水産研究本部

試験研究は今 No.84「輸入、養殖サケ・マス類の原料特性について」(1991年11月22日)

輸入、養殖サケ・マス類の原料特性について

  最近、輸入、養殖サケ・マス類は国内総供給量の45パーセント以上を占め(’90年)その数量は年々増加し、サケ・マス市場における重要性はさらに増大すると考えられます。しかし、輸入、養殖物の原料性状は明らかではなく、その利用加工も経験に頼らざるを得ないのが水産加工の現状です。そこで、シロサケを対照に、これら輸入、養殖物など(6種11区分)の原料特性について調査研究を行いました。

    • 表
  輸入物は、氷蔵セミドレスのアトランティックサーモン(A.サーモン)が鮮度指標値(K値)=71パーセントと鮮度低下が見られた他は、大部分が冷凍ドレスで、鮮度も良好です(K値=25~40パーセント)。なお、輸入物は主に刺身、切身、くん製などに、また一部定温フィレーとして利用されています。

  各種サケ・マス類の成分について、背肉の水分でみると、ベニザケ1がシロサケの73~74パーセントと同じですが、他の試料はすべてそれより少なく、70パーセント以下であり、腹須肉でも同じ傾向がみられ、特にギンザケ1およびA.サーモンの腹須肉は59~60パーセントと低い値を示しました。背肉の脂質をみると、A.サーモン、ギンザケ1、サーモントラウト(S・トラウト)、ベニザケ2が9~13パーセントと多く、また、腹須肉でも同じ傾向を見せ、A.サーモン、ギンザケ、べニザケ2、S.トラウト3が15~20パーセント、S.トラウト1および2、ドナルドソンで9~11パーセントと多脂性魚の傾向がみられます。べニザケ1は、シロサケと水分、脂質が同じレベルにあります。

  養殖物はベニザケ2以外の天然物に比べ、水分は少なく、脂質が多いことがわかります。タンパク質はA.サーモンがやや少ない他は、各試料間で大きな差異はみられません。灰分についても同様です。イノシン酸はかつお節に代表される旨味成分の一つで、魚種や鮮度によっても大きく左右され、鮮度低下したものでは少なくなります。前述のように、A,サーモンが少ない他は、各試料間で差異はありません。エキス(遊離)アミノ酸には呈味に関与するグルタミン酸、グリシン、アラニン、ヒスチジンや生理活性を有するタウリン、サケ肉に多量に存在するアンセリンなど、多くのアミノ酸が含まれます。養殖物は天然物と比較してヒスチジンが多く、また、遊離アミノ酸(F.A.A)組成も異なり、さらに、同一種内でも、魚体の性状、時期あるいは養殖条件などにより、F.A.A組成や量が異なることが推察されます。F.A.A量やその組成は種や性別、漁獲時期、場所、成熟度、生理条件さらには、漁獲後の処理、保蔵条件などにより異なることが考えられ、さらに究明される必要があります。サケの肉色は主として、カロチノイド系色素の一つである赤色色素アスタキサンチンによるもので、ベニザケが最も多く、また、カロチノイド量と肉の赤色度(a値)は相関があり、a値も最大です。サケの品質は.肉色と脂肪ののりで決まると言っても過言ではありません。官能評価から、ベニザケ2が最も高く、次いで、養殖物が脂肪ののりや総合評価でシロサケに比べ高く評価されました。

  しかし、養殖物は種や養殖条件(餌、汽水、海水)により、その性状は一様でなく、皮下脂肪が多く、官能的には、くどさがあり、また、肉質が柔らかく、表皮のぬめりや粘質物、さらには臭いなどが懸念されます。(釧路水試利用部 西田原料化学科長)