水産研究本部

試験研究は今 No.134「エゾバフンウニの人工種苗生産と漁場放流状況について」(1993年2月19日)

エゾバフンウニの人工種苗生産と漁場放流状況について

  北海道におけるエゾバフンウニの人工種苗生産は、施設の整備に伴い年々増加しています。現在、図1に示すように全道の25ヵ所に施設が設置(沈着期幼生からの飼育雄設を含む)され、殻径5ミリメートル以上の種苗で約4,200万粒の生産規模となっています。

  水産業専門技術員室では各地区普及指導所の協力を得て、平年元年から3年までの年別・漁協別のウニ種苗の漁場放流実施状況について調査をしました。
  図2は、年ごとの種苗生産数量と漁場放流数、さらに事業実施漁協数を示したものですが、いずれも年々増加していることが伺えます。

  これらの調査資料の中から、平成3年のエゾバフンウ二人工種苗放流事業の実施状況について述べたいと思います。

  平成3年に生産されたエゾバフンウニの人工種苗は約4,700万粒(各漁協の種苗購入数から逆算・殻径5ミリメートル以下のサイズを含む。)で、おもに日本海、津軽海峡、太平洋に面した78カ所の漁協で種苗の購入(自己施設分を含む)を行っています。これら購入種苗のサイズは殻径1.5ミリメートル前後の大型種苗から殻径3ミリメートル位の小型のものまで色々な段階がありますが、一般的には5ミリメートルサイズの種苗を購入して、各々の地域で中間育成を行って馴致し、15ミリメートルサイズに育成して漁場放流するというのが基本となっています。

  しかし、地域によっては気温・水温・結氷等の自然環境条件が厳しいなどの理由で、小型サイズの種苗でも中間育成を行わずに直接漁場放流している場合があります。

  下記の表1は、その状況を示したものですが、放流数の3,936万粒の中には1,490万粒(約38パーセント)もの小型種苗が含まれ、直接漁場放流されていることに注自してみなければならないと思います。
    • 表1
  このような小型種苗を直接漁場放流している背景には、中間育成を行う場合の管理作業や施設経費を相当に必要とすることから、小型種苗の漁場放流後の生残率が悪くても「量でカバー」という考えで行っている場合があるようです。

  この『5ミリメートル種苗の中間育成か…』『小型種苗の直接漁場放流か…』等の選択については、まだ未解決な部分が多く残っていますが、地域の条件等を加味した中で、最も効果的な方法を探り出すことが必要と考えています。

  さて、ウニ種苗の放流効果についてですが、各地区の普及指導所が懸命に状況把握の調査を行っていますが、放流種苗の生残率や漁獲への跳ね返り等については、地域によってはまだ判明していないところもあり、この放流効果の把握は早急に行っていく必要があります。

  また、この事業の効果的な推進を図っていくためには、栽培漁業に不可欠な漁業者の積極的な参画が必要です。特に、道立水産試験場が1991版として発行した「エゾバフンウニ人工種苗放流マニュアル」にも示されていますが、種苗放流漁場における餌料海藻確保や害敵駆除等の漁場管理に対する取り組みが、この事業の効果を大きく左右するといっても過言ではないと思っています。

  また、漁業者自らが自分の目でウニの放流漁場を覗いて見ることも必要です。そして、関係の漁協や普及指導所等に状況を伝え、一緒に行動していくことが大切なことと考えています。
(水産部総括水産業専門技術員)