水産研究本部

試験研究は今 No.404「浜中産ながこんぶの等級別成分について」(1999年11月12日)

浜中産ながこんぶの等級別成分について

  乾燥したこんぶは、その種類や産地ごとに決められた検査規格によってそれぞれの等級に選別されます。主に、実入りの良し悪し(一枚あたりの重さ)や色などがその判定基準となりますが、等級(品質)と化学成分の間にどのような関係があるのか浜中産ながこんぶ(成こんぶ)を対象として調べてみました。

  図1に例を示したように、ながこんぶの成分は、炭水化物と灰分が主な成分であり、両者を合計すると無水物換算で90パーセント近くを占めます。さらに炭水化物はアルギン酸やマンニトールという成分が主体となります。灰分はカリウムやナトリウム、塩素などの無機成分から成っています。
    • 図1
  従来のながこんぶの分析結果から、これらの中で量的に変動が大きいものとしてマンニトールと灰分があげられます。マンニトールの多いものは灰分が少なく、マンニトールの少ないものは灰分が多いという関係があります。マンニトールはコンブが光合成によって産出する貯蔵物質であり、その実入りと密接な関係があるようです。1998年に生産された道東の浜中産ながこんぶ(成こんぶ)について調べると、図2のような結果となりました。マンニトールと灰分の合計は、無水物あたりの含量で60パーセント近くに達し、両者の合計は等級に関わらず、ほぼ一定です。そして、マンニトール含量は等級の低いものほど少なく、逆に灰分は等級の低いものほど多い傾向がみられます。
    • 図2
  次にコンブの味に関係する成分でうまみ成分としてよく知られている、グルタミン酸の分析結果を図3に示しました。これらの値は、各等級別にそれぞれ10枚ずつ分析した個々の値と平均値を示していますが、個々の値をみると大きく異なっていました。これらの中で多いものではながこんぶ100グラムあたり約4グラム(2等検)のグルタミン酸を含むものもあり、この値はだしこんぶとして利用されるマコンブに匹敵する量です。ただし、同じ2等検でも100グラムあたり約0.2グラムと少ないものもあり、バラツキの大きいことが特徴です。この理由は、成長の違いによるものか、あるいは部位による差なのか、この結果からはわかりません。

  このように等級と化学成分の間には、マンニトールと灰分含量については一定の関係があるようですが、グルタミン酸に関しては明らかではありません。
    • 図3
  次に、こんぶの色についてです。ながこんぶの場合、黒く、光沢あるものが良品で、等級を決める一つの判断材料となっています。私たちは色を数値で表すことができる装置を用いて等級ごとに色を測定しました。色に関するいくつかの数値の中からb値という値に注目しました。b値はその値が大きいほど黄色が強くなることを表しています。結果を図4に示しました。
    • 図4
  これによると、等級が低くなるにつれてb値が大きくなること、つまり黄色っぽくなるということがわかり、コンブの色の数値化にb値が有用であることが示されました。

  また、昆布森産ながこんぶについても同様の試験を行い、同じような結果が得ています。私たちはこのような結果を元に、今年度も試験を継続しています。特にこんぶの品質の指標の一つとして色に注目して、浜中地区と昆布森地区の2カ所において水産技術普及指導所と協力しながら実態調査を行っております。その内容は、たとえば天日乾燥と機械乾燥では仕上がりの色がどう違うのか、乾燥したこんぶを長期間貯蔵した場合、色がどのように変化するのかなどです。また、あわせて時期別の成分調査も行っています。これらの結果は、今年度の試験研究プラザにおいて報告する予定です。
(釧路水産試験場加工部 飯田訓之)