水産研究本部

ナマコ人工種苗生産

ナマコ

親の飼育方法、特徴

親ナマコは10月から加温して飼育し、積算水温が1,800℃になると採卵・採精が可能になります。

様々なマナマコ

受精・ふ化の方法、特徴

親ナマコ1個体ずつ15リットルのスチロールバットに収容し、真暗なところで加温刺激により放卵・放精を促します。採卵した卵は洗浄後スチロールバットに収容し、希釈した精子液(複数の雄)と混ぜ合わせて受精させます。

マナマコを海水で洗浄します。

スチロールバットに1個体ずつ入れます。

水温計を設置して温度管理(加温刺激)を行います。

雄の放精の瞬間です。

放卵した卵をサイホンで回収します。

卵を洗浄します。

卵をスチロールバットに収容します。

ろ過海水を補充します。

精子液を計量します。

精子液を薄めてから受精させます。

受精卵と未受精卵の様子です。

餌料の種類、特徴

幼生期の餌料はキートセラスグラシリス(浮遊珪藻)を与えますが、着底後はアワビモ(通称ウルベラ:盤状緑藻)、天然珪藻、リビック(粉末海藻)を与えます。
 

嚢胚期幼生(受精後1日目)の様子です。

初期アウリクラリア幼生(受精後2日目)の様子です。

アウリクラリア幼生(受精後8日目)の様子です。

ドリオラリア幼生の様子です。

着底した稚ナマコの様子です。

種苗の性質、飼育時間、期間

受精後約15日で体長約1ミリメートルの稚ナマコになり、さらに4ヶ月後に約5ミリメートルに成長します。その後中間育成して10ヶ月で約30ミリメートルに成長します。 

幼生期飼育したパンライト水槽から稚ナマコを回収します。

アワビモ(通称ウルベラ::盤状緑藻)が付着した波板です。波板に稚ナマコを沈着させます。

稚ナマコをアワビモの水槽に収容します。

中間育成

中間育成は、宗谷漁協ではタマネギ袋にネトロンネットを入れたものを育成器として用い、それに稚ナマコを収容して海中で中間育成を行っています。給餌は行わず、天然の付着珪藻等を餌としています。
他の施設では陸上の大型水槽で飼育され、リビック(粉末海藻)を給餌して行っています。

リビック(粉末海藻)を給餌しています。

全て同じ時期に採苗したものです。稚ナマコは成長差がとても大きいです。

フルイで選別し大きさを揃えます。

選別された大型の稚ナマコです。

種苗放流実績

(平成15年度)

生産地放流場所放流数
 宗谷漁業協同組合宗谷漁協前浜地先15万個体

放流時の大きさ、方法、場所

宗谷漁協の放流時の体長は約30ミリメートルです。放流場所は宗谷漁港離岸堤付近(水深8メートル)で潜水による放流を行っています。 

潜水により放流される稚ナマコです。

種苗生産について

 1 種苗生産のあらまし
北海道におけるマナマコ種苗生産技術の開発は、平成元年から道立栽培漁業総合センター(現 道総研 栽培水産試験場)、(道総研)稚内水産試験場と宗谷漁業協同組合が共同で取り組み始められました。体長5ミリメートルまでの種苗生産技術はほぼ確立されており、現在では宗谷漁業協同組合で約30万個の種苗生産を行っています。 しかしながら、初期育成中の生残率が低いことや成長のばらつきが大きいこと等が課題となっています。
近年、マナマコの需要が高まると共に、各地でマナマコ人工種苗放流の要望が強く、(社)栽培漁業振興公社鹿部事業所、函館市恵山ウニ種苗センター、伊達火力発電所温水センター、根室漁協採苗場等、数ヶ所の施設でマナマコ種苗生産の試験が行われています。

2 種苗生産方法・工程等
栽培漁業総合センター(現 道総研 栽培水産試験場)で行われているマナマコ種苗生産は次の方法で行われています。
10月から水温を上げて親ナマコを飼育し、3月から6月にかけて採卵を行います。親ナマコ1個体ずつ15リットルのスチロールバットに収容し、加温刺激により放卵・放精を促します。卵は洗浄後スチロールバットに収容し、希釈した精子液と混ぜ合わせて受精させます。幼生飼育はパンライト水槽で約15日間行い、餌はキートセラスグラシリス(珪藻)を与えます。着底後はアワビモ(通称ウルベラ:盤状緑藻)の波板を収容した大型水槽に移し、リビック(粉末海藻)で飼育します。成長にばらつきがあり、ほとんどの個体が体長5ミリメートルになるのには着底後約4ヶ月かかります。
中間育成は宗谷漁協ではタマネギ袋に収容して海中で行っています。10ヶ月間中間育成した後、体長約30ミリメートルで潜水によって放流されます。
協力・取材・編集
協力:北海道立栽培水産試験場(現 道総研 栽培水産試験場)
宗谷漁業協同組合
伊達火力発電所温水センター
取材:胆振地区水産技術普及指導所
編集:栽培水産試験場普及指導員(現 胆振地区水産技術普及指導所 普及指導員)