水産研究本部

試験研究は今 No.127「北の魚-第3回キタムラサキウニ-」(1992年11月27日)

北のさかなシリーズ -第3回 キタムラサキウニ-

  中央水試では、1990年から日本海中部沿岸の磯焼け地帯で漁業生産を向上させるために「磯焼け漁場有効利用技術開発調査」に取り組んでいます。この中で、磯焼け現象の持続要因は、キタムラサキウニが冬期間に海藻類の幼芽を摂餌してしまうことによるものと仮定して、冬になる前に一定区画に生息するキタムラサキウニを除去しました。すると、翌春にはワカメ、スジメを中心とした海藻群落が形成され、この仮説が実証されました。

  しかし、今までキタムラサキウニが季節的にあるいは成長に伴ってどのくらいの海藻類を摂餌するのか、あるいは摂餌活動にはどのような要因が左右しているのかについての知見はほとんどありません。そこで、室内あるいは天然域で、ホソメコンブに対する摂餌活動について調べてみました。

  室内実験の結果、摂餌量は4月以降増加し、6月には殻径50?台のウニは、1個体1日当り4.4グラムと最大になりました(図)。天然域においても、この時期に摂餌が活発になりますが、摂餌量は室内飼育の約半分程度でした。また、室内、天然域とも1~3月の低水温時と8~10月の成熟・産卵に至る時期には摂餌量が減少することで共通しています。

  一般的に、ウニ類の摂餌活動を左右する要因としては、1)成熟過程 2)食物の種類 3)ウニの密度 4)水温 5)波浪 6)光などが考えられます。最も摂餌する春~夏にかけても、生殖巣の発達状態の違いにより、個体によって摂餌量の相違がみられます。また、この時期に天然域では、設置したコンブから離れていく個体があります。設置したコンブ量とウニの付着数には一定の関係があるようで、ウニがある付着量以上になると、コンブを摂餌できないものが出てくるようです。このことは、ウニに給餌する場合に、餌料をどのように配置して、全個体均一に摂餌させてやるかが、身入り促進のための重要な要因になっていることを示唆しています。

  今後、天然域においてウニ個体群と海藻群落の量的な関係を明らかにするためには、これらの要因について1つ1つ明らかにしていく必要があるでしょう。
    • 図
    • キタムラサキウニ

トピックス

-浜益地区でミニプラザ開催-

  平成4年11月12日(木曜日)、浜益村福祉館で試験研究ミニプラザが開催されました。当日は、地元からウニ、アワビ等の磯まわり関係の漁業者をはじめ、漁協や役場の職員、そして支庁、指導所、水試の職員合わせて46人が集まりました。

  はじめに、今年の6月に浜益地先で行われたウニ資源量調査結果について、増殖部の大崎研究員から報告がありました。続いて質疑討論に入り、活発な意見交換が行われました。その一部を紹介しますと、毎年安定的にウニの生産を続けていくためには、どれくらいの種苗を放流すればいいかといったことや、ウニの天然採苗についての質問がありました。これについては、長年ウニの研究に携わって来た川村場長から、昭和49年ごろに積丹町美国で行われたウニの天然採苗技術開発試験について、当時の経緯などが、くわしく説明されました。

  また、横山職員と高谷研究員から中央水試の試験調査船「おやしお丸」を使って撮影された魚礁のビデオが紹介されました。ふだん浜に出ている漁業者の方たちでも、水深40メートルもの海底に設置された魚礁の姿を目で見る構会は少なく、画面に、魚礁のまわりに集まってくる大きな魚たちが映し出されると、会場から大きな、どよめきの声がおこりました。

  これらの報告の後、ウニ、アワビ等を中心とした浅海資源の管理について総合討論が行われ、盛会のうちに終了しました。
(中央水試企画情報室)
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