研究課題名 加工用トマトの改良マルチ栽培 (加工用トマトの栽培法改善) 予算区分 受託 担 当 花・野菜技術センター 研究部 野菜第一科 研究期間 平成7年〜平成9年 協力・分担関係 北海製罐(株) |
1、目 的
府県で開発された加工用トマトの改良マルチ栽培について、その省力性と北海道における適応性を検討する。
2、試験研究方法
供試品種:NDM051 処理:摘心の有無、不織布べたがけの有無 試験区制:乱塊法2反復
耕種概要
栽培法 | 播種容器 | 鉢上げ容器 | 育苗日数 | 定植期 | 畦高×幅(cm) | マルチフィルム種類 | 栽植密度 (本/10a) | 施肥量(kg/10a) | ||
N | P2O5 | K2O | ||||||||
改良マルチ栽培 | 200穴セルトレイ | 16連結ポット | 40 | 5月上旬 | 30×150 | 配色 | 1852 | 10 | 15 | 12 |
慣行栽培 | 播種箱 | 12cmポリポット | 50 | 5月下旬 | 20×150 | 黒 | 1852 | 12 | 18 | 15 |
改良マルチ栽培の定植方法:直径20cm、深さ20cmほどの深い植え穴をマルチ上から開け、穴の底に小苗を落とす。穴の中の気温は外気よりやや高く保たれるため、低温期の定植が可能。
配色マルチフィルム:改良マルチ栽培用に作られた中央部の30cmが透明で両側が黒のマルチフィルム。北海製罐(株)食品研究所石狩農場での改良マルチ栽培の栽植密度は2222本/10a。
3、結果の要約(慣行栽培との比較)
1)育苗における省力化
改良マルチ栽培では育苗期間が10日短縮される上、セル成型苗を鉢上げ苗として用いることによる育苗作業の省力化および育苗スペースの節約が可能である。
2)移植機導入による省力化
改良マルチ栽培は小苗(16連結ポット苗)移植を行うため移植機の導入が可能であり、作業時間の削減と作業の軽労働化が可能である。
3)収量性
定植前の摘心処理は収穫期の遅れを招き、規格内果収量が低下するため無摘心の方が適応性が高い。不織布べたがけ処理は収穫の前進効果は見られるが、増収効果は大きくない。規格内果収量は慣行栽培と比較して無摘心・不織布べたがけ区ではほぼ同等、無摘心・べたがけなし区ではやや低収である。
なお、北海製罐食品研究所の試験では、密植とすることにより慣行栽培より多収となった。
4)ジュース品質
慣行栽培と比較すると品質上の差は小さく、品質的にほぼ同等である。
5)収穫適期
改良マルチ栽培(無摘心・べたがけなし)での収穫適期は、定植からの平均気温の積算温度が約2200℃に達した日が適当である。道央では、5月上旬定植の場合、収穫期は9月中旬である。
以上総合して、改良マルチ栽培は慣行栽培に比べ育苗期間の短縮、育苗作業の省力化および育苗スペースの節約が可能で、移植作業機の導入による省力化・軽作業化も期待できるため、大規模栽培に適した省力的栽培法として適応性が認められる。
4、成果の具体的数字
表1 鉢上げ作業時間
処理区 | 播種床 | 鉢上げ容器 | 鉢上げ時間 (秒/10株) |
改良マルチ栽培 | 200セルトレイ | 16連結ポット | 53( 51) |
慣行栽培 | 播種箱 | 10.5ポリポット | 104(100) |
表2 単位面積当たり育苗本数
処理区 | 1㎡当たり苗本数 | ||
播種床 | 鉢上げ時 | 苗ずらし後 | |
改良マルチ栽培 | 1111 | 178 | 178 (494) |
慣行栽培 | 686 | 71 | 36 (100) |
表3 定植作業時間(北海製罐食品研究所石狩農場における試験)
試験区 | 植え穴開け h" m | 定植 h" m | 合計 h" m | 同左比 |
機械区 | 0 | 1" 58 | 1" 58 | ( 51) |
手作業区 | 2" 7 | 1" 45 | 3" 53 | (100) |
表4 収量性と加工ジュース品質
処理区 | 試験場所 | 規格内果収量(Kg/10a) | 平均1果 重(g) | 規格内 果率(%) | 未熟果 率(%) | 腐敗果 率(%) | 糖度 (Brix) | L*b*/a* | |
前期a 同左比 | 適期 同左比 | ||||||||
改良マルチ・ 無摘心区 |
花野センター | 3027 ( 80) | 7788 ( 91) | 73 | 78.2 | 13.4 | 8.5 | 5.5 | 19.7 |
食品研究所 | - | 7258 (127) | 71 | 56.3 | 33.1 | 10.7 | - | - | |
改良マルチ・ 無摘心・べたがけ区 |
花野センター | 5067 (134) | 8283 ( 97) | 77 | 78.8 | 10.3 | 11.0 | 5.3 | 19.6 |
食品研究所 | - | 7093 (124) | 74 | 55.3 | 33.9 | 10.9 | - | - | |
慣行区 | 花野センター | 3770 (100) | 8553 (100) | 77 | 76.2 | 15.3 | 8.6 | 5.4 | 18.9 |
食品研究所 | - | 5703 (100) | 64 | 60.1 | 28.2 | 11.8 | - | - |
5、成果の活用面と留意点
加工用トマトの露地栽培における資料とする。
6、残された問題点
1、栽植密度の検討。
2、セル成型苗の直接定植法の検討。
3、経営的評価。