水産研究本部

試験研究は今 No.422「中央水試研究部の近況報告」(2000年4月27日)

中央水試研究部の近況報告(下)

420号(上)に引き続き、水産工学室、加工利用部の近況をお知らせします。

水産工学室

ホタテガイ養殖試験の近況報告
  現在,水産工学室では,養殖ホタテガイの成長に適した流れの条件を調べています。そして,これまでの室内実験により,ホタテガイは,弱い流れのもと(流速10センチメートル/秒以下)では前縁部(口が開いている側)を流れに向けると成長が良く,強い流れのもと(流速15センチメートル/秒以上)では後縁部(肛門が開いている側)を流れに向けると成長が悪くなることを明らかにしました。そこで,このような流れと成長の関係が果たして野外でも起こりうるのかを渡島東部地区水産技術普及指導所の協力を得て,鹿部町沖のホタテガイ養殖場内で検証しました。

  この試験では,1999年6月?2000年2月の間,下の写真に示す直方形の枠(縦・横1メートル,高さ0.5メートル)の各面に,貝が後縁部を外側に向けるように耳吊用のロープ(ループ式)で取り付け,これを漁場内の3カ所に設置するとともに,流向流速計を併設し,貝の成長と流況を観測しました。

  その結果,3カ所とも,森町の方向に後縁部を向けた貝の成長が他に比べて低くなりました。また,試験期間中は,概ね森町から恵山町方向への海岸線に沿った流れが卓越していました。すなわち,後縁部に流れを受けるように吊された貝の成長が他に比べて悪かったことになり,この結果は,強い流れを後縁部に受けると成長が低下するという実験結果を裏付けていました。

  そこで,今年度は,昨年度と同様の追試験を実施するとともに,後縁部が流れの卓越する方向に向かない(すなわち,後縁部が森町方向に向かない)ような養殖施設を試作し,その有効性を実証する計画を立てています。また,今年度は,留萌南部地区水産技術普及指導所の協力を得て,増毛町沖のホタテガイ育成施設内に同様の施設と流向流速計を設置し,鹿部町沖の試験と併せて,成長と流れの関係を調べていきます。

(中央水試 水産工学室 櫻井 泉)
    • 吊された貝

加工利用部

漁獲好調なホッケを何とかしよう
  このところ道内でのホッケの漁獲は好調でありますが,漁獲のわりに金額に反映しない状況にあります。

  そこで,利用加工部では新たな加工技術の開発により,付加価値向上を図る試みを行っています。ここではまず1)ホッケの成分がどのようなものであるかをしっかり分析把握する。2)今まで数多く製造されている加工品の製法改善により,付加価値の向上が図れるかを検証する。そして,3)さらに新たな加工素材の開発技術の検討の3つの柱で取り組んでいます。 この最後の加工素材開発については,カルシュムリッチで舌触りがなめらかな性質を持つ,現在の高齢化社会,健康志向等にマッチしたものを目標に基礎試験を展開しています。
遺伝子DNAの珍しい使用法のために
  一般にDNAと聴けば,2重らせん構造を持った,生命活動に関わる遺伝子として思い出されると思います。しかしこの2重らせんンは光学的に特異な性質を発揮することが知られていて,その実用化を目指した研究が北大,千歳科学技術大学などで行われています。加工利用部ではこの共同研究グループの1員として,DNAをホタテやサケの加工から排出される精子(白子)から大量にかつ,純度の高いものを製造する技術の開発を担当しています。

  将来,北海道産水産物のDNAからつくられた部品を備えたパソコンやコピー機が登場することになるかも知れません。

  これらの他,加工利用部では水産加工に関する様々な疑問,質問,相談,および指導など試験研究に限らず,様々な事業を行っております。是非ご利用下さい。

(中央水試 加工利用部長 西 紘平)