水産研究本部

試験研究は今 No.89「本道水産の北方海域への関心」(1992年1月10日)

本道水産の北方海域への関心

  政治変動が続いていた、隣国ソ連は、年末になり、ついに69年間続いた連邦体制が消滅し、ロシア共和国が新たな隣国になりました。
 
  最近、本道の漁業関係団体では北方海域の漁業資源に強い関心を示し、様々な動きが起こっています。しかし、経済制度の違いで色々行き違いが起こり、トラブルの発生が懸念されています。
資料
 表に平成2年度の水産分野におけるソ連との合弁事例を載せました。今後ロシア共和国の政治的安定が進むにつれ、このような動きはますます多くなっていくと考えられます。

このことは、北方海域の水産資源に我々日本人が好んで食するものが豊富にあることを意味します。魚たち水産資源には国境はないので、本道近海に自由にやって来ます。彼らにとって、そこは生活の場の1部なのです。したがって、彼らの生まれてから成長するまでの過程を調べる研究者にとっては、現在、自由に行くことの出来ない北方海域での彼らの生まれる状況、成長する状況などの調査結果は喉から手の出るような思いであります。このことは資源の有効利用とともに関係国との友好につながるものと思います。

そこで、試験研究機関では、北方海域での国際研究交流について、どのようなことをやっているかを簡単に紹介しましょう。

平成2年から水産技術国際交流事業として、水産試験場とサハリンのチンロ(ソ連大平洋漁業海洋研究所)との研究交流を行っています。交流方法は、相互招待式で年2回行います。それぞれ3人参加します。2年度はこちらからは新たに建造になった中央水産試験場の「おやしお丸」で行き、そのすばらしさに感心されました。そこでは、今後、それぞれの関係海域の水温の観測データの交換や関心のある魚種に関する文献交換などや今後この交流をいかに進めて行くかなどの話合いが行われました。

3年度には前年と同じメンバー(1人は都合で来れませんでした)所長のルフロフ氏と副所長のズベリコーワさんが前回約束したスケソ関係の文献を携えて11月に1週間こられました。
これに対し、水産試験場側ではベストセラー「北の魚たち」という本を贈呈しました。 また、交換の終わった海洋観測結果、ニシンの成熟度調査の方法、産卵状況、スケソ関係の調査状況、サハリン海域での磯焼の有無などについて話合いが行われました。彼らは非常に友好的で、自分の知っていることについてはあます事なく、披露し、研究心旺盛なところがうかがえ、水産試験場の研究者も満足していました。この交流は今後も継続して行う予定ですので、色々期待できることでしょう。

来年は本道で彼らの研究者の研修の受け入れの検討も希望され、今後、関係機関と十分協議し、実現に向け努力することにしております。この研究交流の他に、ソ連主張の北方4島周辺のいわゆる3角水域で、日ソ共同でカニ類の資源調査を行い、この海域でのこれらの資源の豊富さが確認されました。この共同調査は今年も行う予定にしており、大きな成果が期待されています。
このように、水産試験場の研究にも国際的感覚での対応が必要になってきています。

水産資源も地球的規模での資源保護を検討して行かなければ、先行き色々な面で困難になることが考えられます。

従って、これらの隣接国との研究交流などは先見的で今後ますます盛んになることが望まれています。(水産部)