水産研究本部

試験研究は今 No.430「森林、海洋における炭酸ガス収支の評価の高度化」に係わる地域重要資源の現地実態調査開始!」(2000年8月10日)

「森林、海洋における炭酸ガス収支の評価の高度化」に係わる 地域重要資源の現地実態調査開始!

  釧路水産試験場資源増殖部は、水産庁水産工学研究所の委託を受けて平成12年度に「森林、海洋における炭酸ガス収支の評価の高度化」に係わる地域重要資源の現地実態調査を浜中漁業協同組合と釧路東部地区水産技術普及指導所の協力を得て実施しています。

  地球温暖化とは、人間活動により大気中の炭酸ガス、メタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの濃度が増えることにより、地上の温度が上がることをさします。地球温暖化がもたらすものは海面の上昇など人間活動全般に影響を及ぼす問題で、その対策は地球規模的なものとなります。温室効果ガスの中でも炭酸ガスは、地球温暖化への寄与の度合いが最も大きく、その排出削減が重要な課題といえます。

  地球規模的な問題として重要視されている地球温暖化防止に関連して、日本の経済水域は国土面積の10倍以上に相当していることから、森林と並んで海洋の炭酸ガスの吸収・固定能に大きな期待がよせられています。

  その一方で、炭酸ガス収支には不明な点が多く、中でも海洋等での吸収に関しては不明な点が多いとされています。このような状況に対応するため、水産工学研究所は海洋における炭酸ガス収支に係わる様々な要因を解析整理し、日本沿岸域の海洋生物による炭酸ガスの吸収・固定量を高い精度で推計するとともに、固定能の評価法を開発するために「森林、海洋における炭酸ガス収支の評価の高度化」のプロジェクト研究を平成11年から平成14年を目途に、森林総合研究所、水産庁中央水産研究所、北海道区水産研究所、東北区水産研究所、瀬戸内海区水産研究所とともに実施しています。

  炭酸ガスの吸収における沿岸海域の重要性として、陸上植物による一次生産物が比較的速い循環速度で炭酸ガスとして大気に回帰するのに対し、海洋の一次生産産物(植物プランクトン)は、大量の炭酸ガスを利用し、その後深海に輸送され、大気に回帰するのに要する時間が長いため、大気中の炭酸ガス固定に対してもっとも大きく寄与している点が指摘されています。

  釧路水試に委託された調査は、このプロジェクト研究の一環として本道の砂浜域の重要な貝類資源であるウバガイ(ホッキガイ)を対象に、貝類による海洋の炭酸ガス収支評価の高度化に関係する検証用データを取得するために実施するものです。

  調査は浜中町の琵琶瀬湾と湾に流入する河川に18定点を設定して、ホッキガイ資源動態調査と漁場環境調査を平成12年度単年度の予定で実施するものです。すでに、水産工学研究所の調査要項に基づき7月までの調査を実施し終えたところです。

  本事業は検証用データを取得するばかりでなく、ホッキガイの資源特性値、他の二枚貝の分布特性、さらにクロロフィル量など漁場の餌量環境特性や漁場の粒度組成、CODなど底質環境特性を把握して、今後の資源管理や漁場造成事業を効率的に推進していくうえで有益な基礎資料を得ることが出来るものと考えています。

  なお、地球温暖化に関してはNature Net NAVI(http://www.nature-n.com/index-j.htm)を訪れて、環境資料室の「地球温暖化について考える!」を開きますと

  (1)地球温暖化とは?その原因は?、(2)地球温暖化がもたらすもの、(3)地球温暖化と家庭生活、身のまわりでできること、についてわかりやすく、しかも、より詳しい理解を得ることがでるように解説しています。是非一度、訪れてみてください。

(釧路水産試験場 主任研究員 中川義彦)