水産研究本部

ウニ人工種苗生産

ウニ

親の飼育方法、特徴

親のエゾバフンウニは通常、その地区の産卵期前に採取して陸上水槽でコンブ等を給餌や水温調整を行いながら生殖巣を成熟させたものを用います。
釧路地区では、12月中旬に潜水で採取した厚岸産ウニを、3月末まで施設内で徐々に加温しながら飼育し、成熟させたものを用いています。3月末の最終飼育水温は12~13℃です。

潜水により採取した親ウニ(エゾバフンウニ)です。 水揚げの刺激で中には白い精子を吹き出すものもあります。

受精・ふ化の方法、特徴

採卵は口器を取り除き体腔内(殻の中)を洗浄後、濾過海水を満たしたスチロール棒瓶にウニを逆さまに置き行います。採精は同じく口器を取り除き体腔内を洗浄後、精子の放出を確認後精巣を摘出します。
媒精(人工受精)は卵を10リッター円形水槽内の濾過海水に移し、一定密度の精子液を加えて受精させます。これを湿導法といいます。その後、数回余分な精子を流す洗卵を行います。48時間静置後、幼生飼育水槽に移し、飼育を開始します。
幼生にはキートセラス・グラシリスという浮遊珪藻を与えます。幼生は腕が4本の4腕期、6本の6腕期、8本の8腕期の各ステージを経て、3週間程で変態し、稚ウニとなります。
幼生の最終ステージの8腕後期で最大長が約0.9~1ミリメートル、変態直後の稚ウニの殻経は約0.3~0.4ミリメートルです。

採卵の様子:スチロール棒瓶の底に卵が沈んで溜まります。

媒精の様子:卵の入った円形水槽に精子液を加えます。

受精直後の卵

分割を始めている卵(4分割)

4腕期幼生

6腕期幼生

8腕期幼生

稚ウニに変態した直後(殻経約0.3ミリメートル)

餌料の種類、特徴

餌料の種類は浮遊幼生期には珪藻のキートセラス・グラシリスを与え、稚ウニに変態した後は成長に合わせてアワビモ(通称ウルベラ)、付着珪藻、アナアオサ、コンブを与えます。
キートセラスの培養方法は、培養液を入れた10ミリリットルの試験管に原株を移して培養を開始し、100ミリリットルの三角フラスコ、同じく500ミリリットル、1リットルの平底フラスコで順に培養を行います。
アワビモの培養方法は、アワビモの濃密に繁茂したアクリル性の波板(付着板)と新しい波板を同じ水槽に収容し、流水下で増殖させます。
アナアオサ、コンブについては、天然に繁茂しているものを採取して使用します。
 

平底フラスコで培養中のキートセラスです。

アワビモ(通称ウルベラ)の付着した波板です。

沈着と初期育成

媒精から3週間程経過した4月下旬から5月中旬に、ウニに変態直前の幼生をあらかじめアワビモや付着珪藻を着生させた波板が並ぶ稚ウニ飼育水槽に移し、これに沈着させます。波板1枚当たり3千個程になるよう幼生を移します。このときのウニの大きさは殻経0.3~0.4mm程です。ウニは波板に付着したアワビモやアワビモの上に付着した珪藻を食べて成長します。
その後、5月下旬に、密度調整のため波板の一部を別の水槽に移します。これを分散といいます。
これ以降、稚ウニ飼育水槽1槽あたり約20万個体で飼育します。餌は7月中旬まではアナアオサを合わせて与え、その後コンブに変えます。 

施設と稚ウニ飼育水槽

波板に付着している稚ウニです。

コンブを給餌している様子です。

コンブに付着する稚ウニです。

出荷

10月下旬から11月中旬、ウニが殻経5~15ミリメートル程に成長したら、管内の各漁協に出荷されます。事前に測定と計数を行い、発泡スチロール製の箱に海水で湿らせたウレタンマットを敷き、それに収容して出荷します。

波板からウニを剥離します。

稚ウニの大きさを測定し、出荷のサイズを把握します。

選別に使用するふるいです。

ウニを選別している様子。

輸送用の発泡スチロール製の箱とウレタンマットの準備をします。

箱詰めして出荷されます。

放流

釧路管内では各漁協が受け入れと同時に前浜に放流を行います。また、一部は養殖用種苗として籠による養殖に向けられます。 

前浜に放流される稚ウニ。

放流の様子です。

種苗生産について

 1 種苗生産のあらまし
北海道ではエゾバフンウニの資源を安定的に確保するために、全道各地で人工種苗の生産、放流が行われています。人工種苗生産技術は1980年代前半に道立水産試験場(現 道総研 水産研究本部)で開発され、現在では道内20カ所あまりの施設で、人工種苗生産が行われています。
エゾバフンウニは生息する海域により産卵期が異なるため、各海域の産卵期に合わせて種苗生産が行われています。
平成16年には全道94漁協のうち支所を含む65漁協で殻径5mm以上のエゾバフンウニ人工種苗が約5,150万個体放流されています。

2 種苗生産方法・工程等
種苗生産は完熟した親ウニから卵と精子をとり、湿導法により受精させます。18℃に管理した水温で飼育すると約20日で浮遊幼生から稚ウニに変態します。
この浮遊幼生期にはあらかじめ培養した浮遊珪藻(キートセラスとよばれる植物プランクトン)を与えます。稚ウニに変態し底棲に移行するときには、これもあらかじめ餌となるアワビモや付着珪藻を培養しておいた波板と呼ばれる沈着板に沈着させ飼育を行います。
その後ウニの成長に伴い、餌としてアナアオサやコンブを与えます。稚ウニがある程度の大きさ(3ミリメートル以上)になると分散とよばれる密度調整を行い、籠による飼育を行う種苗生産施設もありますが、釧路管内水産種苗生産センターでは、作業による減耗をさけるため、出荷まで波板飼育を行っています。
稚ウニは5~10ミリメートル程度に成長すると管内の各漁協に出荷され、漁場に放流されますが、一部の地区では養殖用の種苗として、海中で籠による養殖も行われています。
協力・取材・編集
協力:釧路管内水産種苗生産センター
取材:釧路地区水産技術普及指導所
編集:釧路水産試験場普及指導員(現 釧路地区水産技術普及指導所 普及指導員)