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函館水産試験場

マナマコの放流追跡調査

マナマコ放流技術マニュアルを発行しました

H26年~令和4年にかけてDNAマーカーを用いた放流効果調査結果に基づき放流技術マニュアルを発行しました。

マナマコ放流技術マニュアル


マナマコの放流追跡調査

ナマコ資源増大推進事業

はじめに

  近年の主に中国輸出向けナマコ単価の高騰により、各地でナマコの漁獲量が急増しています。このような中で、北海道ではナマコ資源の維持・増大を図るため、平成19年度から奥尻町をモル海域として、ナマコ資源増大推進事業を開始しました。

平成19~21年に毎年平均体長5ミリメートルの種苗100万個体を北海道栽培漁業振興公社へ委託して生産し、翌年6~7月まで檜山管内で中間育成した後、平均体長15ミリメートル、50万個体の稚ナマコを奥尻町沖に放流することを目標にしています。

経過の概要

平成19年度には、特に天然の稚ナマコはどこに分布しているのか(稚ナマコの分布場所≒放流適地)という点に注目し、水深約15メートルまでの範囲で潜水調査を行いました。

その結果、稚ナマコは主に水深約10メートル以浅の転石(直径20センチメートル程度の丸い石)の下に分布しており、水深約5メートル地点で最小のナマコ(体長約15ミリメートル、全重量0.2グラム)が採集されました。その他の条件(底質、静穏性など)も考慮し、平成20年度の放流区を奥尻町北部の水深5メートルとしました。

平成19年度には北海道栽培漁業振興公社において、計画通り平均体長5ミリメートルの種苗100万個体が生産され、12月に奥尻町と熊石町において陸上で中間育成が開始されました。

その後、今年の6月には、平均体長15ミリメートルの放流種苗、約10万個体を生産することが出来ました。

大量の放流種苗を安定して生産するにはまだまだ課題が多いのですが、このサイズと数量を1カ所に放流し追跡調査を行うのは全国でも最大規模の試みです。 
    • ダイバーによるナマコ種苗の放流
      (写真1)ダイバーによるナマコ種苗の放流
    • 放流直後のナマコ種苗
      (写真2)放流直後のナマコ種苗
平成20年6月17日には、ひやま漁協奥尻支所、同潜水部会、奥尻町、奥尻地区水産技術普及指導所、檜山支庁等の協力を得て、選定した放流区にナマコの種苗を放流しました。放流区の範囲は10メートル×10メートルとし、出来るだけ均一な密度になるようビニール袋を用い、潜水によりゆっくりと海底に放流しました。(写真1,写真2,図1)。

放流初期の種苗の逸散を抑えるため、防風ネットで覆った区画や、シェルター(カキ殻を網で包んだもの)を設置した区画も設定しました(写真3,図1)。

    • ナマコ放流調査区の図
      (図1)ナマコ放流調査区
    • シェルターへの放流
      (写真3)シェルターへの放流
放流後の追跡調査では、放流したナマコ種苗が小さいため、エアサンプラーを用いました(写真4)。

この装置は、船上にあるコンプレッサーから、海底にいるダイバーが持つ筒状のサンプラーに空気を送り込み、空気の上昇により筒内に水流を起こしてサンプラー上部に取り付けた採取袋に微少な生物を粒径の小さな底質とともに吸い上げるもので、水中ではなかなか採取しづらい小型のナマコを効率的に回収することができます。 
    • エアサンプラーによる生物採取
      (写真4)エアサンプラーによる生物採取
今後、放流区及びその周辺の区域で、ナマコ種苗の密度、成長の推移等を定期的に調べ、放流約3年後にどの程度漁獲に結びつくかで放流効果を明らかにしていく予定です。

中国で最高級品といわれる北海道のナマコ資源をつくり育てていくため、浜の皆さんと情報交換しながら、調査を進めていきたいと思います。 

お問い合わせ先

調査研究部 管理増殖グループ

  • 住所:〒040-0051 北海道函館市弁天町20番5号 函館市国際水産・海洋総合研究センター内
  • 電話番号: 0138-83-2893

最終更新日:2013年03月01日