成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:スムーズブロムグラス新品種候補「北見7号」
担当部署:北見農試・作物研究部・牧草科
協力分担:天北農試・研究部・牧草飼料科、根釧農試・研究部・作物科、畜試・環境草地部・草
地飼料科、北農研・作物開発部・イネ科牧草育種研究室
予算区分:指定試験
研究期間:1986〜2004年度(昭和61〜平成16年度)
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1.目的
収量性、耐病性および採種性に優れる中生品種を育成する。
2.方法
1)育種方法
5母系16栄養系による母系選抜法。
2)育種経過
1986年から、生育、耐病性に優れる中生個体を2サイクルにわたって選抜した。2サイクル目の選抜はシロクローバとの混播条件で行い、また別圃場に条播された母系の収量性も選抜の条件に加えた。1999年に5母系16栄養系を選抜し、2000年にこれらから第1代種子を採り、系統名「北系00301」を付した。同年この種子を用いて生産力検定試験を開始する一方、翌年第2代の採種を行い、系統名「北見7号」を付した。2002年より系統適応性検定試験および各特性検定試験などを行った。
3.成果の概要
(1) 特性の概要(標準品種「アイカップ」と比較)
1) 出穂始が6月5日と同日であることから、早晩性は「アイカップ」と同じ中生である。
2)2年目、3年目の年間合計乾物収量が多いため、収量性は優れる。
3)褐斑病に対してはより低い罹病程度を示すため、褐斑病抵抗性は強い。
4)越冬性は優れる。耐寒性は「アイカップ」と同じ"中"である。
5)混播適性、飼料成分および採種性は「アイカップ」並である。
6)形態的特性については、葉長、穂長が長い。
(2) 特記すべき特徴
「北見7号」は「アイカップ」に比較して収量性、褐斑病抵抗性が優れ、旱ばつ害を受けやすい地帯における良質多収な自給粗飼料として利用できる。
表1.「北見7号」の特性一覧1)
注 1)褐斑病罹病程度は3か年平均、その他は2、3年目の平均。2)単位kg/a。「北見7号」のカッコ内数値は「アイカップ」に対する百分比。3)5場平均。1:無または極微-9:甚。4)5場平均、1:極不良-9:極良。5)耐寒性特性検定試験。6)アルファルファとの混播栽培で、年間収量はスムーズブロムグラスとアルファルファの合計。7)回帰式による推定値。単位%。8)北見農試での採種性検定試験。9)個体調査。
4.優良品種に採用しようとする理由
スムーズブロムグラスは地下茎を持ち、深根性で根群は広く豊富で極めて耐旱性に優れる特色がある。現在国内における需要量は少ないが、オホーツク海沿岸地帯の砂丘地や網走・十勝地方内陸部など、旱ばつ害を受けやすい地帯の草地では、同地帯で最も普及しているチモシーより生産性が高いため、旱ばつ被害軽減草種として今後栽培面積を拡大させる必要がある。国内で初の品種として昭和61年に「アイカップ」が育成されたが、収量性やスムーズブロムグラスの最重要病害である褐斑病に対する抵抗性については、さらなる向上が必要と考えられた。この様な状況の中、「アイカップ」に比べ収量性および褐斑病抵抗性が優れる「北見7号」が、道内の旱ばつ害を受けやすい地帯の草地に順調に普及されれば、良質自給粗飼料の安定供給を通じた酪農・畜産製品の一層の低コスト化が可能になるものと期待される。
5.成果の活用面と留意点
1) 適応地域:適応地域は北海道全域とし、「アイカップ」に置き換える。
2) 普及見込み面積:4,000ha
3) 栽培上の留意点:採草利用を主体とする。
6.残された問題とその対応