品種候補 (作成 平成14年1月)
(作物名)新品種候補:おうとう台木新品種候補「DS1」の概要            
育成場:中央農試 作物開発部 果樹科
1.特性一覧表
系統名 DS1   道内に自生するチシマザクラの実生より選抜
特 性 長所:
(1)アオバザクラ(以下、アオバ)より
耐寒性、接ぎ木親和性が優れる。
(2)コルトよりわい化性が優れる。
(3)吸枝の発生がほとんどない。
短所
(1)アオバ、コルトより繁殖性が劣る。
(1)二重台木(DS1/ア)による試験  コルト:比較品種(比) アオバ:対照品種(対)
調査場所 中央 余市 深川
主要特性 穂品種 DS1/ア コルト アオバ 調査時 DS1/ア コルト アオバ 調査時 DS1/ア コルト アオバ 調査時 


枯死樹
数/供
試樹数
南陽 0/4 0/4 4/4 H7-13
累積
0/5 0/4 1月5日 H7-10
累積
1/5 0/5 2/5 H7-10
累積
北光 0/4   0/4 0/3   0/4 2/4   3/3
佐藤錦 4/4   4/4            
わい
化性
幹断
面積比
南陽 54 100   10
年生
58 100 52
年生
26 100  
年生
北光 147   100 127    100 88    100
着花
花芽
数/樹
南陽 57 9 18
年生
29 7 26
年生
17 8 14
年生
北光 34   33 31   23 (花束状短果枝数/樹)
収量 積算(kg) 南陽 11 50 .2   4-10
年生
3.6 10.5 11.3 4-6
年生
0.1 0.5 0.5 4-5
年生
北光 63.9   41.8 5.9    5.2      



果実重
(g)
南陽 8.5 8.5   南陽
H10-13
 
北光
H9-13
10.2 10.6 10.5 南陽
H9-10
 
北光
H8-10
       
北光 5.8   5.8 6.8   6.9
着色度
(1-5)
南陽 3.6 3.3   3.7 3.6 4
北光  3.8   3.6 4.5   4.3
糖度
(brix)
南陽 13.7 14.4   15 16.2 16.4
北光 14.1   14.6 14.8   15.4
酸度(g/100ml) 南陽 0.5 0.52 0.54 0.51 0.5 0.5
北光 0.61   0.61 0.66   0.69
満開日 南陽 5/25 5/25 5/25 H8-9 5/18 5/18 5/18 H7-9 5/25 5/23 5/24 H8-9
収穫盛期 南陽 7/13 7/13   H11-13 7/14 7/14 7/12 H9-10        
(2)自根台木(DS1)による試験(穂品種:南陽 実施場所:中央農試 )
主要特性 耐寒性 わい化性 着花性 収量 果実品質 生育期
枯死樹
数/供
試樹数
凍害
花率
(%)
凍害花束
状短果枝
率(%)
幹断面
積比
(%)
花芽数
/樹
積算
収量
(kg)
果実重
 
(g)
着色度
 
(1-5)
糖度
 
(brix)
酸度
 
(g/100ml)
満開日
調査時H7-13H11H138年生4年生5-8年生H10 −13平均H11-12
DS1
DS1/ア(比)
0/2
0/2
15
44
29
79
69
53
27
60
10.1
3.5
9.7
9.6
3.3
3.1
15.2
14.8
0.57
0.56
5/20
5/20
コルト(比)(60)(67)10094.28.53.314.40.52
(3)主要台木特性のまとめ
主要特性
耐寒性
わい化
着花性
収量接ぎ木
親和性
吸枝の
発生
繁殖性
果実
品質
満開日
収穫期
南陽北光
DS1/アや良極少一定の
傾向なし
台木に
よる差
なし
DS1や弱 良  や難
コルト(比)や高や不良
アオバ(対)や不良極易
 注)(2)自根台木(DS1)による試験の( )の数字は参考データ
 
 
2.「DS1」の特記すべき特徴
 DS1は台木特性として接ぎ木親和性に優れ、アオバより耐寒性が高く、コルトより
わい化性に優れる。また、アオバ、コルトと異なり吸枝が発生しにくく、アオバより
コスカシバに対する抵抗性が見込めるなど台木特性として優良である。繁殖性は
アオバ、コルトに劣るが実用の範囲である。
 
 
3.奨励品種に採用しようとする理由
 初夏の味覚として親しまれる本道のおうとうは、生産者の栽培意欲が高く、栽培面積は
年々増加傾向にあり、平成12年度では600haを超え、国内では山形県に次いで栽培面積が多い。
 国内におけるおうとう栽培は、そのほとんどがアオバとコルトを台木として利用している。しかし、
この両台木は繁殖性が優れ、苗木生産がしやすい反面、台木として利用した場合いずれも大きな
問題を持っている。すなわち、アオバは耐寒性が低いため、本道では衰弱樹や枯死樹が多発し、
また、おうとうとの接ぎ木親和性が不良であるため接ぎ木部位より折損しやすい。一方、コルトは
台木としてのわい化性が不十分で、樹体が非常に大きくなるため、収穫や施設化など栽培全体に
わたって生産者がより多くの労力を必要とする。特に、耐寒性の面では、近年道内における
栽培地域の拡大にともない、アオバ台を中心に凍害が多発しており、本道向けの耐寒性の高い
台木の実用化は急務となっている。
 DS1はアオバより耐寒性が優れ、コルトよりわい化性が優れる。また、吸枝が発生しないなど
優れた台木特性を有している。繁殖性はアオバ、コルトに比べて、二重台木では1年、自根台木
では3年多く苗木養成期間を要するが、実用の範囲であり、自根台養成には今後、改善の余地
がある。DS1の二重台と自根台を比較すると、二重台は繁殖が容易で、自根台よりややわい化度が
強いが、耐寒性については自根台の方が高い。
 DS1台木を実用化することは、以下の点で本道おうとう栽培の現状を具体的に改善できる。
①アオバ台木において問題となる、おうとう樹の枯死の発生、倒木を減らすことができる。
②コルト台木に比べて明らかにおうとう樹の小型化を進めることができる。
③台木の選択枝が増え、生産者が品種、気象環境、栽培目的に応じた台木を利用することができる。
 以上のことから、DS1台木の普及は、本道のおうとう栽培の安定と向上に寄与できる。
 
 
4.普及見込み地帯
(1)普及対象地域  全道おうとう栽培地域
(2)普及見込み面積 100ha
(3)利用場面
  1)アオバ台で衰弱樹や枯死樹が発生する地域はDS1台に置き換える。
  2)コルト台で樹体が大きくなりすぎる地域は、今後DS1台を導入する。
 
 
5.栽培上の注意
(1)二重台では栽植距離はアオバ台と同程度かやや広くする。自根台では栽植距離はアオバ台より
 やや広くし、コルト台より30%程度狭くする。
(2)二重台ではりんごの二重台(M26/マルバカイドウ)と異なり、栽植後DS1部分からの発根が
 認められないので深植えをしない。
(3)「南陽」は自根台を利用する。