水産研究本部

試験研究は今 No.425「稚内水産試験場の水産試験研究プラザ紹介」(2000年6月12日)

稚内水産試験場の水産試験研究プラザ紹介

  水産試験研究プラザについては、これまでにも何回かこの「試験研究は今」で取り上げられてきましたので、あらためて説明する必要はないと思いますが、簡単に申しますと、水産試験場では、地区やテーマをしぼってプラザを開催し、漁業者の皆さんと意見交換を行ったり、水産試験場の持っている情報の提供や技術指導を行っています。

  今回は、稚内水試で今年度開催した水産試験研究プラザについて報告します。

  4月24日(月曜日)に利尻町でホッケに関するミニプラザを開催しました。利尻、礼文地区ではホッケは主要な魚種の一つで、利尻町では、春は巻き網漁が盛んになります。

  しかし、昨年の巻き網漁の漁獲は殆どない状態となり、漁業者の今年にかける意気込みが高くなっています。

  ミニプラザでは、当試験場ホッケ担当の高嶋研究員が昨年秋までのデータなどに基づき、利礼海域のホッケの資源量や今年の春の漁況予測などについて情報提供を行いました。

情報提供の後の質疑では、
(質)
ホッケの産卵場所と回遊状況はどのようになっているのか。
(答)
利礼周辺はホッケの主要な産卵場所になっており、推進50メートルより浅い岩礁地帯に産卵するとされている。
ホッケは秋から冬にかけてふ化し、その後沖合に出ていくものと考えられている。翌年の春から秋にかけてはアオボッケと呼ばれ、表層にいる。1歳になる頃から底に沈み、ロウソクボッケと呼ばれるようになり、翌年春にハルボッケと呼ばれるようになる。
ロウソクボッケは、まず大陸棚周辺におり、その後多少の移動を行いながら翌年の春に沿岸に寄ってきてハルボッケとなり、夏は周辺海域に分散し、秋には産卵のためまた沿岸により、産卵後は深場に戻るという回遊を繰り返していると考えられている。
(質)
利礼海域でふ化したホッケはこの海域で成長するのか。
(答)
利礼海域でふ化した稚魚がこの産卵場所に戻ってくるかどうかは、今のところ分かっていない。
しかし、ハルボッケについては、殆どがその海域に居着いていることが標識放流によって分かっている。

などの利礼海域におけるホッケの関する質問が出されました。

また、質問の他に、
(意)
過去のデータに基づいた資源の予想も必要であるが、ホッケの漁期前に北洋丸(稚内水試の試験調査船)による海況状況や計量魚探調査を行い、その結果に基づいた予想を立てることは出来ないか。また、漁期前に調査結果を伝えてもらえれば、それを参考にして漁を行うことが出来る。
(意)
ある地区では、試験場で集められるデータ、漁業者の協力なしでは集められないデータなどについて、率直に話し合いを行い、その結果漁場に関する細かなデータを収集することが出来た例がある。
利尻地区においても、水産試験場と漁業者が相互協力により、より細かいデータを集めていく必要があるのではないか。

  といった貴重な意見も多数出されました。

  この意見に対して稚内水産試験場としても聞きっぱなしという訳にはいきません。出来ることは極力実行していこうと言うことで、来年度のホッケ計量魚探調査の時期については既に見直しの検討に入っています。

  また、データの収集方法あるいはデータ収集に関する漁業者との協力関係についても、方向を模索しているところです。
  この他、5月30日には礼文町でニシンに関するプラザを開催し、大槻資源管理部長からニシンの分布と海洋環境について情報提供を行いました。

  その後の意見交換では、次のような質問が寄せられました。

(質)
今礼文で漁獲されているニシンは、北海道サハリン系のニシンではないのか。
また、留萌で漁獲されているニシンは何系なのか。
(答)
今礼文で漁獲されているニシンは、テルペニア系のニシンではないかと思われる。
留萌で漁獲されているニシンは石狩湾系ニシンである。
(質)
礼文で獲れているニシンの、今後の漁獲状況はどうなると考えているのか。
(答)
正確な予想となると非常に難しいが、今のところでは、急激な変動はないと思われる。
この他にも、日本海ニシン資源増大プロジェクトに関する意見などが出されました。
ニシンに関するプラザは、6月12日に利尻町でも開催される予定となっています。

  稚内水産試験場では、これからも水産試験研究プラザを通して様々な情報の提供を行っていく予定です。また、プラザで出された意見に対して、可能なものは実施し、現状では実施困難なものについては何を改善すれば実施できるのか前向きに検討して行くつもりです。

  単に水産試験場からの一方的な情報提供の場とは考えずに、浜の皆さんから多くの意見を出してもらい、水産試験場を活用する場として、水産試験研究プラザを利用していただけるよう頑張っていきますので、これからも多くの方々のご参加をお願いします。

(稚内水産試験場 企画総務部主査)