新品種候補 (作成 平成16年1月)
べにばないんげん新品種候補「中育M52号」の概要 中央農業試験場作物開発部畑作科 (経営革新技術等移転促進事業白花豆大粒化技術の実証による産地支援) 北見農業試験場技術体系化チーム 1.特性一覧表 |
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系統名 | べにばないんげん「中育M52号」 | 大白花の放射線照射突然変異 | ||||||||
特性 | 長所1. 粒大が大きい。2. 大粒規格(5分上)収量が多い。 | 短所1. 熟期がやや遅い。2. 収量がやや劣る。 | ||||||||
普及見込み面積200 ha | ||||||||||
調査場所 | 育成地 (中央農試) |
普及見込み地帯における成績 | ||||||||
Ⅰ(網走) 北見農試 |
Ⅰ(網走) 留辺蘂町 |
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調査年次 | 平成10〜13年 | 平成11〜13年 | 平成14〜15年 | 平成11〜13年 | 平成14〜15年 | |||||
栽培法 | 標準(無追肥) | 手竹期追肥 | 開花盛期追肥 | 慣行(無追肥) | 開花盛期追肥 | |||||
系統・品種名 項 目 |
中育M 52号 |
大白花 (対照) |
中育M 52号 |
大白花 (対照) |
中育M 52号 |
大白花 (対照) |
中育M 52号 |
大白花 (対照) |
中育M 52号 |
大白花 (対照) |
開花期(月日) | 7.11 | 7.11 | 7.14 | 7.14 | 7.14 | 7.14 | 7.1 | 7.1 | 7.18 | 7.18 |
成熟期(月日) | 10. 2 | 10. 1 | -17 | -29 | -38 | -43 | -26 | -33 | -28 | -41 |
主茎長(cm) | 319 | 334 | 347 | 346 | 337 | 335 | - | - | 355 | 339 |
莢数(/株) | 24.8 | 26.3 | 40.2 | 48.2 | 49.7 | 58 | 33.4 | 37 | 56.5 | 60.3 |
一莢内粒数 | 1.99 | 2.4 | - | - | 2.85 | 3.19 | - | - | - | - |
子実重(kg/10a) | 274 | 281 | 249 | 299 | 349 | 362 | 263 | 300 | 330 | 359 |
子実重対比(%) | 98 | 100 | 83 | 100 | 96 | 100 | 88 | 100 | 92 | 100 |
5分上重率(%) | − | − | 20 | 8 | 31 | 11 | 18 | 6 | 25 | 11 |
5分上収量(kg/10a) | − | − | 48 | 24 | 107 | 37 | 46 | 16 | 79 | 39 |
同収量対比(%) | − | − | 200 | 100 | 289 | 100 | 288 | 100 | 203 | 100 |
百粒重(g) | 191.2 | 160 | 167.8 | 149.1 | 177.6 | 161 | 174.9 | 154.8 | 186.7 | 167.3 |
品質 | 4上 | 4上 | 3上 | 3中 | 2中 | 3上 | 3上 | 3上 | 3上 | 2下 |
伸育型と草型 | 無限つる性 | 無限つる性 | ||||||||
胚軸の色 | 緑 | 緑 | ||||||||
花色 | 白 | 白 | ||||||||
子実の形 | じん臓形 | じん臓形 | ||||||||
種皮の地色 | 白 | 白 | ||||||||
種皮の環色 | なし | なし | ||||||||
加工適性 | ||||||||||
甘納豆 | 適 | 適 | ||||||||
煮豆 | 適 | 適 |
注1) | 成熟期の( )は収穫時における熟莢率を示す。 |
注2) | 5分上重率:子実重全体の中で5分の篩(篩目15.2㎜)に残る子実重の比率(%)。 |
注3) | 5分上収量:5分の篩に残る子実重。 |
2.べにばないんげん「中育M52号」の特記すべき特徴
「中育M52号」は粒大が大きく、外観品質に優れる。収量は「大白花」よりやや劣るが、大粒規格(5分上)収量は同品種を大きく上回る。開花盛期の窒素追肥により「大白花」同様増収効果が高い。甘納豆、煮豆や惣菜(コロッケ)の加工適性は「大白花」と同程度である。
3.北海道で優良品種に採用しようとする理由
北海道のべにばないんげんの作付面積は、近年400ha前後で推移している。べにばないんげんは無限伸育のつる性で手竹による栽培が必要なことや播種も手作業で行われているなど機械化栽培が困難で多大な労力を要するが、他の豆類に比べ粗収益が高く主産地では経営上重要な作目のひとつとなっている。現在、白花豆品種として、胆振地方では「哲郎豆」(胆振地方在来の大粒種)が、網走地方では「大白花」(昭和51年中央農試育成)が、それぞれ主に栽培されている。
網走地方で作付面積の最も多い「大白花」は、生育期間が冷涼に経過することから大粒規格率が低くなり、中国産「大白花芸豆」など安価な輸入品との競合により収益性が低下する問題がある。そこで、北海道立北見農業試験場並びに留辺蘂町現地関係機関において、開花盛期の窒素供給技術がべにばないんげんの子実重の増収に有効であることを実証し、その成果は現在普及に移されている。しかし、「大白花」は年により小粒化して5分上の大粒規格収量が減少することがあり、粒大がより大きな品種の育成が強く望まれていた。
「中育M52号」は、「大白花」に比べ熟期はやや遅く、慣行栽培では収量がやや低いが、販売価格の高い5分上収量が高い。さらに、「中育M52号」は、網走地方の「大白花」で実証された開花盛期の窒素供給追肥技術による増収効果が「大白花」並みに高い。また、甘納豆、煮豆などの加工適性が「大白花」と同程度である。そこで、「中育M52号」を網走地方の「大白花」の大半に置き換えて普及することで、べにばないんげんの作付けの拡大と北海道産白花豆の安定供給に寄与することが期待される。
4.普及見込み地帯
網走地方のべにばないんげん作付け地帯。
5.栽培上の注意
1) 開花盛期の窒素追肥による増収効果が「大白花」同様に高いので、同技術の適用に努める。
2) 熟莢率が低いので、適期に根切りを行なうとともに、立毛で十分な乾燥を行う。
3) 採種栽培では、他のべにばないんげんとの自然交雑を避けるため、十分な隔離栽培に努める。
4) 大粒なので、脱穀時の回転数を調節し損傷粒の発生を防ぐ。