水産研究本部

試験研究は今 No.114「石狩湾ニシンの産卵親魚の異常現象について」(1992年8月21日)

水試よもやま話 石狩湾ニシンの産卵親魚の異常現象について

  石狩湾海域生態調査は、現在も継続されている地道な海洋調査活動ですが、長年調査に携わってきた中で、石狩湾ニシンの産卵親魚に見られた異常現象のことが今でも頭の隅に残っています。

  石狩湾ニシンは、昭和38年に厚田沖で刺し網により1.8トンの漁獲をみたのが始まりで、それ以来、石狩湾全体で水揚げされるようになりました。このニシンは従来漁獲されていた北海道・サハリン系ニシンと比べて鱗紋がきわめて不明瞭な個体が多く年齢査定が困難であるなど独特の鱗相を持ち、ニシンの質的変化を暗示するものとして注目されました。現在の学説では、このニシンは厚田系群として位置付けられており、固有の産卵場と回遊生態をもっていると考えられています。

  いずれの年も主に厚田を中心に漁獲されましたが、漁獲量は昭和46年の80トンを最高にその後年々減少、衰退の一途をたどり最近ではわずか2トン(H2)漁獲されているに過ぎません(図1)。

  昭和48~54年にかけて、石狩湾ニシンの産卵親魚に異常な個体が数多く出現しました。精巣と卵巣を合わせ持った雌雄同体(図2)や卵巣が水ぶくれ状に肥大したもの(図3)などが見られるようになり、その出現率は最も高かった昭和53年には調査個体数の16.4パーセントにも達しました(表1)。
    • 図1
    • 図2
    • 表1
  また、この年には5月下旬~6月上旬になっても完熟卵をもった親魚が出現するといった異常な現象があり、調査報告書の中でも、「産卵繁殖にまつわる特異な現象が近年目立っている」と特記しています。

  なぜこのような異常が多発するのか、そのことが資源にどのような影響を与えるのか、文献を調べたり専門の研究者に問い合わせたりしましたが、結局今日までその原因を明らかにすることができないままになっています。海洋環境とそれに左右される資源動向に関していろいろな研究が息長ぐ続けられていますが、このような一過性の現象について我々の成し得ることは、何十年後になるかわからない同様な現象が起きたときのために資料を整えそおくことだけでしょう。

  当時、調査を手伝っていた漁業者が冗談に「近親結婚だからだべ。」と話していたのが、石狩湾ニシンのローカル性やその後の漁獲量の衰退と妙に符合し、今でも印象に残っています。
(中央水試 海洋部 田村真樹)

元気に育て!

-余市でヒラメ放流式開催-
  今年の放流式は、地元余市町と余市郡漁協の主催により7月24日(金曜日)浜中モイレ海水浴場で行われました。
    • 余市でヒラメ放流式開催の図
  当日は、前日までぐずついた天気が回復し夏の日差しの下、阿部省吾余市町長、中島剛隆余市郡漁協組合長及び石狩湾の関係漁協並びに道の各関係機関のほか、余市町立登小学校と余市海洋少年団の子供達合わせて約100人が参加しました。

  式では、まずはじめに主催者を代表して阿部町長が式辞を述べられ、次に中央水試の富田副場長から祝辞がありました。そのあと登小学校の6年生藤川和也君によるヒラメを送る言葉が発表されました。そして、海洋少年団によるヒラメを送るエールの手旗が披露され、このあと全員でヒラメ種苗約2,500尾を海に放流しました。
(中央水誌 企事情報室)