水産研究本部

試験研究は今 No.83「定塩サケフィレーの加工方法につて教えて下さい」(1991年11月15日)

Q&A? 定塩サケフィレーの加工方法について教えて下さい

  サケというと、食塩をたくさん使った新巻サケが代表的なものですが、消費者のし好が変化し、塩分の高い食品が好まれなくなりました。しかも、量販店などでは、消費者の少量購入に合わせ、パック詰めの切り身売りが多くなり、女性やアルバイトでも簡単に切れるフィレー(頭、内臓を除いた後、三枚卸とした身の部分)での搬入を望むようになりました。そこで塩昧を低く抑え、なおかつ、魚の背肉から尾肉までの各部分になるべく塩分が均一に入った「定塩サケフィレー」の登場となりました。

  定塩サケフィレーは、三陸や銚子などのサケ加工としては新興地区から始まり、切り身需要が最も高い輸入ベニサケを中心に年間2万トン以上の生産が行われています。

  水に塩を溶かしてかき混ぜると、簡単に塩分が均一な塩水ができますが、魚肉の場合、身の厚さや脂肪の量などが各部分により異なるため、定塩サケでは全体をなるべく同じ塩分にするための工夫がされています。

  定塩サケはフィレーにすることにより塩分のコントロールを行いやすくし、低温下で一定時間塩水に漬けたりして塩分を均一にした後、真空パックで凍結されています。ここに、釧路水試がベニサケのフィレーを用いて行った試験結果を紹介します。方法は、(1)散塩漬け(塩を振りかける)による方法と(2)塩水漬け(塩水の中に漬ける)による方法で、いろいろな条件で行い、製品の塩分が低塩分(平均4パーセント以下)で±1パーセント程度におさまる条件を検討しました。図1は、それぞれの方法でよい結果を得た処理工程です。
    • 図1
  また、その時の塩分を測定した部位及び塩分量を図2、表1に示しました。
  1. 散塩漬けによる方法では、アラスカ産のベニサケを使い、6パーセント散塩し24時間放置後、流水で6時間塩抜きを行った場合、塩分が各部位とも2~4パーセント範囲に入りました。
  2. 塩水漬けによる方法では、カナダ産のベニサケを用い、20パーセント塩水に24時間漬けた後、流水で2時間塩抜きを行った場合、塩分が各部位とも2~3パーセントでした。なお、1,2とも5度前後の温度、水温で塩漬け、塩抜きを行いました。また、各処理後に生じる肉色の退色は、フィレーを真空包装後、24時間放置することによりかなり改善が出釆ました。

  以上定温サケの作り方について述べましたが、方法としては、大量処理が行える(2)塩水漬けによる方法が適していると思われます。(釧路水試加工部 阪本正博)
    • 図2

ちょっとためになる話

イカとタコ
  イカとタコはともに頭足類に属し、体が(腕)(足)→頭→外套(胴体)とつながる構造になっており、分類学的にはとても良く似ています。イカとタコの代表的な違いは腕の数や鰭の有無(例外もある)などいくつかありますが、あまり知られていない違いを2つあげます。ひとつは吸盤。イカの吸盤には角質化したギザギザのリングが埋まっていて獲物に「引っかかる」感じでくっつきますが、タコでは熱帯魚用水温計の吸盤のように柔らかくぴったりと「吸い付き」ます。もうひとつの違いは敵から逃げるための墨。タコの墨は水中で煙のように広がり敵の目をくらます「煙幕」、イカの墨はあまり広がらず、敵の目を惑わす「おとり」あるいは「分身」の役目をするのです。