水産研究本部

試験研究は今 No.86「マナマコ産卵期と産卵期保護の現状」(1991年12月6日)

マナマコ産卵期と産卵期保護の現状

  1:はじめに 
  現在、稚内水産試験場が中心となって調査を行っているマナマコ共同研究の一つ、産卵期調査の結果と、資源管理の基本である産卵期保護の現状についてお知らせします。

  2:マナマコの生殖巣
 
  マナマコの生殖巣は非常にたくさんの技別れをもつ樹状の器官で、体壁の内側に、左右2つあります。これは俗に「コノコ」と呼はれていて、最高の珍味とされています。生殖巣の大きさは産卵期以外は萎縮して目立ちませんが、産卵期では体腔内を満たすほど発達します。この生殖巣の発達状況を利用して漁場での産卵期を推定するために、1989、1990年の2年間、生殖巣指数調査と生殖周期調査の2つを実施しました。生殖巣指数調査は生殖巣指数(生殖巣重量×100÷内臓除去重量)、生殖周期調査は生殖巣の組織の変化を観察することで、産卵期を推定します。
図1
 3:宗谷での産卵期調査 
生殖巣指数(図1)は、両年とも6月下旬から7月上旬にかけて生殖巣指数がピ-ク(1989年:5.5、1990年:4.1)を迎え、それ以降、急激に下降し、9月には1以下に減少します。このとき、ほとんどの個体の生殖巣は退縮しており、産卵開始が予測されます。
図2
 生殖周期調査(図2)では、生殖巣指数がピークとなる7月上旬に、産卵の終了を示す休止期が出現(7パーセント)します。それ以降、生殖巣指数の減少と平行して、休止期の頻度は増加し、8月上旬以降全件の半数以上になります。同様に、成熟後期は徐々に減少し、9月中旬には12パーセントまで減少します。7月上旬に最初の休止期が出現することから、その直前に確実に産卵が開始されたと判断できます。両調査を総合すると、産卵期は、標本のばらつきを見込んで、6月下旬から9月中旬までと結論しました
4:産卵期保養の現状
産卵期調査は過去に全道13ヵ所(図3)で実施されています。その結果を総合すると、北海道での産卵期は、7~8月に集中しています(表1)。北海道海面漁業調整規則には水産動物の産卵保護規定(第39条)で、マナマコの禁漁区は、地域ごとに、次の3つに区分されます。
    • 表1
    • 図3
  1. 桧山、渡島および胆振支庁管内沖合海域は6月21日から8月20日まで。
  2. 日高、十勝および釧路支庁管内並びに、根室市納沙布岬から根室市と厚岸郡界に至る間の根室支庁山内沖合海域では、7月11日から9月20日まで。
  3. 石狩、後志、網走、宗谷および留萌支庁管内並びに根室市納沙布岬から目梨・斜里両

郡界に至る間の根室支庁管内沖合では5月1日から6月15日まで。ここで、主要な産卵期である7~8月が禁漁期からずれている区分(3)がある点は産卵期保護に不十分であり、地元漁業との調整を図りながら改善が望まれます。また資料が不足しているオホーツク海と太平洋東岸の未調査地域の早急な調査も必要です。(稚内水試 増殖部 桑原康裕)