成績概要書(作成 平成10年1月)
課題の分類 北海道 作 物 園 芸
研究課題名:デルフィニウムの夏定
        (デルフィニウムの秋期安定生産技術)
予算区分:道費
研究期間:平成7〜9年度
1.目 的
種子系デルフィニウムの新しい作型,夏定植10,11月切りにおける品種特性を明らかにし,適品種選定の資料とする。

2.方 法
1)試験実施場所:農試内加温ハウス,温室,無加温ハウス,育苗は環境制御温室内
2)試験年次および試験規模:平成8,9年度 1品種16株,2反復
3)供試品種:12品種,保温,加温区を設けた。
パシフィック・ジャイアント系品種 サマースカイ(空),ブルーバード(青),ギネバー(藤)
リトル系品種 スノーホワイト(白),ブルーヘブン(青)
マジックフォンテン系品種 スカイブルーインプ(空),スカイブルー(空), ラベンダー(藤),ライラックピンク(藤桃),チェリーブロッサム(桃紫)
クリアスプリングス系品種 ホワイト(白),ミッドブルー(青)
4)育苗法
a.催芽始:平成8年6月3日,平成9年6月17日,平成8年はシャーレで催芽した 平成9年はセル(72穴)に直接播種後(2粒)発芽器内で催芽した。インキュベーター内設定温度14℃,発芽器内設定温度15℃
b.播種期:平成8年6月10日,催芽した種子をセル(72穴)に2粒播種した。平成9年は発芽を確認してから発芽器より出庫した。(7月1〜8日)
c.育苗中の温度管理:夜冷育苗,設定温度10℃(18時から6時まで),遮光実施
5)栽培法
a.定植期:平成8年8月14日,平成9年8月19日
b.栽植密度:床幅100cm,4条植え,条間25cm,株間25cm,8.8株/㎡
25cm×4目のフラワーネット1段,白黒ダブルマルチ使用
c.遮光:平成8年8月20日〜9月20日,平成9年8月5日〜9月17日(遮光率40%)
d.加温条件:平成8年10月6日,平成9年9月26日より最低温度10℃に設定
e.保温条件:平成8年10月6日,平成9年9月26日より保温(ハウス内張り)
f.調査打ち切り:平成8年12月3日,平成9年12月1日

3.結果の概要
1)育苗,定植後の生育 平成8年は施設の故障により夜冷育苗が実施できなかった。 72穴トレーのセル苗で高温期に定植すると萎凋し活着に時間がかかる傾向であった。
2)到花日数 採花始は9月下旬から12月まで品種間,年次で大きく変動していた。平 成8年に比べ9年は到花日数が短い傾向にあった。平成9年についてはかならずしも 保温区より加温区の到花日数が短くはなかった。また品種により到花日数は異なり, ばらつきはあるものの早晩生が認められた。
3)収量 平成8年は加温区の収量が保温区より高い傾向であったが,9年については 大きな差は認められなかった。加温区では多くの品種で1本前後の収穫となった。規 格品採花本数では「チェリーブロッサム」,「ホワイト」,「ギネバー」,「スノー ホワイト」が他の品種に比べ多かった。
4)ロゼット化率 単年度の調査であるが品種間で差が見られた。ロゼット化率のやや 高かったのは「ブルーバード」,「ラベンダー」,「ライラックピンク」,「ミッド ブルー」であった。
5)早期抽台 「ブルーヘブン」,「スカイブルー」で多く発生した。
6)加温区と保温区の差 年次間で収量に大きな差が見られ保温作型ではリスクが大き いと思われた。

 表1 平成8年度加温区成績
品種名 採花始 採花期 到花日
欠株率
(%)
ロゼッ
ト株率
(%)
規格品
本数
(/株)
採花本

(/株)
規格品

(%)
切花長
(㎝)
切花重
(g)
サマースカイ 10月20日 至らず 133 9.4 O.O O,6 0.9 64 66,O 60.3
ブルーバード 11月10日 至らず 153 3.1 15.6 O.4 O.7 57 78.8 87.4
ギネバー 10月17日 11月22日 129 12.5 0.O O.7 1.O 70 75.3 87.4
スノーホワイト 1O月25日 至らず 137 6.3 6.3 O.5 0.8 59 58,2 57.1
ブルーヘブン 1O月17日 10月14日 130 21.9 O,O O.2 1.1 14 43.7 32.9
スカイブルーインプ 10月19日 至らず 131 15.6 6.3 O.4 O.9 45 53.2 61,2
スカイブルー 1O月 7日 11月11日 120 6.3 O.O O.2 1.1 17 45,3 32.O
ラベンダー 1O月25日 至らず 137 6,3 15.6 O.2 O.7 27 52.O 58.2
ライラックピンク 11月18日 至らず 162 3.1 12.5 O.3 O,6 40 53.9 72.6
チェリーブロッサム 1O月14日 11月26日 126 6.3 9.4 0.5 O.8 62 62.2 77.5
ホワイト 1O月12日 10月24日 125 6.3 O.O O.4 1.O 42 59.7 59.8
ミッドブルー 10月21日 至らず 133 3.1 15.6 O.4 O,8 44 52,8 64.1
 *採花始:株当たり0.5本採花した日,採花期:株当たり1本採花した日,規格品:切花長50㎝以上で良好な草姿

 表2 平成9年度加温区成績
品種名 採花始
(月日)
採花期
(月日)
到花日
欠株率
(%)
規格品
本数
(/株)
採花本

(/株)
規格品

(%)
切花長
(㎝)
切花重
(g)
サマースカイ 1O月16日 至らず 105 6.3 O.2 0.8 23 45.1 17.3
ブルーバード 至らず 至らず 至らず 0.O O.3 0.3 80 1O1.2 84.7
ギネバー 11月7日 至らず 130 12.5 O.4 0.9 43 66.4 56.O
スノーホワイト 12月1日 至らず 146 3.1 O.6 0.6 100 82.4 89.8
ブルーヘブン 9月29日 至らず 86 37.5 O.1 0.9 7 34.1 17.9
スカイブルーインプ 1O月4日 10月22日 94 31.3 O.O 1.2 0 33.3 11.6
スカイブルー 9月29日 11月1日 89 43.8 O.1 1.1 12 39.5 26.1
ラベンダー 11月28日 至らず 144 9.4 O.4 O.6 70 71.2 104.7
ライラックピンク 11月25日 至らず 147 6.3 O.4 O.4 86 72.4 114.1
チェリーブロッサム 12月1日 12月8日 148 O.0 O.9 O.9 1OO 87 119.O
ホワイト 1O月12日 12月1日 104 6.3 0.7 0.9 79 65.4 67.4
ミッドブルー 1O月7日 12月1日 99 6.3 0.4 1.O 44 60.8 90.1

 表3 特性表
品種名 早晩性 収量性 切花長 切花重 花梗長 花蕾数 着花密度 節間長 茎径  花径
高中低
7 5 3
長中短
7 5 3
重中軽
7 5 3
長中短
7 5 3
多中少
7 5 3
高中低
7 5 3
長中短
7 5 3
太中細
7 5 3
大中小
7 5 3
サマースカイ 2 4 3 5 5 6 6 4 5
ブルーバード 2 5 4 6 6 6 5 6 6
ギネバー 3 4 4 5 5 5 5 6 7
スノーホワイト 3 4 3 4 5 7 3 5 7
ブルーヘブン 2 3 3 4 3 6 5 5 6
スカイブルーインプ 2 3 3 4 4 6 5 5 6
スカイブルー 2 3 3 4 4 6 5 5 6
ラベンダー 2 4 3 5 5 6 5 6 7
ライラックピンク 2 4 4 5 5 7 3 6 7
チェリーブロッサム 3 5 4 5 6 6 5 5 7
ホワイト 3 4 4 3 5 5 4 4 7
ミッドブルー 2 4 3 5 5 7 5 5 5
3   <1.5 <70 <80 <25 <20 <0.2 <3 <6 <4
4 <2.0 <85 <100 <40 <30 <0.4 <4 <8 <5
5 <2.5 <100 <120 <55 <40 <0.6 <5 <10 <6
6 <3.0 <115 <140 <70 <50 <0.8 <6 <12 <7
7 3.0≦ 115≦ 140≦ 70≦ 50≦ 0.8≦ 6≦ 12≦ 7≦
単位 本/株 cm g/本 cm 個/cm cm mm cm
 *本特性表は加温区の試験成績より作成した。指数に相当する値(目安)は平成2年度成績に準拠
 収量性の指数2(本試験より新設)は0.5〜1.O本/株を示す。

4.成果の活用面と留意点
本成績は夏定植10,11月切り作型に適応する。
保温作型に関する成績の適応地域は道南およびこれに類似の地帯とする。

5.残された問題点とその対応