水産研究本部

シシャモふ化放流

シシャモ

親の飼育方法、特徴

親魚は夜に川に遡上してくるシシャモを水産試験場が予測した遡上日を目安に地びき網を使って捕獲します。
トラックでふ化施設まで輸送して水槽に収容しますが、産卵のため川に遡上したシシャモは成熟しているのでペアを組めるよう雌雄を1:1に尾数を調整して収容します。
雌の抱卵数は体長12センチメートルで約9,000粒、体長約13センチメートルでは約11,000粒で、卵の大きさは直径約1.5ミリメートルです。

夜に川を遡上するシシャモを地びき網で捕獲します。

地びき網で捕獲したシシャモです。

シシャモはトラックで生きたまま運び、ふ化施設の水槽へ収容します。

水槽へは雌雄を1:1で収容します。

受精・ふ化の方法、特徴

水槽に収容された親魚は収容直後から数日のうちに自然産卵します。産卵行動は雌雄1尾ずつで行われ、雄は複数の雌とペアを組んで数回に分けて産卵します。
雄は産卵の際に少量の精子で確実に受精させるために伸長した尻ビレを雌の体に巻き付けます。
シシャモは川底の砂に卵を生むため、収容する水槽には0.3センチメートルほどの砂が敷き詰めてあります。卵は付着沈性卵で砂を包むように付着します。(産卵が終了した親は取り上げます。)

水槽内の親魚は収容直後から数日のうちに自然産卵します。

水槽内の雌親魚です。

水槽には卵を産むための砂が敷き詰めてあります。

砂に付着する卵です。

放流時の大きさ、方法、場所

親魚は11月中旬から下旬に捕獲し、自然産卵された卵は翌年の4月初旬から5月下旬に卵黄のうと仔魚鰭膜を持った状態でふ化します。
受精からふ化までの積算水温は350℃前後でふ化直後の仔魚は全長8~9ミリメートルです。
仔魚はふ化施設の放水路を水の流れに乗って川へ出て、そのまま海へと放流されます。
 

ふ化するまでの間、卵を管理します。 施設内は気温がマイナスになるので水のトラブルなどに注意を払います。

卵の中に眼が確認できるようになりました。(発眼卵)

ふ化直前の卵です。この時期には卵の中で動いているのが確認できます。

全長8~9ミリメートルほどのふ化した仔魚です

種苗放流実績

(平成16年)

生産地放流場所放流数
釧路市ふ化施設 卵3億粒
白糠町ふ化施設 卵3億粒

種苗生産について

 1 種苗生産のあらまし
新釧路川では、ししゃもこぎ網漁業の開始された昭和32年前後から人工ふ化放流事業が試みられてきました。以前は人工採卵を行いシュロ皮やグラス・ウールのふ化盆を使用していましたが、現在では捕獲した親魚をふ化施設内の水槽に収容し、産卵床で自然産卵させる方法でふ化放流が行われています。
毎年11月中旬から下旬に親魚捕獲のため川岸に小屋を建て、漁業者や漁協職員などが集まり、夜に遡上するシシャモを地びき網によって捕獲します。遡上は2~3日の間に大群をなして行われ、期間も短く遡上を逸すると親魚確保が困難になるので、現在では釧路水産試験場がシシャモ資源の漁況予測を行い、計画的な漁業支援をするとともに遡上時期予測をしています。
雌の体重に対する卵巣の重さの割合(生殖腺重量指数)が新釧路川では体重の約1/4になると遡上を始めることを利用して精度良く遡上日を予測することが可能なため、遡上予想日から漁業者自ら操業終了日を決定し、産卵親魚の確保に努めています。

2 種苗生産方法・工程等
人工ふ化放流に使用する親魚は、川に遡上したシシャモを地びき網により捕獲し、トラック輸送によってふ化施設に収容します。親魚は雌雄1:1になるように収容し、収容直後から数日のうちに自然産卵します。産卵行動は雌・雄1尾ずつで行われ、雄は複数の雌とペアを組んで数回に分けて産卵します。(産卵終了後の親魚は取り上げます。)
卵は付着沈性卵で砂を包むように付着します。直径約1.5ミリメートルの卵は、積算水温は350℃前後で、約5ヶ月後にふ化します。ふ化直後の仔魚の大きさは全長8~9ミリメートルでふ化した直後に水の流れに乗って川から海へ自然放流されます。
ふ化後1年半を経過した2年魚の多くは体長11~14センチメートルになって成熟し、産卵のため河川に遡上します。
協力・取材・編集
協力:釧路ししゃも桁網漁業運営協議会
取材:釧路地区水産技術普及指導所
編集:釧路水産試験場普及指導員(現 釧路地区水産技術普及指導所 普及指導員)