水産研究本部

試験研究は今 No.148「マボヤの種苗生産試験について」(1993年6月18日)

マボヤの種苗生産試験について

  渡島管内上磯町茂辺地漁協では、昭和55年頃からマボヤの養殖が小規模ながら行われています。平成4年の生産高は24.8トン、885万円(出荷漁家3件)ほどでした。現在、種苗は東北地方から天然採苗後1年経過したものを購入していますが、平成3年から着業者が10漁家に増えたため、地元のホヤによる採苗を試みることになりました。採苗試験を行うに当たっては、岩手県水産試験場の研究報告※を函館水産試験場増殖部よりいただき、その方法に基づいて平成3年度から実施していますが、ここでは平成4年度の結果について説明します。

1:採苗施設について

  親ホヤ収容には0.5トン水槽(産卵水槽)1基、採苗用には1トン水槽3基を使用しました。流水量は各水槽とも10リットル/分で行い、排水口には卵の流出を防ぐためにミュラーガーゼ(NXX13)を取り付けました。

2:親ホヤについて

  親のマボヤは、茂辺地漁協と当別漁協沖合から採取した天然のホヤ120個体を使用しました。これらのホヤは木箱に立てて動かないように固定し、産卵用水槽に収容しました。

3:産卵について

  産卵は飼育期間中(11月20日~12月20日の32日間)に19日行われました。産卵時間は、午前9時~午前12時頃までですが、主に10時~11時に行われる事が多いようです。1日の産卵は約1時間で終了します。また親1個体の産卵間隔は平均3分間に1回でした。親飼育水槽の水温は9.6~13.8度で、水温の顕著な上昇、下降があった時に多量の産卵が行われているようです。また水温10度以下になると産卵回数、産卵量とも極端に少なくなりました。卵は産卵終了後衝撃を加えないように、予め海水をはっておいた採苗用水槽にバケツで移しました。

4:採苗について

  平成4年度の採苗に使用した卵数は、約12,200万粒でした。採苗は卵収容後3日目に水槽にタル木を渡し、三つ編みしたパームロープ(採苗器)を吊るして行いました。その後3~4日で稚仔の付着が肉眼でも確認されるため、それから沖出しを行います。従って、産卵から養殖施設への垂下まで7~10日間で完了することができます。尚、付着数を確認するために試験用種苗糸を吊るして調べましたが、種菌糸1センチメートル当たり10.1個体~52.9個体とむらが多かったため、実際の付着数を養殖中のもので調べる予定です。平成4年度の採苗器は170連(24メートル/連)4,080メートル分になり、現在沖合の養殖施設で1年間の仮殖を行っています。これらの生産は4~5年後になる見込みです。

  これまで茂辺地漁協が中心となって、当水産指導所や函館水試専技室などの関係機関が協力しながら試験的に行ってきましたが、今後も連携を取りながら、採苗方法を確立して、早く地元の種苗でまかなえるようにして行きたいと考えています。
※岩手水試研報 1971.「マボヤの室内人工採苗試験」写真は函館水試増殖部田嶋魚貝科長(現中央水試)の協力による。

(函館水試水産業専門技術員 中尾博己)
(渡島中部地区水産技術普及指導所専門普及員 河村治夫)