水産研究本部

試験研究は今 No.416「新素材を用いた餌料用海藻育成手法」(2000年3月3日)

新素材を用いた餌料用海藻育成手法の技術改良を進めています!(水産技術改良指導事業による)

  日本海の磯焼けした海域では、以前からウニ・アワビ等の餌となる餌料用海藻の育成技術が必要とされてきました。

  それに伴い様々な海中林造成技術、給餌方法の検討が行われ、その効果が期待でき、且つ浜の人達が容易に管理できる海藻育成手法を目指した取り組みが今も続いています。

  今回はそのなかでも、簡易的な手法として昔から取り組みが進められている「立て縄」方式による海藻育成手法に再度着目してみました。今までの手法は約2~3メートル(φ約16ミリメートル)位の古ロープの先にそれぞれ浮子と重りをつけて単体で海に投げ込み、ロープに餌用海藻を付着させるタイプ(種糸巻き付け型も)でしたが、いまひとつ有効な技術として浜に定着するに至っていないのが現状です。そこで作業性と効果をより確実なものにしようと中央水試専技が中心となりチームを組んで進めている技術改良試験(平成11~12年度)の様子を紹介します。

  その事業名は、チョット長いのですが『磯焼け海域での柔軟性素材を用いた餌料用海藻育成手法の改良』です。

  進めているチームは、小樽市・寿都町各漁協浅海部会員、支庁水産課栽培振興係、後志南部・北部各地区水産技術普及指導所、中央水試の水産工学室、資源増殖部、民間の企業等で各々の機関の持ち味を最大限に活用していく考え方で進めています。

  試験内容は磯焼け海域における餌料海藻の供給を目的とした具体的手法の一つとして、最近の研究知見を基に柔軟性素材を用いた海藻付着基質の有効性を検討し、安価で漁業者管理が容易な、餌料用海藻育成手法の技術改良を進めることです。具体的には(1)海藻付着基質としての柔軟性素材(3~4種類)の検討。(2)海藻付着基質の形態、有効長、水深の検討。(3)海況条件の検討。(4)囲い礁の有効利用に向けた改良手法の検討です。これらについて・基礎試験型・実用化試験型のタイプを内湾と外海にそれぞれ設置しています。(試験中の写真です)

  そしてポイントの一つは、この試験で付着基質として用いる柔軟性素材です。この新素材は発泡ポリプロピレン性で無害、素材特性は低比重、基本形状はリボン状で、長さ、巾、そして比重調整が可能なことです。さらに非常に軽く持ち運び、設置回収等の作業性が良いことです。従来から用いられている〝ロープ素材〟との比較も含め検討していきたいと思います。

  ポイントの二つ目は、設置海域の環境特性を同時に把握しながら結果を検討していくことです。記憶式水温計の設置、ウエーブハンターによる波浪測定など、水温、波浪条件などを検討項目に加えることにより、次のステップへ向かう為に貴重なデータが蓄積されます。(設置タイプの例)

  そして磯焼け研究事業(水試水工室、増殖部)とのデータ連携を図りながら、日本海の磯焼け状況下にある囲い礁での有功な改良手法に向けた取り組みも進めます。

  各柔軟性素材が有効な手法と成り得る可能性について、室内実験水槽と試験海域から得られるデータを解析し、さらに基質素材特性の検討を加えて、磯焼け海域での餌料用海藻育成手法の実用化に向けたあしがかりとしていきたいと考えています。

  さっそく新年度からの調査に向けて準備をすすめています。次回には、少しでも良い結果を皆様に報告することができますようにチーム一同頑張っていることをお伝えいたします。

(中央水産試験場 主任水産業専門技術員 吉田 眞也)