水産研究本部

試験研究は今 No.444「稚内周辺海域に分布するクロガシラガレイの年齢査定の試み」(2001年3月21日)

稚内周辺海域に分布するクロガシラガレイの年齢査定の試み

  クロガシラガレイは,網走,宗谷,留萌などの市場では,ふつう「黒がれい」として流通しているカレイです。稚内水試では今年度,稚内漁協の協力を得て,稚内周辺海域におけるクロガシラの年齢や産卵期などを調査しています。今回はその調査のうち,年齢に関する調査の途中経過をお知らせします。

1.年齢形質について

  魚の年齢を調べるための年齢形質には鱗や耳石があります。今回は耳石が年齢形質として使えるかどうかを検討しました。図1はクロガシラの耳石ですが,かなりきれいな輪紋が見えます。

  耳石の白いリングは不透明帯,黒いリングは透明帯と言い,それぞれ交互に形成されています。図2は,透明帯,不透明帯の形成時期を調べた結果です。これを見ると,不透明帯はだいたい5月下旬頃から9月上旬頃にでき,それ以外の時期には透明帯ができることがわかりました。この結果から,透明帯,不透明帯とも1年に1本ずつ形成されることが分かったので,どちらかの数を数える事によって年齢がわかる,ということがわかりました。

  ちなみに図1のクロガシラは10月にとれた標本ですが,耳石の中心部から透明帯の数を数えると4本あったので4歳です(ただし,最外部の透明帯は,まだ完全にできあがっていないので数に入れません)。
    • 図1,2

2.年齢-全長の関係について

  次に,実際に耳石を使って年齢査定をした結果を示します。図3は稚内のノシャップ岬沖で10月に漁獲されたクロガシラの雌雄別全長組成です。得られた標本は雄が全長25センチメートルから36センチメートルで,雌は26センチメートルから40センチメートルの範囲のものでした。

・雌 ・雄
3歳→全長26-31センチメートル 3歳→全長25-29センチメートル
4歳→29-34センチメートル 4歳→27-31センチメートル
5歳→33-35センチメートル 5,6歳→29-33センチメートル
6歳→34-36センチメートル 7,8歳→30-36センチメートル
7,8歳→34-40センチメートル  

  雌雄別に年齢と全長の関係をみると,今回得られた3歳以上のクロガシラでは,同じ年齢でも雄に比べて雌の方が大きいという結果が得られました。カレイ類は一般的に雄に比べて雌の成長がよい傾向がありますが,クロガシラについても同様のことが言えそうです。

(稚内水産試験場 資源管理部 田中 伸幸)
    • 図3