水産研究本部

ミツイシコンブ:こんぶ漁業(ミツイシコンブ)

ミツイシコンブ

漁業の情報

漁業許可等の区分第一種共同漁業権漁業
主な操業地域日高振興局管内沿岸
取材地日高振興局管内浦河町、様似町
漁場水深2~8メートル
漁具棹、ネジリ、マッケ
漁期採りこんぶ漁=7~10月、拾いこんぶ漁=周年
漁船規模船外機船
出荷形態乾燥、規格製品化

対象魚の情報

標準和名ミツイシコンブ
英名tangle、ribon weed、kombu(コンブ全般)
科目コンブ目コンブ科
学名Laminaria angustata Kjellman
俗名、地方名日高コンブ、シオホシ
混獲魚なし
道内主産地函館市汐首岬(旧戸井町)から噴火湾、襟裳岬を経て釧路総合振興局白糠町まで

漁業のすがた

日高で漁獲されるコンブはミツイシコンブで、全道の天然コンブ中2番目に生産量が多く、ダシに良し、食べて良しと用途の広い万能コンブです。日高地方では7月初旬に解禁となります。
各浜には「旗持ち」がおり、夜が明けきらぬうちから日和見をして凪(なぎ)が良く、午後まで天気の続くような日に旗を揚げます。その合図で「採りこんぶ漁」が始まります。 最も優良な漁場は海水の流れの強い水深2~8mの岩礁地帯です。 陸側のコンブは漁期の中盤までカギ棹を使ってコンブを採りますが、漁期の後半では水深が深くなりコンブも短くなるため、ネジリといわれる棹を使います。
陸には「陸廻り(おかまわり)さん」が待機していて、コンブを満載にした舟が帰ってくると、砂利が敷き詰められたコンブ干場(かんば)に素早くコンブを並べます。 舟は何度も漁場と陸を往復してコンブを陸揚げしますが、日高の採りこんぶ漁はその日のうちに天日乾燥させるため、コンブ干し作業は非常に忙しく、家族総出での作業となります。 干場がコンブでいっぱいになる頃、旗が降ろされその日の漁は終了します。コンブが乾燥するのを待って夕方までにはコンブを取り込み、こんぶ採りの一日は終わります。
天日乾燥されたコンブは、丁寧に切り揃えられ、コンブ小屋(倉庫)で庵蒸(あんじょう)された後、色艶、重量、幅などの基準により一本一本選別されます。 この選別作業を「選葉(せんぱ)」と言います。製品は三尺五寸(105センチメートル)に切り揃えられ20キログラムに結束された長切昆布が製品の中心となりますが、切断された頭(カシラ=根側の基部)やシッパ(先端部)の部分も頭コンブや短尺コンブとして出荷されます。
日高地方では特上浜、上浜、中浜、並浜と称する浜格差があり、浦河町井寒台地区が特上浜とされています。
また、太平洋に面している日高沿岸では時化(しけ)により海岸に寄ったコンブを拾う「拾いこんぶ漁」が周年行われています。
 

増殖と管理

ミツイシコンブの増殖を目的に現在の門別町沙流において1863年から6年間にわたって場所請負人であった山田文右衛門が約32万個の投石を行ったのが北海道でのコンブ漁場造成の始まりとされています。 古くから漁業者・漁協による投石や岩爆等の漁場造成が行われてきました。しかし、その対象面積、効率に限界があるため、近年は大型機械式による雑海藻駆除が各部会、漁協により実施されるようになりました。 同時にかさ上げ礁、築いそ、岩盤掘削等の大規模な漁場造成事業が計画的に行われています。
雑海藻駆除は、生育条件的にはコンブに適しているものの雑多な海藻が繁茂しているためにコンブの着生が妨げられている漁場でその雑海藻類を駆除することによりコンブの着生を助け、増産に結びつける手法です。
かさ上げ礁、築いそ事業は石材を投入することにより、水深や着生面を改善しコンブの着生量や品質を改良する手法です。
岩盤掘削は平磯に溝を掘ることにより、コンブ着生面積を広げるとともに海水の交換を改善しコンブの着生を助け、増産を図る手法です。
これらの造成手法を地先の地形に合わせて複合的に行うことにより効率的にコンブの増殖を促しています。しかし、長期にわたり造成効果を維持するには、漁業者自らによる造成後の漁場管理が重要となっています。
また、資源管理として旗揚げにより漁業者が一斉に出漁することで漁獲日数や採取時間を管理し、資源状態に合わせた漁獲を行っています。

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漁具

カギ棹:採りこんぶ漁に使用します。

ネジリ棹:採りこんぶ漁で漁期後半に水深帯の深い場所のコンブを採る時に使用します。

マッケ:拾いこんぶ漁の時に岸から投げてコンブを引っ掛けて採ります。

漁具3種:左からネジリ棹2本、カギ棹1本、拾い用カギ棹4本

操業

採りこんぶ漁操業風景1:採りコンブの操業風景。操業時には浜は多くの船や人で活気づきます。

採りこんぶ漁操業風景2:良い漁場には、船が集中します。

棹入れ1:船を波に立てて(波に舳先を向けて)棹を入れます。

棹入れ2:棹で引っ掛けたコンブを束ねて引き抜きます。

陸揚げ:陸揚げされたコンブです。

運搬:干場までトラックに移し変えて運びます。

拾いコンブ漁操業風景1:時化模様の日にはコンブが浜に打ち上がり、拾いこんぶ漁が行われます。

拾いコンブ漁操業風景2:波打ち際でコンブが寄ってくるのを待ちます。

乾燥~選葉

乾燥作業1:陸廻りさんが陸揚げされたコンブを干しにかかります。

乾燥作業2:砂利を敷き詰め、整地された干場にコンブを乾します。

乾燥作業3:一本一本、丁寧に広げて乾していきます。

干場(かんば):干場一面に整然と並べられたコンブ。壮観な風景です。

裁断1:乾燥されたコンブを専用の台を使い切り揃えます。

裁断2:切り揃えたコンブを束ね、倉庫へ運び庵蒸(あんじょう)します。

日入れ:天気の良い日に、コンブを倉庫から出して天日にさらします。これを日入れといいます。

選葉(せんぱ):重量や色艶などの等級基準に合わせて選別します。

検査・出荷

検査1:検査協会の職員が一段ずつコンブの等級品質を確認していきます。

検査2:等級確認の終わったコンブに等級のハンコを押します。

検印:このハンコは通称”ポンポン”と呼ばれており、検査員が大事に持ち歩いています。

製品:検査が終わり出荷を待つ段コンブ。1段は20キログラムに結束されています。(長切昆布)

協力:日高振興局管内/日高中央漁業協同組合(旧 浦河漁業協同組合) 井寒台・浦河・白泉昆布会
えりも漁業協同組合 冬島支所(旧 冬島漁業協同組合) 海藻生産実行組合
取材:日高地区水産技術普及指導所

最終更新日:2013年03月01日