水産研究本部

試験研究は今 No.74「醤油漬けイクラの保存性を高める方法について教えて下さい」(1991年8月23日)

Q&A? 醤油漬けイクラの保存性を高める方法について教えて下さい。

  醤油漬けイクラはサケ産地の家庭料理として古くから珍重されてきましたが、塩分が少なく水分が多い製品のため、保存性が低く、なかなか商品化されませんでした。しかし、最近の冷凍・冷蔵技術の発展と、それにともなう低温流通が進むにつれ、消費地への輸送が可能となり、イラクが持つ高級イメージに、醤油という日本的風味が加味された醤油漬けイクラの需用が近年急速にのびてきています。

  醤油漬けイクラの製法は、鮮度のよいサケ卵を分離器にかけ、卵粒にした生イクラを用い、薄い塩水で洗浄し毛細血管や粘質物を除き、調味液に漬け込み、その後包装またはビン詰めされ、冷凍して消費地に送り出されています。 サケ卵は漁期の早い時期では、分離器にかけると卵粒がつぶれてしまい歩留りが悪く、また、漁期の終わりでは卵膜が硬い、俗に言うピンポン玉となりイクラを製造するには適さなくなります。このためサケ卵の選択はイクラを製造する上で重要です。原料卵の熟度としては、魚体重量に対して卵が13~16パーセント程度のものが好ましいといわれています。また、調味料は基本的には醤油(または白醤油)と酒であり、味を調えるためにグルタミン酸ソーダや天然調味料が使われています。製品が液漬けのまま売られるタイプと液切りをするタイプがあり、その用途により異なりますが、調味液は原料100に対し15~30、配合は醤油と酒が1~3対1で行われており、液切りを行う場合は数時間から1晩漬けられているようです。

  このように漬けた醤油漬けイクラは、塩分は2パーセント前後と低く、保存性があまりよくありません。そこで、醤油漬けイクラの保存性を高め、日持ちをよくする方法を検討しました。
    • 表1
図1
  表1に試験を行ったときの調味液の配合割合を示しました。調味液は原料100に対し16とし、各試験の塩分が約2パーセントになるように食塩を加えて調整しました。試料1は対照で、試料2は炭酸ガスを封入し密封包装したもの、試料3はアルコールを加えたもの、試料4は酢酸を加えて漬け込んだものです。各試料とも調味液に1晩漬けた後、液切りをして保蔵試験を行いました。

  図1に保蔵中の細菌数の変化を示しました。家庭の冷蔵庫の上段にあたる5度で貯蔵した場合、試料1(対照)は12日程度(細菌数では10の7乗~10の8乗個/グラム)で腐敗の初期段階にたっしましたが、試料3では約30日と2.5倍ほど日持ちが良くなり、アルコールの添加により保蔵性が向上されることがわかりました。また、心配されたアルコール臭は、製造後数日で感じられなくなり問題ないと思われました。醤油漬けイクラを造ったけれど、あまり日持ちがしないと言う方、ちよっと試してみてはいかがですか。ただし、いくらアルコールを入れても、暖かいところへ置きっぱなしにするのでは、日持ちはしませんので気を付けて下さい。(釧路水試加工部) 

北海道立水産試験場の試作品展示、試食会開催のお知らせ

  水産試験場で最近開発した新しい加工品の展示並びに試食会を次のとおり開催いたしますので、多数の皆様のご参加をお待ちしております。

日時:平成3年9月13日(金曜日)13:00~15:30
場所:道庁赤レンガ3号会議室(札幌市中央区北3条西6丁目)
主催:北海道立水産試験場
参加料:無料
内容:
  • 講演「エクストルーダーによる食品開発」「カラスガレイの利用」「ウマズラハギの利用」
  • パネル展示
  • 技術相談
  • 試作品展示、試食会
エクストルーダー利用による各種製品、カラスガレイ、ウマズラハギ、キンコ、キュウリウオ、ウロコメガレイ、ナマコ、アカボヤ