水産研究本部

試験研究は今 No.123「ワカメに付着するホシについて教えて下さい」(1992年10月30日)

Q&A? ワカメに付着するホシについて教えて下さい。

  ワカメは古くから乾ワカメとして貯蔵し、味噌汁の実や三杯酢などで食べられてきました。最近は、湯通し塩蔵処理による保蔵方法が開発されたことや消費者の健康食、自然食ブームに支えられ、カットワカメ、お茶漬ワカメ、ワカメスープなどの高次加工品もたくさん生産されるようになりました。

  乾ワカメや塩蔵ワカメの品質の見分け方としては、肉質に弾力性があること、濃緑色~黒褐色の固有の光沢があること、特有の香りがあること、珪藻類の付着によるホシつきのないことが主要なポイントとなっています。

  これらの乾ワカメの品質基準のうち、ホシつきによる品質の低下は、どの程度あるのでしょうか?昭和40~41年の調査結果によると、33パーセント程度となっており、予想以上の数量となっております。

  平成4年5月26日の宗谷地域試験研究プラザで”ワカメに付着するホシについて”の質問がありましたので、水産試験場におけるこれまでの知見を紹介します。

ワカメにホシは、なぜつくのでしょうか?

  乾ワカメの表面が、泥を塗ったように汚れたものや薄青白い光沢の斑点のついたものを”ホシつきワカメ”と呼んでいます(図1)。

   ”ホシツキワカメ”は、外観が悪く、品質低下の原因とされるだげでなく、その程度の著しいものは、ほとんど商品価値がなくなります。このワカメのホシつき現象は、年により、時期によって、程度に違いはありますが、暖気に向かうと起こるようです。また、同じ地区でも場所によってホシのつき方に違いがあり、潮通しの悪い場所や日光の良く当らない場所のワカメに多いといわれています。

  ホシつきワカメを顕微鏡でのぞいてみると、葉の表面にある無数のくぽみからたくさんのうぶ毛状のものが束になって外側へ密生しています(毛巣、図2)。さらにホシのついた部分をよく見ると、毛巣から出ている毛に珪藻類がたくさんついていることがわかります(図3)。

  この付着した珪藻は、リクモフォーラ(図4)などの羽状珪藻といわれるもので、分泌する粘液物質によってワカメなどの大型藻類に付着する性質を持っております。

  また、付着した珪藻は一般的に黄褐色をしていますが、乾燥すると青みを帯びた白色に変化し、ホシつきの原因となります。
    • 図1
    • 図2
    • 図3
    • 図4

ワカメのホシを除く方法について

表
  水産試験場では、ワカメに付着する珪藻の性質を調べ、これに対応したホシの除方法について試験しました。

  珪藻類は、珪酸塩を含むベクチン様物質で包まれています。この物質は水に溶けませんが、アルカリ性の溶液中で加熱したり、ペクチナーゼのような酵素で処理すると水に溶けやすい性質に変わります。このような性質を応用して、次のような弱アルカリ性の炭酸マグネシウム溶液を用いる方法でワカメに付着したホシを除いております。

  ワカメ→炭酸マグネシウム添加海水浸漬(ワカメの2~3倍重量の海水に0.1~1パーセントの炭酸マグネシウムを溶かし上澄み液を用いる)→かくはん(10分間以上足踏みかくはんする)→海水洗浄(2~3回)→乾燥→製品

  製品の歩留りは、10~60分間のホシ除去処理によって0.7~1パーセント低下します(表)。

  しかし、炭酸マグネシウムを含んだ海水処理には、ワカメの退色防止効果があるため、乾燥後の選別時に除かれる赤葉や枯葉の割合が少なくなり、全体的にみた製品歩留りの低下は小さいといわれています。

  以上は、生ワカメについての試験結果です。ホシつき乾ワカメを水戻しして同様の処理をすると、ある程度ホシは除けますが、その効果は生ワカメの場合と比較して劣るといわれています。
(稚内水試 加工研究室 佐々木政則)