2.「渡育240号」の特記すべき特徴
 「渡育240号」は晩生の良質粳系統で、耐冷性が強くタンパク含量が低く良食味である。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 道南南部は、気候が温暖で秋が長く農耕期間が長いため、平成4年まで水稲の作付けは「ほのか224」等の晩生種が50%以上を占めていた。しかし「きらら397」「ほしのゆめ」の普及により中生種の作付けが多くなり、平成14年度の作付け比率は「きらら397」が3,425haで全体の79%、次いで「ほしのゆめ」が801haで19%とこれら中生2品種で98%を占めている。特に「きらら397」は北海道米としてネームバリューが高く、収量性があるため作付け比率が高く、優良品種地帯別作付基準を大幅に超え、かなりの過作となっている。一方「ほしのゆめ」は「きらら397」に比べ食味は優るものの、粒厚が薄く収量性が劣るため作付けが減少傾向で、今後も「きらら397」の過剰作付けが予想される。
 このような「きらら397」の作付け偏重は、「きらら397」の耐冷性が奨励品種の中では劣ることから、冷害のリスクを増加させ、農家経営を不安定にする要因となっている。また道南南部の稲作農家は、経費削減のため1台のコンバインを複数の農家で共同利用している場合が多く収穫期が競合し、刈り遅れによる産米の品質低下や食味劣化を招いている。さらに道南南部の稲作は複合経営が主体で、他の作物と農作業が競合することから、適期収穫が一層困難となっている。このような中生品種に過度に偏重した品種構成を是正し、危険分散・熟期分散を図るために道南南部に適した晩生品種が強く求められている。
 「渡育240号」は、熟期が「きらら397」よりも遅い晩生種で、食味が「きらら397」に明らかに優り、「ほしのゆめ」並からやや優る。また耐冷性が「きらら397」より強く、収量はほぼ「きらら397」並で「ほしのゆめ」に優る。
 従って「渡育240号」を「きらら397」の一部に替えて普及することにより道南南部の米の品質・食味を向上させ、その生産の安定と販路の拡大を図る。
 また道南の“売れるコメ作り”を推進する上で、「渡育240号」を道南独自のコメブランドとして位置づけ、「地産地消」の具体的な差別化商品とすることにより、道南農業の振興に寄与できる。

4.普及見込み地帯および対照品種
 1)栽培地帯     檜山南部、渡島中・南部及びこれに準ずる地帯
 2)対照品種     「きらら397」の一部
5.普及見込み面積   北海道  800ha
6.栽培上の注意
 1)いもち病抵抗性がやや弱いので、その発生に注意し適正防除に努める。
 2)倒伏や干ばつにより粒厚が薄くなることがあるので、多肥栽培は避け「施肥標準」を厳守し、登熟期の水管理に留意する。
地帯名 標準比
上段:きらら397=100

下段:(ほしのゆめ=100)

図 「渡育240号」の普及見込み地帯における玄米収量比
   (平成12〜14年の3カ年の標肥・多肥込みの平均)