水産研究本部

試験研究は今 No.59「厚田におけるハタハタの標識放流結果について」(1991年3月29日)

Q&A? 厚田におけるハタハタの標識放流結果について教えてください。

北海道周辺のハタハタの主な産卵地と沖合底曳網漁場の分布
  ハタハタは冷水性の底生魚類で朝鮮半島北西水域からソ連領沿海州、サハリン千島、カムチャッカ及びアメリカ本土のシトカ付近までの北部太平洋一帯の大陸棚以浅に分布しています。

  日本では、道南、遣東太平洋及び青森県から宮崎県まで、日本海では道西と津軽海峡及び青森県から鳥根県まで広く分布し、底曳網、定置網、底刺し網などで漁獲されています。

  昭和40年代に北海道で7~8千トンも漁獲されていたハタハタは、昭和60年代に入ってわずか1千5百トン前後しか獲れなくなりました。中でも石狩湾北部沿岸では40年代に1千3百トンも獲れていたのが近年では30トン以下にまで激減しております。

  石狩湾北部沿岸(厚田村)におけるハタハタについては、試験研究プラザでの要望もあって、平成元年度から産卵接岸群を対象に標識放流による魚群行動調査を実施しましたので、その結果について概要をお知らせします。

  石狩湾北部沿岸に接岸するハタハタは、沖合から雄冬岬付近を経て南下し厚田周辺の浅海域に接岸して産卵しますが、産後は直ちに沖合に移動して水深およそ300メートル前後の深いところで生活すると推測されています。

  しかし、この産卵群の行動に対して長年ハタハタを漁獲してきた漁業関係者によると、沖合から接岸する過程で南下行動するのは同一見解ですが、産卵行動に関してはまったく反対で、厚田前浜の産卵場には嶺泊の方から浅海を移動して来る北上説が大勢を占めていました。

  このため、道西日本海に分布するハタハタの移動、回遊をさらに追及するため、平成元年11月、厚田村前浜の浅海に接岸した産卵前のハタハタ396尾に標識札を付け、厚田より北側の太島内トンネル付近から放流しました。

  その結果、放流した翌日から5日くらいの間に69尾再捕されましたが、そのすべてが放流点から南に移動して再捕されました。放流から再捕場所までの最長距離はおよそ20キロメートル(太島内トンネル~無煙)で、再捕までに要した最長時間は105時間でしたが、放流点からおよそ10~14キロメートルの青島~古潭の南の水深3メートルを中心とする場所での再捕が最も多く、その経過時間も57時間に集中していました。

  また、平成2年には、厚田の北側(太島内トンネル)と南側(嶺泊)で270尾放流しましたが、やはり再捕された63尾は5日以内ですべて南に移動していました。放流から再捕場所までの最長距離は9キロメートル(嶺泊~知津狩)で元年よりかなり短く、再捕までに要した時間は112時間で元年よりもやや長いようででしたが、放流点からおよそ6キロメートルの安瀬の水深3メートル付近で16時間経過して大部分が再捕されました。

  なお、再捕されハタハタは一部産卵直前のものもありましたが、ほとんどは産卵後のものであることから、接岸して産卵するまでに要する時間は短時間と思われます。
    • 標識放流から再捕まで
  したがって、平成元年から実施した石狩湾北部沿岸のハタハタの標識放流試験結果から、この海域に接岸するハタハタは、11~12月頃沖合から接岸南下して産卵場に入り、2日前後の短時間に産卵して、終われば直ちに沖合へ移動することが明らかになりました。(中央水試)