水産研究本部

試験研究は今 No.419「ニシン国際シンポジウムに参加して」(2000年3月24日)

ニシン国際シンポジウムに参加して

  2月23日~26日にアメリカ合衆国アラスカ州アンカレッジ市で開催されたニシンの国際シンポジウムに、北海道水試から中央水試の資源管理部の石田、資源増殖部の干川、佐々木の3人が、平成8年度から実施されている日本海ニシン資源増大プロジェクトで得られた結果を発表してきました。今回は、このシンポジウムの概要や感想を報告します。

  このシンポジウムは、これまでも10年に1回開催されており、今回、記念すべき2000年には、北欧の8ヶ国、日本、アメリカ合衆国、カナダ、ロシアの計12ヶ国から約100名の参加者で行われました。日本からは我々3人の他、日本のニシン研究における第1人者である北海道区水産研究所の小林亜寒帯漁業部長、東大海洋研から2名の計6名が参加しました。

  シンポジウムでの発表は口頭とポスターに分かれており、口頭は約60題、ポスターは22題の発表がありました。これらの発表では海況と資源変動の関係、生化学的手法による産卵場への回帰性の確認や系統群分け、計量魚探及び航空機を使った現存量推定法、さらに、資源管理の手法として刺し網目合い選択性などが紹介されていました。これらは、大変興味深いものであったことに加え、どの海域でも、我々のプロジェクトと共通した問題点を抱えているところが印象的でした。

  これらの発表は各人の研究の集大成かと思っていたら、ほとんどは日本の支部例会を含む各学会の発表のようなものでした。また、会議初日に、我々3人は日本における学会でのお決まりのネクタイにスーツという出で立ちで出席しましたが、ほとんどの人はカジュアルな格好をしており、冬だとういうのに半袖姿という人も何人か見受けられました。さらに、口頭発表終了後のポスター発表の時間には、参加者同士、酒を飲みながら、談笑する場面が連日見られました。このことからすると、少なくともニシンの国際シンポジウムに参加していた人たちの多くは情報収集と他の研究者との交流を楽しむのが一番の目的ではないかという印象を受けました。

  また、我々はニシンプロジェクトの成果として「厚田沿岸域の天然稚魚の分布と食性(佐々木)」、「厚田沿岸域の天然仔・稚魚の成長とふ化日(石田)」、「厚田沿岸域の産卵場の特性(干川)」をポスターで紹介してきました。ポスター発表の際、英語での質問等の対応にかなり不安を持っていましたが、ほとんどの方はこちらが解るような単語や内容で質問してくれ、あまり英語ができなくても何とか対応できました。さらに、我々の研究レベルは他国の発表と比較して決して劣っておらず、今回のような国際会議に出席することで、我々、北海道水試の研究が十分に世界で評価されると感じました。

  今後は、今回の体験を、北海道の水産業の発展に、そして北海道水試の研究の進展に生かすよう頑張っていきたいと思います。

(中央水産試験場 佐々木 正義・干川 裕・石田良太郎)

干川科長とエリザさん
 写真(左) 干川科長とエリザさん(サハリン海洋漁業研究所のニシン研究者、日ロ研究交流でたびたび来日し、皆のあこがれ?の的である)
質問に答えている石田研究職員
写真(右) 質問に答えている石田研究職員(右)(石田はアラスカで初対面の方にどこかで見たことがあると言われていた。おそらく現地の人に間違えられたと思われる)

追記 

  今回のニシンシンポジウム事務局のAlaska Sea Grantが主催するシンポジウムが来年2001年には冷水域のカニ類、さらに2002年には北極圏に隣接する(subarctic)魚類と無脊椎動物の遺伝について開催されます。

お知らせ 「試験研究は今」マリンネットホームページで公開します。

  平成元年に第1号が発行され、以来、400号を超えて皆様にお読みいただきました「試験研究は今」は、420号からは従来の印刷版から、インターネット(マリンネットホームページ)で公開移行することになりました。

  本紙は、創刊以来、毎年40号ずつ発行してきました。当時創刊に至った経過は、各地域で開催された試験研究プラザで「分かりやすい広報を」との声が多く寄せられ、この要望にお応えするため、発刊してきました。

  今後は、インターネットの速報性を生かし、皆様にホットな情報やトピックス、水試、孵化場の仕事の内容をさらにわかりやすくお知らせするよう努力していきます。また、インターネットを利用されていない方も多いと思いますので、定期的に印刷(コピー)版を作成し、各機関より諸会議などの機会にお配りする予定です。
今後の「試験研究は今」をお楽しみに!

ホームページアドレス http://www.fishexp.pref.hokkaido.jp/

(中央水産試験場長 番匠 義紘)