水産研究本部

試験研究は今 No.418「函館水産試験場所属の試験調査船「金星丸」について」(2000年3月17日)

函館水産試験場所属の「金星丸」について

現状

  金星丸は昭和55年に59トン型で建造され、当時は余市町にある中央水試に所属し、主に石狩湾海域の調査に従事していましたが、運行の安全を確保するため、昭和58年に増トン改造が行われ、更に昭和63年に函館水試に配置換えとなり現在に至っています。

  本調査船は、日帰り用の調査船として作られたため、建造当初から船員の居住性や安全性が問題視され、増トン改造など応急的な措置が講じられてきましたが、平成11年で既に船齢20年を経過し、船体及び機器の老朽化は著しく、調査内容の高度化及び新たなニーズに対応できなくなっている上、居住環境が劣悪な状況になっており、船員をはじめ研究者や漁業関係者からも早急な代船建造が強く求められていました。

  「公開の安全性」、「調査の充実」、さらに「労働環境の改善」を図るために、平成12年度に「新金星丸」を建造します。

新金星丸の概要

新金星丸
総トン数 約145トン
船質 鋼製
長さ×幅×深さ 3.50×7.10×3.10
推進機関 1,300ps×1基
航海速力 12.00ノット
乗組員数 13名
最大搭載人員 16名

新金星丸の調査

継続・拡充
スケトウダラ資源調査
現在の金星丸には計量魚探やトロールはなく、他の調査船に依頼していましたが、計量魚探を用い水深100~600メートルを航走しながら、スケトウダラの魚探反応量(資源量)を得るとともに、調査海域で、刺網、中層トロール、プランクトンネットを使い環境調査も実施します。

ハタハタ産回帰群生態調査
着底トロール調査、CTD調査、標識放流調査により、沿岸のそれぞれの産卵場に来遊するハタハタの沖合での分布や交流を明らかにします。

ケガニ資源調査
トロールやカニかご、刺網などを併用し、新規加入群のほか、雌ガニや稚ガニの分布も明らかにして、資源の長期変動やその仕組みを解明します。

定期海洋観測
水深1,000メートルまでのCTD、DO、蛍光、透過度調査、水深150メートルからの改良ノルパックネット調査、各観測地点18点で多層型ドップラー流速計による流向・流速調査。(現在の金星丸では、船型が小さく荒天時の観測や航海ができないため、時化の多い月は調査点全部は実施できませんでした。)

津軽暖流流量調査
多層型ADCPを用い、海峡西口と東口の流量と鉛直的流れの構造を解明します。(これまでの3層型に比べ128層型を装備し、より微細な流れの構造が判り、これまで調査できなかった海峡東口も可能になります。)
新規
マダラ稚魚・幼魚分布調査
ビームトロールを用いて曳網し、マダラの稚魚、幼魚の分布状況を知り、人工種苗放流適地を探索する手がかりを得ます。

マツカワ放流技術開発
事業化を目指す魚種として位置付けられているマツカワの技術開発を一層促進するため、調査点22点で放流後の分散過程、深浅移動をトロール調査により把握します。

航海日数

現金星丸 162日
新金星丸 ・漁業資源調査 61日 ・海洋調査 40日 ・栽培資源調査 78日  計179日

平成12年6月中旬に着工し、平成13年2月下旬に完成を予定しています。


(水産林務部栽培振興課研究企画係)