水産研究本部

試験研究は今 No.101「ウロコメガレイの利用加工について」(1992年4月17日)

ウロコメガレイの利用加工について

  ウロコメガレイは、北部日本海で沖合底びき網漁業によって多量に混獲されますが、大部分は洋上で投棄されています。これは、一見したところ形態はソウハチガレイに似ていますが、味が劣るためといわれています。最近、カレイ類が高価になってきていることもあり、試験調査船北洋丸で漁獲したウロコメガレイを用い、加工品の試作を行いましたので紹介します。

ウロコメガレイの特徴

  試験に用いたウロコメガレイの体長は22~25cm、体重は152~271gでした。

  部位別重量比をみると、ソウハチガレイと比較して頭部が大きく、精肉、皮部が小さいことがわかりました(表1)。また、精肉の水分と粗脂肪は多いが、粗たん白質は少ないことがわかりました(表2)。このため、本乾品に加工すると肉やせや油焼けが生じやすくなります。

  したがって、乾製品では乾度の低い、一夜乾品が適しているものと考えます。

  遊離アミノ酸含量は130~160mg%であり、味は淡白で、くせの少ない魚です。また、肉質が柔らかいため、煮熟すると身締りは劣りますが、コンブ締め処理をすると刺身としても食べられます。これらの性質より、調味や加圧脱水処理を用いる”いずし”などの調味漬物類にも適しているものと考えます。

  氷蔵による鮮度保持試験結果によると1日後までは鮮魚として、4日後までは加工原料として利用できます。
    • 表1、表2
    • ウロコメガレイの特徴

ウロコメガレイ一夜乾

  ウロコメガレイー夜乾の製造工程は次のとおりです。
 
  原料→頭部、内臓除去→水晒し(流水、2時間)→水切り→散塩漬(10%食塩)→塩抜き(流水、24時間)→調味漬け込み(3倍量0.5%%リポタイド液)→水切り→乾燥(20℃、16時間)→真空包装(脱酸素剤封入)→製品

  うろこをよく落し、頭部、内臓を除き、側線部に空刀を入れ、水晒しします。5℃で4日間以上散塩漬後、塩抜きし、1晩調味します。20℃で1晩乾燥後、酸化防止のため脱酸素剤を入れて真空包装します。

  一夜乾では、肉質の柔らかさが問題となりました。しかし、散塩漬処理には、肉質に適度な硬さを与える効果が認められました。製品歩留まりは約35%であり、試食判定結集では、色、味、香り、硬さなどの点で好評でした。

    • ウロコメガレイ一夜乾

ウロコメガレイいずし

  ウロコメガレイいずしの製造工程は次のとおりです。

  原料→頭部、内臓、腹須除去→切り身→水晒し→水切り、脱水→仮酢漬→脱水→漬け込み→発酵、熟成→加圧脱水→製品
  新鮮な原料を用い、うろことぬめりをよく落とし、頭部、内臓、腹須を除き、切り身とします。水晒しは、5℃以下の水道水を用い、流水状態で2日間行います。切り身重量の40%の食酢に10分間浸漬後、加圧脱水します。米飯は硬く炊いて、酢合わせしたあと放冷し、糀合わせをします。にんじん、しょうがはよく洗い皮を取り、千切りにします。きゅうりは輪切り、とうがらしはみじん切りにします。漬け込みは容器の底に笹の葉を敷 き、魚肉→米飯→野菜類→散り酢、食塩→笹の順で行い、これを繰り返します。

  漬け込み重量の3~5倍の重石をし、5~10℃で35日間発酵、熟成します。

  脱水は、容器を逆さにし、60kgの加圧で4時間行います。

  製品の歩留まりは、原料魚に対して35~41%でした。試食判定結果では、色、香り、硬さとも良好であり特に淡白な味が好まれました。(稚内水試加工研究室 佐々木政則)
    • ウロコメガレイいずし