農業研究本部

栄養障害診断のための情報一覧

表1 スイートコーン栄養障害診断のための情報一覧

栄養障害 症状 雄穂
抽出
1)
雌穂
抽出2)
雌穂
品質
3)
葉身部(一部雌穂と根について) その他 生育初期 生育中期
区分 要素 葉位 特徴



窒素
(N)
下位葉 葉身全面に黄化症状、葉先より壊死斑へ変化、順次上位葉へ進行 著しい生育抑制 × × ×
上位葉 生長抑制、小葉化
リン
(P)
下位葉 葉先より淡緑化→暗褐色の壊死斑、順次中位葉へ進行
さらに生育中期以降の欠乏では葉先縁から白色化し、やがて帯状に枯死
生育抑制 × ×
中下位葉 葉身基部側の葉脈が暗紫色~暗紅色化
上位葉 生長抑制、小葉化、節間短い
カリウム
(K)
下位葉 葉先縁から黄化症状→壊死斑(葉先縁枯れ症状)、順次中位葉へ進行 表面を内側に折り畳むように湾曲 著しい生育抑制 × × △  
上中位葉 葉身基部側より葉脈間が黄白化(Fe欠乏の誘発)、新葉では葉脈も黄白化
上位葉 生長抑制、小葉化、節間短い
カルシウム
(Ca)
上位葉 葉が展開しないで鞭状となる"Bull whip"症状発現→枯死、生長点の発育停止 著しい生育抑制 × × △  
上中位葉 葉縁に黄化症状→壊死斑、さらに切り込み状に裂ける症状発現
下位葉 葉鞘に褐変症状発現
(雌穂) さらに生育中期以降の欠乏では雌穂の先端部が枯死、抽出不完全
マグネシウム
(Mg)
下位葉 葉身基部から葉先までの葉縁部に黄化症状→壊死斑、葉鞘にも壊死斑 生育抑制 × ×
中位葉 葉脈間に黄化症状→不規則な表皮剥離状の壊死斑、順次上下葉へ進行
上位葉 生長抑制、小葉化、節間短い
ケイ素
(Si)
上位葉 葉身が大きく切り裂け、葉縁部に波状の縮れや小さな切り込み状の奇形発現  
中下位葉 葉縁部の葉脈間に縦縞模様の赤褐色の壊死斑
(雌穂) 着粒不良(歯抜け状の不稔)

(Fe)
新葉 葉身全体が淡緑化→著しい黄白化、やがて葉縁部は壊死斑へ変化 生育抑制、
pHが高いと発現し易い
(未確認)
上中位葉 葉身基部側より葉脈間が淡緑化→著しい黄白化、順次下位葉へ進行
マンガン
(Mn)
上位葉 葉先が白化し、捻れて葉が展開できない
さらに葉身がごわごわした感じで、一部が裂け、葉縁が葉裏へ巻き込む
 
中下位葉 欠乏が続くと葉先縁枯れ症状発現(P濃度上昇に伴うK欠乏の誘発)

(Cu)
上位葉 葉身全体が淡緑色で、新葉の葉先がやや切り裂ける  
下位葉 葉鞘部に亀裂
中下位葉 葉脈間に不規則な赤褐色斑点(Zn濃度が低下する)
さらに欠乏が続くと葉先縁枯れ症状発現(P濃度上昇に伴うK欠乏の誘発)
(雌穂) 穂長が短い、中央部が太い、穂柄側がやや細い、著しい先端不稔、一部裂粒
亜鉛
(Zn)
上位葉 葉身中央部に表皮剥離状白色斑が帯状に現れ、中心部は破れたようになる pHが高いと発現し易い
中位葉 葉身基部側より葉縁部が白色化、一部は主脈部分を残して切り裂ける
中下位葉 やがて葉脈間に不規則な赤褐色斑点が現れる
さらに欠乏が続くと葉先縁枯れ症状発現(P濃度上昇に伴うK欠乏の誘発)
(雌穂) 穂長が短い、穂先が細い、著しい先端不稔、穂柄側に列状の着粒不良
ホウ素
(B)
新葉 葉先が僅かに枯れ、葉の展開が不良になったり、葉縁が切り込み状に裂ける   ×
上位葉 一部の葉身が大きく切り裂ける
中位葉 葉身の裏側の主脈付近が白色化
中下位葉 葉脈間に不規則な赤褐色斑点(Zn濃度が低下する)
さらに欠乏が続くと葉先縁枯れ症状発現(P濃度上昇に伴うK欠乏の誘発)
(雌穂) 著しい不稔



窒素
(N)
上中位葉 P欠乏に類似した葉先の白化、Ca欠乏に類似した葉縁部の切り込み状の裂け  
中下位葉 さらに過剰が続くと葉先縁枯れ症状発現(K欠乏の誘発)
(雌穂) 先端部に裂粒、一部に穂腐れ
リン
(P)
上中位葉 葉身基部側の葉脈間が黄白化(Fe欠乏の誘発、K濃度も低下する)   ×
中下位葉 激しい葉先縁枯れ症状発現(P濃度上昇に伴うK欠乏の誘発、Zn濃度の低下)
(雌穂) 先端不稔、列状の不稔、先端部の湾曲
カリウム
(K)
上位葉 Ca欠乏症に類似した症状を軽く発現、やがて緩和される  
中下位葉 葉先の先端部と葉脈間の一部に黄化症状→壊死斑(Mg濃度が低下する)
その他は株全体的に異常が少なく、濃緑色を呈する
(雌穂) 穂先側半分に不均一な不稔障害
マンガン
(Mn)
上中位葉 葉身基部側の葉脈間より黄白化(Fe欠乏の誘発)  
中下位葉 葉脈間にやや濁った黄褐色の斑点→数珠状の赤褐色斑点へ変化

(Cu)
上中位葉 株全体が淡緑化し、Fe欠乏に類似した葉脈間の黄白化症状発現 著しい生育抑制
他要素の吸収抑制
× ×
中下位葉 葉の巻き上がり症状を発現、しおれる
(根) 主根は太く、短い、側根の伸び著しく悪化
亜鉛
(Zn)
上中位葉 葉身基部側より葉脈間が黄白化(Fe欠乏の誘発)、新葉では葉脈も黄白化  
中位葉 葉身片側の葉脈間に筋状の黄化症状→帯状の壊死斑
ホウ素
(B)
中下位葉 外観的に特に異常を示さない さらに過剰が続くと軽い葉先縁枯れ症状発現(P濃度上昇を伴うK欠乏の誘発)  
(雌穂) 穂の湾曲などの奇形、先端不稔、列状の不稔
ニッケル
(Ni)
中下位葉 葉脈間に無数の白色小斑点を不規則に発現、裏面にも観察される
さらに過剰が続くと軽い葉先縁枯れ症状発現(P濃度上昇を伴うK欠乏の誘発)
 


1)生育初期(第4葉展開期)以降の欠如および過剰処理を行った場合の雄穂の抽出程度、
○:正常に抽出する、△:抽出するが雄穂の展開が劣る、×:抽出しない。

2)生育初期および生育中期(第9葉展開期)以降に欠如および過剰処理を行った場合の雌穂の抽出程度、
○:正常に抽出する、△:絹糸を抽出するが雌穂の抽出は不完全、×:抽出しない。

3)生育中期以降に欠如および過剰処理を行った場合の雌穂の外観品質、
○:正常である、△:異常がみられる、×:著しい異常がみられる、-:雌穂が形成されない。

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