水産研究本部

試験研究は今 No.77「平成2年生まれのホタテガイ種苗生産とその利用状況について」(1991年9月13日)

~専技室から~ 平成2年生まれのホタテガイ種苗生産とその利用状況について

  ホタテガイは、春に産卵し、約40日間の浮遊生活を経て付着生活に入ります。
採苗器に付着した稚貝はその年の秋に採取され、かごによる中間育成を経て、当年貝種苗租苗や越冬貝種苗として養殖用・増殖用及び販売用として利用されています。

  専技室では、7月に平成2年度の種苗生産とその利用状況について全道の水産普及指導所を通じて調査したので、その概要をお知らせします。
    • 図1
1.付着数
津軽海峡西側、根室海峡、能取湖、留萌南部を除くと良(61パーセント)~並(28パーセント)が大部分を占め、付着は順調でした。(図1)

2.中間育成
大時化により施設被害を受けた一部地区を除いて、生残、成長共に順調でした。

3.種苗生産
全道の種苗生産数は38.2億個で、前年とほぼ同数となりました。その内訳は地元産種苗が35.2億個、採取稚貝を購入して造った種苗が3.0億個(8パーセント)(前年6パーセント)でした。
これを支庁別にみると、網走の14.1億個を最高に、渡島7.0億個、留萌6.3億個、胆振5.9億個と続きます。これら4支庁だけで全体の87パーセント(前年88パーセント)を占め、いずれも重要な種苗生産地帯と言えます。(図2)

4.種苗の利用(仕向)状況
38.2億個の種苗の利用内訳は、養殖用に10.7億個(28パーセント)増殖用に14.7億個(39パーセント)が使用され、残りの12.8億個(33パーセント)は出荷販売用に向けられました。前年と比べるとほぼ同様の結果でした。更に、出荷販売先での養殖と増殖用の使用目的別に分けて先の項目別数量に加えると、最終的に種苗の利用割合は、増殖用に27.5億個(72パーセント)、養殖用に10.7億個(28パーセント)利用されたことになります。(図3)

5.種苗の売買 
出荷販売数は12.8億個で、越冬貝が10,3億個(81パーセント)、当年貝が2.5億個(19パーセント)となりました。支庁別では、留萌の5.0億個を最高に、胆振3.4億個、網走2.3億個の順となっています。
一方、購入された12.8億個は、殆どが増殖用として利用されました。
支庁別では、宗谷の4.8億個を最高に根室3.9億個、網走3.5億個の順となっています。いずれも地まきの大量生産地であることが特徴と言えます。

6.採苗稚貝の移出入
付着量が少ない地区及び付着量は多かったが成長不良の地区での購入が目立ちました。
購入量は4.1億個、一万出荷数は2.5億個と一致しませんが、取扱上の事情によるものと思われます。

7.まとめ 
全道的には付着良好だったため、付着量が不良などの地区は、他地区からの採取稚貝の導入などでほぼ計画どおりの生産をあげることができました。又近年の高水温に支えられて成長もよく、おおむね順調な需給関係にあったと思われます。(専技室 中尾水産業専門技術員)
    • 図2
    • 図3
    • 図4