水産研究本部

試験研究は今 No.51「ホッケ卵の利用について」(1990年12月7日)

Q&A? ホッケ卵の利用について教えてください。

  ホッケの卵巣は現在、利尻島や礼文島などでその一部が自家用として総菜とされているだけであり、加工原料として利用されていません。

  宗谷周辺海域でのホッケの産卵期は10月から11月です。この時期の雌の体重に占める卵巣の割合を10パーセントと仮定すると、加工原料として利用可能な卵巣の量は、50トン程度と考えられますので量的にみても加工原料としてホッケの卵巣を充分利用することが可能です。また、稚内地区の加工業界からは「キャビア様製品」を作りたいとの要望もあり、地域の特産品としての製品開発が期待されています。

ホッケの卵の特徴

ホッケの卵には利用加工するうえで次のような特徴があります。
  1. 卵の色が白、桃、青、緑、茶など変化に富んでいる
  2. 多回産卵のため同一卵巣内で卵の大きさや硬さが異なる
  3. 卵のうが柔らかく、卵巣がこわれやすい
  4. 鮮度が低下すると生ぐさ味がある
  5. 卵自体のうま身が少ないが、くせがない
  これらの卵の特徴からホッケ卵の利用方法としては、粕漬、わさび漬、いずし、松前漬などが考えられますが、今回はホッケ卵がくせがないことから、卵をばらばらにし、調味加工品の試験を行いましたので紹介します。

調味卵製造工程

調味卵の製造工程
  試験した調味卵の製造工程は次のとおりです。

  原料は3パーセント塩水でていねいに洗浄し、分離網を用いて卵をばらばらにします。この分離した卵を3パーセントの塩水で数回換水しながら5度以下で血抜きをします。その後、水切りし、等重量の調味液を用い5度以下で漬けこみます。調味液を水切り後、びん話します。
 製造工程中の歩留りは、卵粒分離後では78パーセント、血抜き後では86パーセント、製品では91パーセントでした。
    • 図1、図2

ホッケの調味卵
  食感については、原料に黒や暗褐色の卵巣を使ったものは、味、香り、卵の硬さに問題があり、淡緑色の卵巣を使ったものは、味、香りとも好評でした。なお卵膜が硬すぎる完熟卵は発酵食品に加工すると硬さをカバーできるものと考えられます。

貯蔵性

  原料の鮮度低下は生ぐさ味の発生と関係しますが、冷蔵すると3日間は加工原料として使用できます。また直ちに処理加工できない場合は、洗浄し塩蔵(食塩25パーセント程度)後、凍結し、解凍脱塩して加工することもできます。また、調味加工した卵は、5度では7間、-18度以下では数か月間貯蔵できます。(稚内水試)

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