成績概要書 (作成 平成10年1月)

課題の分類
研究課題名:スプレーカーネーションの品種特性Ⅱ
(主要花きの品種特性調査)
予算区分 :道単 担当:花・野菜技術センター研究部花き第二科
研究期間 :平8〜9年度 協力・分担関係:

1.目的
 新品種の特性を調査し、北海道での栽培に適した、高品質・多収の優良品種選定の資料とする。

2.試験研究方法
(1) 供試品種:1996年度は26品種供試した。1997年度は、前年度供試した品種のうち、
切花長が長い品種および花色に特徴のある品種計16品種に加え21の新品種・系統を供試した。

(2) 栽培概要:無加温短期作型 栽植密度:1996年は6条植え(条間10cm、株間15cm、中3条抜き) 1997年 は8条植え(条間10cm、株間20cm、中1条抜き) 。2反復。施肥量:N-P2O5-k2O。定植期:5月1日。摘心期:1997年は5月21〜6月5日、1997年は5月22日。仕立て本数:4本/株、栽培箇所:1996年はガラス温 室、1997年は無加温ハウス(2棟)。

(3)調査方法:採花始、採花期、採花終、採花率、切花長、茎径、節間長、分枝数、分枝長、有効花蕾数 は「園芸作物に関する試験方法・調査要領」による。到花日数:定植期ならびに摘心期から採花期までの日数。切花重:調製前の重量。花径:最大花の直径。下垂度:先端から45cmの部位を支点とし、下垂角度10°未満を1、30°以上を4。花梗開度:広3〜狭1。花弁色:分光測色色差計による。茎の堅さ:頂花着生節を第1節とし、第3、第5、第7節の圧縮強度をテクスチュア・アナライザで測定。

3.結果の概要 2年間供試した品種の特性は次のとおりであった。
(1)赤系:レッドダイヤモンズ:花色は鮮やかな赤である。晩生で採花率は低い。切花長はバーバラより やや大きい。温室では花茎が軟弱となる。花蕾数はやや多い。開花後時間が経過すると白い柱頭が目立つ。 ホリデー:花色はレッドダイヤモンズとまったく同じである。極晩生で、無加温短期作型では切花長が短く、採花率が低い。温室では大輪になる。

(2)ローズピンク系: バーバラ:花色は鮮やかなローズピンクである。 ローズクラベル:花色はバーバ ラとまったく同じである。開花後時間が経過すると褪色しやすい。1997年は花蕾の発育が不良で花茎は軟弱であった。

(3)ピンク系:エチュード:花色はピンク系のなかではもっとも濃く、ピンクとローズピンクの中間の色 調である。開花後時間が経過すると褪色しやすい。花蕾数はやや多い。採花率はやや低い。ベレザ:花色はやや濃いピンクである。晩生で、無加温では採花率は低い。切花長は長く、茎(節)は堅い。 マレア:花色は明るいピンクである。開花後時間が経過すると褪色しやすい。早生で、採花率が高く多収である。切花長はやや短い。プランタン:花色はマレアとほとんど同じである。花蕾数はやや多い。採花率は低い。イラリア:花色はライトピンクで開花後時間が経過すると白っぽくなる。花梗開度が大きく花姿が乱れ、扱いにくい。採花率は低い。

(4)橙色系:エスパルス:赤橙色の独特の花色である。開花後時間が経過しても褪色しにくい。小輪だが 花蕾数は多い。開花は早く採花率は高い。花茎は細く著しく柔らかい。 ルノアール:橙色である。開花後時間が経過すると条斑の赤みがうすれ、黄色っぽくなる。切花長が長く、茎が太い。晩生である。

(5)黄色系:イエローキャンドル:明るく鮮やかな黄色である。開花後時間が経過するとやや褪色するが 目立たない。定植後、5月中旬の低温により下葉に斑点病状の錆が発生するが、気温の上昇にともない生育は回復する。10月以降、気温の低下とともに上部の葉まで錆状の褐色の斑点が発生する。晩生である。

(6)緑色系:ミスティックグリーン:独特の淡い緑色である。大輪だが花蕾数は少ない。極晩生で無加温 短期作型での採花率は低い。温室での栽培では適期に採花しないと萼割れが生じた。

(7)複色:エロームーン:地色は明るい黄色である。開花後時間が経過すると褪色しやすく、花弁の先端 のローズピンク色が抜ける。採花率は高い。ミュゼ:着色部の色はバーバラと同じである。極晩生で無加温作型での採花率は低い。切花長は長い。温室では茎腐病が発生した。オレンジキャンドル:イエローキャンドルと同様に、定植後、5月中旬の低温により下葉に斑点病状の錆が発生するが、気温の上昇にともない生育は回復する。10月以降、気温の低下とともに上部の葉まで錆状の褐色の斑点が発生する切花長は長く、花蕾数はやや多い。晩生である。温室では茎腐病の発生がみられた。

表-1 切花長別割合および花弁の色(1997年、ハウス)

品種 切花長別割合(%) 花弁の色 (複色の品種は地色)
65cm未満 65cm以上
70cm未満
70cm以上
80cm未満
80cm以上
90cm未満
90cm以上 L*a*b*表色系 マンセル表色系
L* a* b* 色相記号 明度値 彩度値
レッドダイヤモンズ 0.0 3.2 39.4 57.4 0.0 46.2 60.4 35.1 5.84R 4.5 14.6
ホリデー 15.0 10.0 60.0 15.0 0.0 47.6 59.7 35.9 6.05R 4.6 14.5
バーバラ 7.5 19.7 59.4 13.3 0.0 50.1 63.9 20.9 2.63R 4.9 15.0
ローズクラベル 0.0 1.4 26.8 57.6 14.2 49.4 64.5 24.0 3.04R 4.8 15.2
エチユ ード 0.0 0.0 43.2 50.9 5.9 70.9 45.4 2.2 7.14RP 6.9 11.0
マレア 20.7 45.3 33.1 0.9 0.0 85.3 17.3 4.5 9.97RP 8.4 4.5
プランタン 8.5 41.2 47.4 2.8 0.0 85.4 18.1 1.3 6.96RP 8.4 4.7
ベレザ 0.0 3.2 51.6 45.2 0.0 79.2 31.3 3.7 8.01RP 7.8 7.6
イラリア 3.3 18.4 44.4 29.0 5.0 93.6 - 0.7 7.7 3.44Y 9.3 0.9
エスパルス 7.1 23.0 62.7 7.3 0.0 63.5 38.8 30.7 7.9R 6.2 10.1
ルノアール 0.0 0.0 1.1 39.3 59.6 87.1 - 0.3 38.9 2.96Y 8.6 5.5
エロームーン 0.0 2.6 43.0 44.7 9.7 92.8 -11.9 40.0 0.53GY 9.2 5.1
イエローキャンドル 2.3 6.9 57.0 29.4 4.3 92.4 -14.6 45.4 1.31GY 9.1 6.0
ミスティックグリーン 3.3 19.6 54.4 22.7 0.0 84.2 -13.8 29.8 4.07GY 8.3 4.2
ミュゼ 2.4 1.9 10.3 68.5 16.9 51.6 63.6 19.0 2.1R 5.0 15.0
オレンジキャンドル 2.2 3.5 42.4 39.7 12.1 87.8 0.0 43.2 2.93Y 8.7 6.1

表-2 要約

品種 花色 早晩性 切花長 切花重 花蕾数 茎径 下垂度 節の堅さ 花梗開度 採花率
    晩中早 長中短 重中軽 多中少 太中細 大中小 硬中軟 広中狭 高中低
    7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3
レッドダイヤモンズ 5 6 6 6 6 4 4 4 3
ホリデー 7 5 4 5 5 5 4 4 3
バーバラ ローズピンク 5 5 5 5 5 5 5 5 5
ローズクラベル ローズピンク 5 6 4 5 5 4 4 4 4
エチユ ード ピンク 4 6 6 7 5 4 4 5 3
マレア ピンク 3 5 4 5 5 5 4 4 6
プランタン ピンク 4 5 6 6 6 4 4 4 4
ベレザ ピンク 7 6 6 5 5 4 6 4 3
イラリア ピンク 6 6 5 3 6 4 5 5 3
エスパルス 赤橙 3 5 3 7 4 7 3 4 6
ルノアール 淡橙 7 6 7 5 6 4 5 4 3
エロームーン 黄/ローズピンク 3 6 5 5 5 4 5 5 5
イエローキャンドル 5 6 4 6 5 5 5 5 3
ミスティックグリーン 淡緑 7 6 5 4 5 4 7 4 3
ミュゼ 赤/白 7 7 7 6 5 4 4 4 3
オレンジキャンドル 橙/ローズピンク 7 6 5 6 5 5 4 5 3

表-3 参考(指数に相当する値)

指数 早晩性 切花長 切花重 花蕾数 茎径 下垂度 第3節の堅さ 花梗開度 採花率
  晩中早 長中短 重中軽 多中少 太中細 大中小 硬中軟 広中狭 高中低
  7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3
    cm g   mm   g   %
3 <135 <55 <30 <3.0 <2.5 <1.0 <600 <1.0 <75
4 <140 <65 <35 <4.0 <3.0 <1.5 <1200 <1.5 <85
5 <145 <75 <40 <5.0 <3.5 <2.0 <1800 <2.0 <95
6 <150 <85 <45 <6.0 <4.0 <2.5 <2400 <2.5 <100
7 ≦155 ≦95 ≦50 ≦7.0 ≦4.5 ≦3.0 ≦3000 ≦3.0 ≦105
 * 早晩性は摘心期からの到花日数による

4.成果の活用面と留意点
 本試験は,ガラス温室ならびにハウスにおける無加温短期作型で実施し,評価されたものであることを考慮すること。

5.残された問題点とその対応
 継続的な新品種特性の把握