水産研究本部

試験研究は今 No.414「乾ほたて貝柱の湿度制御乾燥技術の開発」(2000年2月18日)

乾ほたて貝柱の湿度制御乾燥技術の開発

はじめに

  紋別地域では乾ほたて貝柱を主体にサケトバ、スケトウダラすき身、乾しコマイなどの製品が生産されており、生産金額は約19億円(平成10年度)となっています。特に、乾ほたて貝柱製品は、生産量・金額ともに多く、紋別地域にとって重要な加工品となっています。

  一般に、水産物を乾燥すると表面からの水分蒸発と内部からの水分拡散のバランスが崩れ、乾燥効率が低下する「スキンエフェクト」を生じます。このため、乾燥を止めて数日間、内部拡散を促進させる「あん蒸」を行う必要があります。また、乾ほたて貝柱製品において送風機械乾燥と併用して行われている天日乾燥では、天候により、中間製品の屋内外の移動を頻繁に行う必要があります。このため、従来の製法では乾ほたて貝柱は製品となるまで、多くの日数と人手を要しています。こうした背景から、乾ほたて貝柱の乾燥時間を大幅に短縮するために、湿度制御による連続乾燥技術の開発を実用化レベルで行いました。この技術は、国の補助事業である「平成10年度特定中小企業集積支援技術開発事業」の中で、紋別市内のダイサン木村商店と支援機関である網走水試紋別支場が産官共同で開発したものです。

湿度制御乾燥機について

  今回、開発した乾燥機TMH-50N TSUNEZAWA INDUSTRY CO.LTD(写真)は、庫内の温度を±2℃、湿度を±5%の精度でマイコンによりプログラム運転することができます。温度および湿度の調整は、遠赤外線ヒーターおよび加湿ユニットが排気ダンパーと連動することにより行われます。また、庫内に備えられたセンサーにより乾燥中の雰囲気温度、雰囲気湿度、風速、試料重量は経時的に測定され、これらのデータはパソコンに記録されます。なお、2台の台車による収納能力は、二番煮熟後のホタテガイ貝柱で約300キログラムです。

乾ほたて貝柱の乾燥試験

  二番煮熟後のホタテガイ貝柱(Sサイズ)約100キログラムを用いて、乾燥試験を行いました。貝柱は冷凍保管したものを、試験時に解凍して用いました。乾燥温度は60度とし、湿度は初期湿度75パーセントに対し、1日あたり10パーセント減少させました。図1に乾燥中のホタテガイ貝柱の乾燥曲線を示しました。乾燥開始後、24時間で貝柱の水分は20パーセント、36時間で16パーセントまで減少しました。乾燥終了後の製品の色調は全体的に薄い仕上がりでした。色差計による測定値は、市販1等検製品に比べ白色度を示すL値が高く、赤色度を示すa値が低い結果でした。この原因が乾燥条件によるものか、冷凍原料を使用したためかは、現在のところ明らかではありません。今後、色調を改良するためには、さらに試験を重ねていく必要があります。なお、台車の位置による製品の色調および水分は差がみられず、台車のどの位置においても均一な乾燥が行われていたことがわかりました。
    • 図1

おわりに

  以上のことから、ホタテガイ貝柱をこの試験事業で開発した湿度制御乾燥機によって乾燥することにより、ほぼ2日間でホタテガイ貝柱の水分を16パーセントまで減少させることが可能となりました。しかし、製品色調については未だ改良の余地があり、今後、さらに検討する必要があります。なお、この試験結果は平成12年1月19日に紋別市で開かれた「特定中小企業集積支援開発事業成果報告会」でダイサン木村商店から報告されました。これに対し、関係業界から強い関心が寄せられました。

(網走水産試験場 紋別支場 成田正直)