成績概要書(完了課題) (作成 平成10年1月)
課題の分類
研究課題名:メロンの栄養障害・病害虫診断のためのビジュアル情報
予算区分:道 単 担当科:原環センタ− 農業研究科
研究期間:平成7〜9年度 協力・分担関係:中央農試 病虫部

1 目 的
現場段階におけるメロンの栄養障害、病害虫の迅速な診断および初動調査に必要な「ビジュアル(カラ−写真)情報集」を作成する。

2 方 法
1)栄養障害の症状に関する情報のビジュアル化(1997年)
水耕栽培により赤肉「ルピアレッド」の第3本葉展開期以降に各多量・微量要素の 欠如処理および各微量要素の過剰処理を行い、各種の栄養障害を発現させた。次に、 それらの症状の特徴を整理し、カラ−写真化した。さらにリンを除く多量要素(4要 素)については着果期以降の欠如処理による症状も併せて検討した。
2)病害虫に関する情報のビジュアル化(95〜97年)
共和町のメロン圃場計51筆を対象に現地実態調査を行い、発生の認められた病害虫 を特定し、症状・被害状況および原因となる生物に関する情報をカラ−写真化した。
3)ビジュアル情報による現場における栄養障害の診断(1997年)
共和町のメロン圃場(2筆)で発生した原因不明の栄養障害と思しき障害を、作成 したビジュアル情報と照合し、診断した(マンガン過剰、窒素欠乏)。

3 結果の概要
得られた診断のためのビジュアル情報は、栄養障害15、病害9、虫害7、薬害1および寄生植物1の計 33種類であり、計140葉のカラ−写真で構成されている。その内訳は次表の通り。なお、道立農試の病虫関係者の協力により、共和町以外で発生が認められたモザイク病、斑点細菌病、黒星病、軟腐病およびつる割病黄化型の情報も追記した。

表 メロンの栄養障害・病害虫診断のためのビジュアル(カラ−写真)情報一覧
分類 障害名 症状
被害状況
原因となる生物
 肉眼   実体顕微鏡 生物顕微鏡
直接検鏡   培地  
栄養障害 N,P,K,Ca,Mg (多量要素欠乏)        
Fe,Mn,Cu,Zn,B(微量要素欠乏)        
Mn,Cu,Zn,B,Ni(微量要素過剰)        
病害 うどんこ病    
べと病      
つる枯病    
菌核病      
炭そ病      
灰色かび病    
半身萎ちょう病      
つる割病    
えぞ斑点病        
虫害 アザミウマ類    
ハダニ      
ワタアブラムシ    
ハモグリバエ    
マキバメクラガメ      
タバコガ類の幼虫      
サツマイモネコブセンチュウ      
薬害 ジメチリモ−ル剤        
寄生植物 アメリカネナシカズラ    
注1 ○:ビジュアル(カラ−写真)情報化されたもの。
注2 強調文字の要素(N,Mn)については、ビジュアル情報よりその発生が現地で認め られた。
注3 原因となる生物:ビジュアル化された原因生物の検出方法別の内訳を示す。

 

4 成果の活用面と留意点
1)得られたビジュアル情報の写真集を作成し、関係農家、機関に配布予定。
2)栄養障害の診断では聞き取り調査結果および圃場環境等を勘案し、精度を高める。
正確に診断し得ない場合には、土壌および作物体の分析が必要となる。
3)栄養障害の症状は赤肉「ルピアレッド」のものであり、品種によっては症状が変化 することも考えられる。
4)正確に病害虫の診断ができない場合には、専門家に依頼する。

5 残された問題点
1)メロンにおけるカルシウム欠乏に伴う窒素欠乏誘発の確認。
2)複数にわたる要素の過不足による複合栄養障害の症状把握。
3)ビジュアル情報のCD-ROM化、「画像処理によるメロンの栄養障害・病害虫診断システム」の開発。