成績概要書（作成 平成10年１月）

１．目 的
　民間育成品種について、作型、地域適応性をふまえ、品質特性等を加味した品種特性を調査し、産地における品種選択の資を提供する。

２．方 法
１）試験実施場所、実施年次及び耕種概要

２）供試品種・系統
標準品種：「えびす」　作期Ⅰ「くりじまん」ほか30(h8)、33(h9)品種
　　　　　　　　　　　作期Ⅱ「くりじまん」ほか23(h8)、33(h9)品種

３．結果の概要（２ヶ年供試した品種について）
１）作期Ⅰ、Ⅱを通して総合評価の高かった品種の特性概要
「えびす」：果実は濃緑色、扁円型で良く揃い、肉質はやや粘質だが甘味が強い。草勢は中位で、果実の肥大性、収量性は良い。
「白馬」：果実は灰白色、扁円型だが、着果節位などにより果皮色がばらつくことがある。肉質は粉質で、食味は良好である。果実の肥大性はやや劣る。
「メルヘン」：果実は黒緑色、扁円型で、粉質程度が極めて強く食味は非常に良い。草勢は強いが、着果数が少なく収量性はやや劣る。
「くりあじ」：果実は黒緑色、栗型。着果が極めて良く、収穫果数は多くなるが、肥大は劣る。果皮に、蔓等による傷が付きやすい傾向がある。また、排水不良畑では湿害を受けやすい。肉質は粉質で食味は良好。
「がんこ」：果実は緑色、栗型で、果肉が厚い。肉質は粉質で、食味は良好。雌花の着生が悪いために収穫果数が少なく、収量性はやや劣る。
２）作期Ⅰで総合評価の高かった品種の特性概要
「九重栗」：果実は黒緑色、短紡錘型だが、果形がややばらつく傾向がある。肉質は粉質で甘味もあり、食味は良好である。草勢は強く、収量性も良い。
「みやこ」：果実は濃緑色、扁円型。肉質は粉質で甘味も強く、食味は良好であるが、肥大が悪く、収量性は劣る。ただし、本試験では子蔓３本に仕立てたが、本来は親蔓１本仕立て向きの品種である。
「S-102」：果実は黒緑色、扁円型で、肉質はやや粘質で甘味は強い。外傷等が付きにくく、外観品質が優れる。収量性は「えびす」並である。
「栗太郎」：果実は緑色、栗型で、肉質はやや粉質。肥大性がやや劣る。
「だるま」：果実は濃緑色、扁円型で、外観、食味ともに「えびす」と類似する。着果性が良く、収量性が優れている。作期Ⅱでは、１ヶ年のみの供試。
「ケント」：果実は黒緑色、栗型で、肥大が極めて良く、収量も多い。ただし、大部分が2.5Kg（出荷基準の上限）を上回る。草勢はやや強い。肉質は粉質で、食味は良好。
「ゆきこ」：果実は灰緑色、栗型で、肉質は粉質。甘味が非常に強く食味は極めて良好。草勢が非常に強いが、果実の肥大性はやや劣る。
「とっておき」：果実は灰白色、扁円型で、肉質は極粉質。甘味もあり食味は非常に良い。草勢は強い。年によっては着果数が少なく減収することがある。作期Ⅱでは１ヶ年のみの供試。

３）作期Ⅱで総合評価の高かった品種の特性概要
「くりじまん」：果実は濃緑色、扁円型で、肉質はやや粉質。甘味もあり食味は良好。収量性がやや劣る。
「うねび」：果実形質は「えびす」と同様で、品質もほぼ同等であるが、着果が良く、収量性に優れる。
「錦大黒」：果実形質は「えびす」と同様、収量性も同等であるが、肉質がやや粉質で、食味が良好である。

各作期において総合評価の高かった品種・系統の特性一覧

４．成果の活用面と留意点
１）産地における品種選定時の資料とする。
２）この成績は、子蔓３本仕立てによる成績である。

５．残された問題とその対応
新しい品種・系統での検討