水産研究本部

試験研究は今 No.412「秋サケ塩蔵品の試作試験結果について」(2000年1月28日)

秋サケ塩蔵品の試作試験結果について

はじめに

  前報(No.335)において、「新巻」や「山漬け」など、製造方法の異なる市販秋サケ塩蔵品の成分特性や塩分分布について報告しました。そこで今回は、温度や時間、用塩量など、どのような条件で塩蔵すればよいのかを探る目的で、実際に生サケを塩蔵してみましたのでその分析結果を紹介します。

塩蔵条件ごとの塩分浸透状況

  試作試験の分析結果を図1に示します。塩蔵は撒塩漬けと塩水漬けの2通りで行い、塩蔵温度は10度としました。
    • 図1
  結果はいずれの場合も、用塩量が多いほうが塩分の浸透性も高いのですが、塩分分布についてみると背肉の中心付近と腹部との差が著しくなることがわかりました。 

  また、別の試験で塩蔵温度については温度が高いほど塩分の浸透性も高いこと、ギンケとAブナの雌雄での比較、および生鮮原料と冷凍原料の比較では塩分浸性のいずれも有意な差異は認められなかったことを確認しています。

塩分の浸透促進試験

  以上の結果からセミドレスの形態で塩蔵した場合、背肉中心部に塩分が浸透しにくいことがわかりました。従って塩蔵時間の短縮を図るためには背肉中心部への塩分の早期浸透が必要になります。そこで、塩蔵の前の魚に以下の2通りの処理を行ってみました。すなわち(1)魚体表皮に直径2.2ミリメートルの注射針を用いて穴をあけたり(穿孔処理)、(2)塩水を注射した(注入処理)試料を塩蔵してみました。塩蔵温度は5度、塩蔵時間は60分とし、各処理は魚体の片側だけに施し、もう一方の側は対照としました。

  結果を図2に示します。穿孔処理では塩分の早期浸透効果はみられませんでした。一方、注入処理では対照部分とはっきり異なる塩分分布を示し、塩分の早期浸透に有効であることが確認できました。
    • 図2

最後に

今後は注入処理技術の最適な条件をさぐりつつ、フィレ形態での塩蔵方法についても検討する予定です。

(釧路水試 利用部 千原裕之)